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2005年11月 4日 (金)

メンデルスゾーン 無言歌 田部京子

mendelssohn_lieder_ohne_worte メンデルスゾーンの命日に因んで、彼の無言歌集の選集を田部京子のピアノで聞く。

1993年スイスでの録音。少々低音が膨らみ勝ちな音響だが、それがかえって暖かさをかもし出してくれているようだ。

メンデルスゾーンが、1809-1847の短い生涯の間に書いた「歌詞のないリート」(無言歌)は全部で50曲を超える(番号付は48番まで?)そうだが、ここではそのうち25曲が選ばれている(確か、全曲はバレンボイムが録音していたのではなかったろうか)。ほとんどが3分前後の所要時間(現代のポップスなどもその程度の時間のものが多いようなので、小曲の規模はその頃から変わらないものかも知れないなどと思ったりする)。

「歌詞のあるリート」で私が知っている曲はハイネの詩による「歌の翼に」作品34-2があり、作品目録をみればそれなりにリート作品もあるようだが、先輩のシューベルトや一歳後輩のシューマンのように連作歌曲もなく、また彼が幼少の頃親交のあったゲーテの詩によるリートも数えるほどしかないようだ(歌詞のある曲としては、オラトリオや多数の詩篇、カンタータ、モテットなどいわゆるプロテスタントの宗教曲は多数あるのだが)。

ユダヤ教のソクラテスと呼ばれた哲学者モーゼス・メンデルスゾーンを祖父に持つヤーコプ=ルートビヒ=フェリックスの属する富裕な銀行家(俗な言葉で言えば「金貸し」)メンデルスゾーン=バルトルディ家がユダヤ教からプロテスタントへ改宗したは以前の記事でも書いたことがあった。

ナチスはその彼の音楽の演奏をユダヤ人ゆえに禁じ、同じユダヤ人のハイネの詩も火に投じた。しかし、同じユダヤ系のシュトラウス一家のワルツやポルカは、ヒトラーが愛好したという理由で、演奏に制限がなかったのだという。政治権力の恣意を典型的に示す例だと思う。

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