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2006年2月24日 (金)

「誰も寝てはならぬ」で荒川静香選手 トリノ五輪 女子フィギュアで金メダル

"Nessun dorma" の器楽演奏版に乗って、プッチーニの描いた心を固く閉ざした東洋の神秘のごとき冷たく美しい姫君 Cool beauty 荒川静香が、圧倒的な演技で、金メダルを手にして、満面の笑みを浮かべた。ロシアのイコンの慈母のごとき絶えざる微笑のイリーナ・スルツカヤ、陽気で勝気なヤンキーガールのサーシャ・コーエンを下し、完璧で丁寧な演技を披露した情熱の大和撫子 村主章枝(すぐりふみえ)をも寄せ付けなかった。

プッチーニの死により未完となった歌劇「トゥーランドット」は、皇帝のいた頃の中国を舞台にした歌劇で、残酷で美しい姫君トゥーランドットが、さすらいの王子カラフの求愛により人間性を回復するという寓話的な筋を持っている。「誰も寝てはならぬ」とは、姫による皆殺しの宣言の文句なのだが、これを求婚者カラフが姫の言葉を引用する形でアリアとして歌う。そして最後に"Vincerò! Vincerò"と高らかに勝利を誓う。このアリアは、このトリノの開会式で、ルチアーノ・パバロッティによって歌われたそうだが、残念ながら見逃してしまった。荒川は、この演出を知ったときに、幸運な偶然を感じたという。この曲は、2004年のドルトムントで世界チャンピオン、女王になったときに使った曲で、全日本選手権のときにはショパンの幻想即興曲のオーケストラ編曲版を使っていたが、今大会直前にこの「誰も寝てはならぬ」に変えたのだという。

黄金のトランペット マリオ・デル・モナコの十八番として著名なアリアだったというが、日本では、コーヒー会社のコマーシャルで、錦織健によって歌われ我々にも親しいものになった。

karajan_turandot
私が所有しているCDは、カラヤン/VPOの「トゥーランドット」全曲録音の抜粋版。カラフを歌うのは、三大テノールの一人、プラシド・ドミンゴ。トゥーランドットにはリッチャレッリ、カラフの父ティムールにはライモンディ、召使でカラフに献身的な愛をささげるリューにはヘンドリクスと豪華な歌手陣。

mehta_turandot
DVDでは、北京の紫禁城で行なわれた歴史的な公演を収めたメータとフィレンツェ五月音楽祭よる映像。ここにはあまり著名な歌手は登場しないが、中国皇帝の住居、世界文化遺産の建築物の前で繰り広げられたチャン・イーモウの演出は見ごたえがある。

P.S. 2006.03.02
荒川静香の使用した「トゥラーンドット」の器楽編曲版は、ヴァネッサ・メイの「チャイナ・ガール」という録音だったという。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000002SMT/503-2070649-6123911

1. バタフライ・ラヴァース・コンチェルト(何古豪・陳康)
2. 歌劇「トゥーランドット」のヴァイオリン・ファンタジー(ヴァネッサ・メイ)
3. ハッピー・ヴァレー・1997年香港返還記念序曲(ヴァネッサ・メイ&アンディ・ヒル)

p.s. 2007年9月にこのCDを中古店で入手し早速聴いてみたが、2の「トゥーランドット」は、荒川静香のときのようなアピール力を持っていなくて意外だった。

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コメント

荒川選手、良かったですね。感動しました。
ホンマ、素晴らしい演技でした。
(村主さんも良かったんですが)

ボクもトゥーランドットを聴きました。
カラフはパヴァロッティのメータ盤(抜粋)です。
これも素晴らしい歌唱で、荒川選手の演技が浮かんできました。

「幸運な偶然」とは知りませんでした。元々、北京オリンピックがあると言っても開会式のサブテーマが中国になっていた「落ち」が、閉会式で見れると思っています。

荒川のスケーティングも動きの大きさも体の線の出し方も文句無しですが、音楽的な振り付けも見事でした。

mozart1889さん、コメントとトラックバックをありがとうございました。

荒川選手のスケーティングと演技は、特に腕の表情がすっきりとまた表情豊かですばらしいと思いました。冒頭部分など「トゥーランドット」から巧く編曲していますね。そして壮大に盛り上がる曲調はフリースケーティングにぴったりだったと思います。その他の選手も曲調をもっと慎重に選ぶほうがよかったかも知れないと素人ながら思いました。

pfaelzerweinさん コメントありがとうございます。なるほど、サブテーマの中国ですか!

荒川選手のスケート演技を観戦し、カタリーナ・ヴィットのあの鋭くも優雅なスケーティングを思い浮かべました。

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