上野動物園 「絶滅したニホンオオカミ展」
昨日の日曜日、先週行けずに映画「アマデウス」でお茶を濁した「絶滅したニホンオオカミ展」に行ってきた。近所の天神さんの紅梅はようやく咲き始めたが、風が冷たく強かった。
昼飯時に上野駅に着いたので、飴屋横丁方面に食事に出かけたが、日陰に入ると寒くて閉口した。景気は上向きとは言え、まだまだ人々の表情は不景気な感じだ。
西郷隆盛像の前を過ぎ、左手に行くと、小山の上にパゴダ(仏舎利塔)があり、その傍らに「上野大仏」の頭部の前面がお面のような状態で安置されている。江戸時代越後村山の堀家の殿様が寄進したものだという。震災か戦災で焼けたものだろうか?そこを過ぎると、精養軒があり、しばらく進むと上野動物園の入り口になる。普段は文化会館と西洋美術館の間の大通りからまっすぐ歩いてくるのだが、昨年の「出没アド街っく天国」で上野公園を特集したときの記憶が多少役に立った。先日読んだ司馬遼太郎の「花神」では、この上野の東叡山寛永寺の広大な境内に彰義隊が立てこもり、当時の幕府追討軍(いわゆる官軍)が不忍池を隔てたあたりからアームストロング砲を打ち込んだのだと思うと感慨が深いものだった。現在、寛永寺の広い境内の中に、上野公園があるわけだ。
オオカミ展は、ポスターは貼られていたが、あまり大々的ではなく、案内所で場所を尋ねて初めて分かったほどだった。イソップ橋という東園と西園を結ぶ歩道橋をわたるとすぐに左手に見える不忍池のほとりの建物の一階で開かれていた。ボランティアらしい人たちが警備を兼ねて数人いたが、見物客はまばらだった。さすがにこれを目当てに訪れる人はそれほどいないようだ。我が家では長男がオオカミマニアなので、これが今回の目当てだったのだが、以前小田原の生命の星・地球博物館で開かれたニホンオオカミ展のような図録・論文集のようなものはなかった。(この展覧会の頃は知らずに行けなかったのだが、昨年博物館を訪れた際、図録が販売されていた)
ニホンオオカミのものとされる剥製、毛皮は現在世界に10指に満たない。そして日本には三体しかない。そのひとつが、上野の国立科学博物館のもの。そしてもう二つが、今回上野動物園で特別展示された和歌山大学所蔵(和歌山県立博物館展示)のものと、東京大学農学部所蔵(東大博物館展示のはずが、この展示のパネルに最近では一般公開していないと書かれていた)のもの。今回は、これで、上野に三体が揃ったことになる。この展示室にも国立科学博物館の剥製の写真がパネル展示されていた。海外には、オランダのライデンに剥製があり(昨年の愛・地球博で展示された)、毛皮がロンドンにあり、また最近ベルリンでも毛皮が発見されたという。今回、朝日新聞の記事に書かれていた、上野動物園でのオオカミの飼育記録の件は返す返すも惜しいと思った。
和歌山大学のものは、写真のほとんどが真横から撮られていたので、今回顔立ちなどが見られて興味深かった。剥製については、以前国立科学博物館のボランティアの人に教わったのだが、剥製師が描くイメージによって作られることが多いため、実物がいない場合には、姿勢や顔立ちが明確に分からず、そのため非常に奇異な顔立ちや姿勢になることもあるらしい。肉付きなどももちろん中の詰め物次第だろう。そいういう意味で和歌山大学のものは、目が正面で大きすぎ、また口も裂けすぎていた。尻尾が短かったのは、毛皮の損傷だろうか?オスらしい。姿勢のためか、雄雄しい。
また、東大のものは、足は他のイヌ科の動物のものを付け足したらしい。メスだったらしく、和歌山大学のものに比べて小柄だ。背中がまったいらなのは、先述したとおり、剥製師のイメージだったのだろう。送りオオカミを連想させる表情だ。
1905年に絶滅したといわれるニホンオオカミ。北海道のエゾオオカミ(タイリクオオカミの亜種)はそれより早く絶滅している。今回はニホンオオカミの展示だったが、エゾオオカミも一緒に展示されたらもっと興味深かっただろう。
展示は2/26まで。
P.S. 2006/08/02 追記 埼玉県秩父市の三峯神社には2002年に相次いで発見されたニホンオオカミのものと認定された剥製(毛皮)が二体展示されているという(Wikipedia)。
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» 「絶滅したニホンオオカミ展」@上野 [酔狼亭日誌]
1月27日に書いた「絶滅したニホンオオカミ展」に行ってきました。
初めてみた東京大学の標本は、隣に展示してある和歌山大学のものよりひとまわり小さく、同じ種だとしたら成獣と1年目ぐらいの差はありそう。もっとも脚の長さが不自然に短いような気もしたので、剥製の作り次第なのかもしれません。
顔は、和大のほうがちょっと怖い印象なのに対して、東大のものはオオカミらしくきっちり作ってありました。東大の顔で和大の胴体... [続きを読む]
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