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2006年3月14日 (火)

カルロス・クライバー指揮ヴィーンフィルによるシューベルトの交響曲第3番と第8(7)番「未完成」

kleiber_schubert_38◎シューベルト
交響曲第3番ニ長調 D.200 
交響曲第8番 ロ短調 D.759 「未完成」
カルロス・クライバー指揮 ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年9月11日-15日 ムジークフェラインザール (番号は、CDの表示による)

参考:ベートーヴェン 5番 1974年3月,4月   7番 1975年11月、1976年1月 録音

昨日、ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によるシューベルトの交響曲第8番、第9番を聞き、それについて書いた。ケルテスとVPOによるアクセントの強い録音について、mozart1889さんからトラックバックをいただき、指揮者岩城宏之のエッセイ「楽譜の風景」(岩波新書)のシューベルトの楽譜のことを思い出し、最近購入したカルロス・クライバーの録音も強いアクセント(アタック)に溢れていたように記憶していたので、聴きなおして見た。

第一楽章は、まとまりのある表現になっている。まずは、VPOらしからぬ(これはベートーヴェンの第5のときにもよく使われた形容句だが)強烈な荒々しい音響に驚かされる。やはりアクセントは強烈だ。ただ、全体的に雄雄しく壮麗な表現になっているために、分裂した印象がなく、これはこれで男性的なシューベルトとして悪くない。

カルロス・クライバーが逝去したときに、彼の音楽について、徹底的に形而下的なところに特徴があると思うと書いたが、この「未完成」の演奏についても、いわゆる彼岸的な、あの世的な表現にならず、非常に人間的であり、この世ならぬ不気味さはない。そういう点で世俗的な親しみやすさを覚える。

第二楽章は、穏やかな曲想に、突然トゥッティの強奏で襲う音楽にこれまで非常に辛い感覚を味わってきたのだが、この演奏は、全体的に響きが明るく前向きのためか、陰々滅滅とした雰囲気で威嚇するかのように訪れるのではなく、ずっと健康的に響く。威圧感がないのが救われる感じだ。

交響曲第3番はこのCDで初めて聞いた曲。作曲者18歳のときの作品だという。序奏部を持つ古典的な交響曲。ベートヴェンは45歳であり、第7、第8交響曲を発表してからのしばらくの停滞期にあたっていたのではなかったか?この年、チェロソナタの4、5番を完成している。その同じヴィーンで、若者シューベルトがベートーヴェンへの敬意を胸に、このような若々しい希望と歌の溢れるシンフォニーを書いていたというのはなんともいえない情景だ。

若書きの作品とは言え、木管楽器の歌うような楽器法や音色の微妙な混ぜ具合など、なかなか素晴らしい。とは言え、クライバーはなぜこの3番を録音したのだろう?曲の再評価を求めていたのか?

p.s. 2006/03/14 「未完成」のアクセントについて、mozart1889さんのケルテス/VPOの記事にトラックバックさせてもらった。

p.s. 2007/09/05 mozart1889さんの同じ音源(LP)の記事にトラックバックさせてもらった。

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ディスク音楽01 オーケストラ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
TBを有り難うございました。
クライバーの「未完成」はLPで聴いています。懐かしい演奏です。
確かに強いアクセントが特徴の演奏でしたし、ウィーン・フィルらしい音色がまた魅力でもありました。
この曲を聴くたびに、ああ、この曲は「未完成なのだ」ということを実感します。ボクには、あとに続く第3・4楽章が実は存在して、ここで途切れてしまう中途半端な感覚が強い・・・クライバーのはそんな演奏に聞こえます。

こんばんは。mozart1889さん いつもコメントありがとうございます。

確かにC.クライバーの演奏は、交響曲の急、緩、舞曲、フィナーレの急と緩を取り出したというテンポ感ですね。

望さん、こんにちは。
コメントとTBをありがとうございました。
クライバーの「未完成」は録音も素晴らしく、力強い演奏でした。
この曲が未完成であることが残念でならない、と思わせられました。

さすがカルロス、凄いです。

mozart1889さん、こちらにもコメントありがとうございます。

私にとっては、美しい『未完成』ということでは、最近入手したブロムシュテットやこの記事の前に聞いたハイティンクのものが思い浮かびますが(ワルター/NYPはLPでは聴きましたが・・・)、急緩の順の古典的、初期ロマン派の交響曲としてのプロポーションと雄雄しさを感じるのは、このカルロスのものです。

今日は、これから聴きたいと思います。

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