アラウ ジュリーニ/POのブラームス ピアノ協奏曲第2番
◎ブラームス ピアノ協奏曲第2番
クラウディオ・アラウ(p) カルロ=マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
先日入手したポリーニ&アバド/VPOによる同曲のCDの演奏を、エアチェックしたテープで学生時代に一番数多く聞いたので、この演奏が私にとっては一番耳馴染みになっている。ギレリス&ヨッフム/BPO, バックハウス&ベーム/VPOのLPは学生時代に買ったもので、長い休みに実家に帰省したときに聞く習慣だったので、残念ながら耳はそれほど覚えていない。ただ、一番好きなのはいまだにギレリス盤ではあるが。
さて、これも最近入手した、アラウのピアノとジュリーニ指揮のフィルハーモニア管弦楽団のCDは、そのギレリス盤に匹敵するほどの感動をもたらしてくれた。
手持ちのCDのタイミング比較
アラウ (c.1963) 19:12/9:17/12:06/9:57
ブレンデル(1973) 17:57/9:22/12:14/9:19
ポリーニ (1976) 17:06/8:49/12:40/9:26
BLOGOUTさんも同じ組み合わせの1番の協奏曲のレビューを最近アップされているが、録音の特徴はその記事に詳しく的確に書かれているものとほとんど同じ感想だ。この時期のEMIの録音は、クレンペラーとフィルハーモニア管弦楽団のブラームス、メンデルスゾーンやマーラーの「大地の歌」もそうだが、いわゆる分厚く塗りつぶされた響きよりも各パートの音がよく拾えているという感じだ。スケルツォの部分では、他の演奏では気が付かなかったようなクラリネットの合いの手が聞こえる。ただこの演奏は細かい部分まで聞き取れながら、ガツンと来る低音にも欠けていない。オーケストラとピアノがずっしりとした手ごたえのある低音を出してくれると、そこに雄大さや逞しさが生まれてくる。
タイミング比較で分かるようにこの録音の所要時間は非常に長い。トータルで50分を超える。特に遅いのが第一楽章。ポリーニ盤からは2分も遅いのだからすごい。しかし、これがこの演奏に魅力を加えているのだから不思議だ。アラウのCDは、このほかには、晩年の録音の「ディアベリ」変奏曲を聴いた程度なのだが、このブラームスは、これまで読んだ評判も頷けるガッチリしたものだ。これがいわゆる「ドイツ的」と呼べるものなのだろう。すでにドイツ人が気恥ずかしくて出せないような「ドイツ」的な音をチリ人のアラウが出せる不思議。中央の文化の「辺境」での受容の特徴だろうか?しかし、野太い音で、がっしりと鳴る重厚な和音にはしびれる。ジュリーニの指揮も冒頭のホルンからオーケストラをたっぷりとなめらかに鳴らしてはいるが、形式感を失わない。
第二楽章のスケルツォもところどころ溜めを作り、聴き応えがある。第三楽章はまさにカンタビーレの音楽だ。第四楽章は、ブラームスのイタリアへの憧れが詰まったと評される楽章で、ジュリーニとアラウというラテン系の音楽家の面目躍如ととするところ(ポリーニもアバドもラテン系だが)と評されてきたところだが、私にはどの演奏を聴いてもどうもこの楽章がこれまでの三楽章を受けるものとしては軽すぎるようなイメージがある。ちょうど「エロイカ」のフィナーレにそのような意見があるように。
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望さま こんにちは
私はこの曲を聴く中で、このジュリーニ&アラウ氏の演奏に、もっとも親しみを覚えております。確かにギレリス&ヨッフム氏の演奏も素晴らしくて、気分に合わせて聴き分けております。
貴記事を拝見し、うなずくばかりで参考になります。少々、協奏曲や器楽曲などの感想を、文章にまとめることが難しいと思い、いつも日記を書いても挫折する連続です。何度、ボッニしたことか、・・・
以前の貴記事と合わせて、またいいお話を拝見させて頂きました。
投稿: みー太 | 2006年3月21日 (火) 13:57
みー太さん、コメントありがとうございます。
フィナーレについて偉そうに書きましたが、ブラームスの2曲のピアノ協奏曲はどちらも愛好しております。
アラウ、ジュリーニのコンビでは、1番の演奏も聴けるようなので、楽しみです。
投稿: 望 岳人 | 2006年3月21日 (火) 23:35
いつもコメント&TBありがとうございます。モノラル後期からステレオ最初期にかけてのEMIの録音は、いかにも白衣を着た技師が録りました的な明晰だけどちょっと冷たいみたいな感覚があって独特ですよね。ああいう音は徹頭徹尾ダメという人もいるようですが、個人的にはキライではないです。ちなみに私の購入したディスクは2枚組で、1番の他に2番も含まれていますが、レビュウした際にはこっちもTBさせていただきます。
投稿: BlogOut | 2006年3月23日 (木) 14:56
BlogOutさん、コメントありがとうございます。
今回1950年代末から1960年代初めのEMIのブラームス録音を少しまとめて聴き、プロデューサーのレッグの好みとクレンペラーの演奏の特徴が当時のEMI録音の傾向を形作ったのではないだろうかという風に思いました。
ブラームスの2番の方のレビューも楽しみにしています。
投稿: 望 岳人 | 2006年3月24日 (金) 17:28