ホルショフスキー、ブダペストQの鱒五重奏曲
◎シューベルト ピアノ五重奏曲イ長調D.667 Op. 114「鱒」 ミエチスラフ・ホルショフスキー(p) Horszowski, Mieczyslaw ブダペスト弦楽四重奏団員 Budapest String Quartet(第2Vnを除く、ロイスマン:Vn, クロイト:Va, シュナイダー:Vc), ジュリアス・レヴァイン(Cb)
1962年1月録音
モーツァルト クラリネット五重奏曲イ長調 K.581 ハロルド・ライト(Cl), シュナイダー(Vn), コーエン(Vn), ローズ(Va),パルナス(Vc)
1968年8月録音
ホルショフスキーについては、このCDを購入したときには、ほとんど知らなかった。
1993年101歳の誕生日目前で亡くなったが、95歳で初来日したときにはそのような高齢をまったく感じさせない素晴らしい演奏を披露してくれたと、石井宏の暴露的な「帝王から音楽マフィアまで」(学研M文庫、新潮45という雑誌連載をまとめたもの)に「百歳のピアニスト」という題で非常に好意的に書かれていたので、初めて詳しく知った次第。
ブダペスト弦楽四重奏団は、今ではほとんど名前を聞くこともなくなっているが、アメリカで活躍した往年の名四重奏団で、LP期にはベートーヴェンの四重奏曲と言えば第一に名前があがったほどだった。LPでは、ブラームスの弦楽五重奏曲2曲をこの団体とトランプラーのヴィオラによる録音でよく聞いたが、それほど親しい団体ではなかった。
弦楽三重奏にコントラバスを加え、それにピアノを加えるという珍しい編成のピアノ五重奏曲だが、モーツァルトとベートーヴェンは、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンの管楽四重奏団にピアノが加わったPiano Quintetを作曲したので、このような珍しい編成は有名な作品としては音楽史上ほとんどないのではなかろうか?
この曲は、ピアノが華やかに駆け回り、演奏効果も大変高いので、アマチュアの演奏で一度生演奏を聴いたことがあったが、結構楽しめた。
さて、このCDの演奏は、特にこの曲のニックネームとなったリート Die Forelle D.550 (鱒)のテーマによる変奏曲の第四楽章などは、相当質朴な感じだ。全体を通して、コントラバスの低音がよく聞こえ、この楽章でもコントラバスが音程よくテーマ奏でるのが楽しい。よく聞くと、必ずしもチェロとオクターブで重ねるだけでないのか、コントラバスにもいわゆるベース声部だけでなく、旋律も割り振られているのが聞こえてくる。
ホルショフスキーのピアノは、ブレンデル(クリーヴランド四重奏団)、リヒテル(ボロディン四重奏団)などに比べて、非常に慎ましく、ピアノ協奏曲的にならず、アンサンブルの一角をしっかり占めているという演奏だ。弦楽アンサンブルとしては、第一ヴァイオリン主導の比較的旧式なスタイルだと感じるが、それでも親密な雰囲気が伝わる。「シューベルティアーデ」の開かれた広間で聞いているかのような雰囲気だ。
なお、コントラバスのジュリアン・レヴァインは、アメリカの奏者らしく、この「ます」のほかに、ルドルフ・ゼルキン、その息子のピーター・ゼルキン(16歳!)とも共演して、「ます」を録音していることが分かった。
p.s. 2006/11/10 同じCDについての記事を発見し、トラックバックを送らせてもらった。「ます」五重奏曲を聴き比べされている凄いブログだ。
« ポリーニとアバド/VPOのブラームス ピアノ協奏曲第2番 | トップページ | シューベルト アルペジオーネ・ソナタ ロストロポーヴィチ、ブリテンの共演で »
「ディスク音楽03 アンサンブル」カテゴリの記事
- Harmoniemusik (管楽アンサンブル)というもの(2015.03.22)
- モーツァルト ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 K. 478(2014.09.14)
- 小学館 モーツァルト全集のCDを夏の帰省時に持ち帰った(2014.09.02)
- ゲヴァントハウス四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集(2013.12.28)
- 「夏の風の神パンの加護を祈るために」(ドビュッシー、アンセルメ編曲)(2013.10.17)
コメント
« ポリーニとアバド/VPOのブラームス ピアノ協奏曲第2番 | トップページ | シューベルト アルペジオーネ・ソナタ ロストロポーヴィチ、ブリテンの共演で »
同じようなご意見かと思いました。
同志がいて、心強く思います。
投稿: franz310 | 2006年11月10日 (金) 23:02
franz310さん、コメントありがとうございました。
本当に素晴らしい聴き比べblogで感動しました。これからも拝読させてください。
投稿: 望 岳人 | 2006年11月10日 (金) 23:38
お恥ずかしい限りです。こちらも、楽しませてもらっています。
投稿: franz310 | 2006年11月11日 (土) 23:09
franz310さん、コメントありがとうございました。
そちらのBLOGにもいくつかコメントを書かせていただきましたが、早速レスいただけてありがとうございました。
私にとっては「ロザムンデ」がfranz310さんにとっての「ます」五重奏曲と同じような曲になると思うのですが、これまで深く追求することはありませんでした。これを機にちょっと書いてみたいと思っております。(もっとも、魔法の竪琴というこのブログ名も、ロザムンデがらみではあるのですが・・・)
「ます」の続き、楽しみにしております。
投稿: 望 岳人 | 2006年11月12日 (日) 01:36
コーリッシュSQのCD解説に、クーリッジ夫人のことを、
室内楽の擁護者とありましたので、おそらく、
バルトークとも繋がってくるのでしょう。
「ロザムンデ」、私も好きです。
「魔法の竪琴」序曲も含め、「ロザムンデ」の劇音楽も好きです。
投稿: franz310 | 2006年11月13日 (月) 12:55
franz310さん、コメントありがとうございました。
やはり、クーリッジ夫人という人物の存在が大きいようですね。ご教示ありがとうございました。
さて、我が家の「ます」五重奏曲は、記事にしたホルショフスキーとブダペストのほかに、BOXものの中にシュナーベルとプロアルテのものがあり、昨晩聞きました。シュナーベルの演奏は、このBOXセットに含まれているもの程度しか聞いたことがないのですが、franz310さんのblogで、カーゾンもその弟子と知り、なるほどと思わされました。
投稿: 望 岳人 | 2006年11月13日 (月) 22:23