ポリーニとアバド/VPOのブラームス ピアノ協奏曲第2番
◎ブラームス ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op.83 マウリツィオ・ポリーニ (Piano), クラウディオ・アバド指揮ヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1976年録音
Pollini という靴メーカーがあるが、このピアニストのPolliniとは何か関係はないのだろうか?
閑話休題。ピアニスト Pollini が、ショパンコンクール後の「修行」?から1971年に復帰?してDGからストラヴィンスキーの「ペトルーシカ」からの3楽章とプロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番で鮮烈な実質的デビューを飾り、1972年ショパン「エチュード」、1973年シューベルト「さすらい人」幻想曲、1974年ショパン「プレリュード」、1975年ベートーヴェン後期ピアノソナタ集、同じ年にショパンの「ポロネーズ集」などと、未だに名演の誉れ高い録音を次々にリリースして、快進撃を続けていた頃の録音になる。
同じ1976年にはベーム/VPOとモーツァルトのピアノ協奏曲第19番、23番も録音している。また1977年には同じくベーム/VPOとベートーヴェンのピアノ協奏曲を録音、アバド/シカゴSOとバルトークの1番と2番、そして1979年にはやはりベーム/VPOとブラームスの1番も録音しているし、イタリアSQとブラームスのピアノ五重奏曲も録音している。
こうして改めて眺めてみると、ポリーニの70年代はまさに壮観だ。このうち、LPを実際に購入したのは、ショパンの「プレリュード」(盤面に反りがあり、雑音が出るのが悲しかった)、「エチュード」、モーツァルトのピアノ協奏曲だけだったが、まだ手持ちの盤が少なかったこともあり、「プレリュード」はそれこそ擦り切れるほど聞いた。後に「プレリュード」「エチュード」はCDで買い直したが、LPの時の感激はよみがえらなかった。しかし2枚とも自分にとってはかけがえのない音盤だ。
(このほか、今ではカタログにあるのか分からないが、イタリアの現代作曲家ルイジ・ノーノの「力と光の波のように」 "Como una ola de fuerza y lus" をアバドとポリーニがDGに録音していたのを覚えている。また、1974年にはシェーンベルクの「3つのピアノ曲」、1976年にはヴェーベルンのOp.27の変奏曲と、超がつく難曲ブーレーズの第2ピアノソナタを録音している。ブーレーズの作品など、いまだに聞き通せたことがない)。
この録音は、まさにポリーニ最盛期の録音だ。1995年にアバド/ベルリンフィルとのライブ録音をリリースしてはいるが、ポリーニならではの演奏を求めるならばやはりこの1976年のものだろうか。このCDに収められている演奏は、かつてエアチェックしてラジカセでよく聞いていたものだ。磐石のメカニックにささえられ、輝くような音色のピアノが、明るいブラームスを奏でる。第2楽章のスケルツォでは、響きが濁らないために非常に豪快かつ鋭利な音楽を作り出しているのもこの演奏録音の特徴だ。
さらにアバド/VPOの少々細身の音のオケをバックにしているため、余計ブラームスとしては明瞭さが際立っている。ブラームスらしからぬブラームスと言えるだろうか。
LP時代では、バックハウスとベーム/VPO, ギレリスとヨッフム/BPOをよく聞いた。前者は、演奏者から言っても最高の名盤の誉れの高いものだったが、自分としては後者のギレリスのガッチリと安定した揺るぎのないピアノと、さらにそれを支えるヨッフム/BPOの雄大で猛進する強烈なオーケストラが好きだった。
(CDでは、ブレンデルとハイティンク/ACOを聞き、最近ではこのポリーニ盤と、アラウ,ジュリーニ/PO盤を聞き始めた)
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» ブラームスのピアノ協奏曲第2番変ロ長調 ポリーニとアバド/VPO [クラシック音楽のひとりごと]
肌寒い一日でした。昼から雨がしとしと降って、外出もせず、のんびり休日を楽しみました。
こういう日はクラシック音楽鑑賞であります。
4月に入って平日は帰宅が遅いので、こういう時に「まとめ聴き」しておかなくちゃ、体調が悪くなりますな。
で、今日はブラームスを。
ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品83。
マウリツィオ・ポリーニのピアノ、クラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィルの演奏。1976年録音のDG盤。このレコードはブラームス生誕150年を記念したDGの全集からの1枚。
イタリアのピアニストにイタ... [続きを読む]
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こんちは。ポリーニは聴いてないのですが、
バックハウス/ベームが名盤と言われながら
何故か、好きになれなかった。暗くて悲壮感みたいな・・・。
CDでゼルキンとセル/クリーヴランドが明るい演奏、ゲザ・アンダとフリッチャイ/ベルリン・フィルがすばらしくて気に入っています。
投稿: 丘 | 2006年3月16日 (木) 08:51
バックハウスとベーム/VPO(1967)については、吉田秀和氏が「世界のピアニスト」の「バックハウス」の項の「ブラームス」でこの音盤の詳細な評論を書かれています。それを読めば、この演奏がどのような音楽史的な価値を持つのかがよく分かるのですが、そのような価値判断を離れて、私はより印象の強いギレリスとヨッフム/BPOを好んでおります。
R.ゼルキンとセル/クリーヴランドOも是非じっくり聴いてみたいと思います。
アンダとフリッチャイといえばバルトークを連想しますが、そのコンビのブラームスも興味深いですね。
投稿: 望 岳人 | 2006年3月16日 (木) 20:33
こんにちは。TB有り難うございました。
ポリーニとアバドのブラームス2番は、オケがウィーン・フィルということもあって大好きな演奏です。
もう30年前の録音になるんですね。懐かしいです。
投稿: mozart1889 | 2006年4月23日 (日) 11:15
mozart1889さん こちらにもコメント、トラックバックありがとうございます。クラシック音楽界では、「黄金の70年代」とか聞いたことがありますが、この録音もその一翼を担うものだったのではないでしょうか。ポリーニ、アバドとも昇り竜の勢いを感じます。
投稿: 望 岳人 | 2006年4月23日 (日) 17:02