グルダとスワロフスキーによるモーツァルト ピアノ協奏曲第21&27番
◎モーツァルト ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467
ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595
フリートリヒ・グルダ(ピアノ)
ハンス・スワロフスキー指揮ヴィーン国立歌劇場管弦楽団<1963年6月6日録音>
グルダには、この録音の後、アバド&ヴィーン・フィルやアルノンクール&アムステルダム・コンセルトヘボウと入れたモーツァルトのピアノ協奏曲の録音があるけれど、それらは至極スタンダードなもので、このスワロフスキー盤の録音に聴かれるユニークさはない。ピリオド楽器による作曲された当時の演奏習慣を再現したと称する録音にもここまでユニークなのは少ないのではなかろうか?(以下、少々ネタばれになるのでご注意を)
バドゥラスコダ夫妻などの演奏習慣の研究によれば、決して道を踏み外しているとは言えないようではあるが、グルダは、特に21番のハ長調の協奏曲では、第1楽章冒頭のオーケストラによる提示部からピアノをアドリブ的に奏でている。もちろん、和声の流れを変えるとかはしていないが。いわゆるテキストにはない、装飾音もところどこに即興的に加えている。有名な第2楽章Andante では、主部のメロディーを思い切ってルバートさせているし、装飾音をつけながら、グールド張りに鼻歌を歌っているようだ。非常に遊び心と感興に溢れた演奏だ。(なお、私は、まだ寡聞にして実際に聞いたことがないのだが、グルダによるモーツァルトのピアノソナタ第15番ハ長調でも相当アドリブを追加した録音があるのだいう。)
アバドなどの指揮法の師匠だったことで知られるスワロフスキーがヴィーン国立歌劇場管弦楽団と称する(ヴィーンフィルはこの自主的な選抜メンバーなのだが、おそらくレコード会社との契約の関係でこう称したのかも知れない)オーケストラを指揮しているのだが、こちらはグルダの即興にもあわてることなく、うまく伴奏をつけ、弟子のアバド/VPOの同じ曲の演奏よりも細部の強調や見通しのよさ、軽やかさなどでは聴き応えのある音楽を作り上げている。
また、カップリングの第27番(これは最後のピアノ協奏曲として尊重されるが、近年の研究では、その着手は意外に早い時期だったとも言われる)でも、相当アドリブを楽しむことができるが、第21番ほど「崩し弾き」をしていないため、「ショック」はあまり感じずに済む。第2楽章のラルゲットは、モーツァルトの透明な心境がうかがわれるしんみりした楽章だが、グルダは比較的明るい軽快なタッチとアドリブでこの音楽を彩る。「春への憧れ」のロンドフィナーレは爆発的な喜びの音楽にはならず、むしろ慎ましやかな表情を見せる。
このCDは、当時DENONブランドで発売されたものだが、"Licensed for Sale in Japan Only"となっており、ライセンス面の制約がある音盤のようだ。
P.S. PhilipsブランドのSHE-255という880円の安いステレオイヤフォン(シンガポール製)を最近購入したが、これが非常にバランスのいい音をしてくれており、定位も決まっているのでクラシック音楽を寝転びながら気楽に聴くのに重宝している。
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