連休の収穫6 シューマン「音楽と音楽家」(岩波文庫)
シューマン著 吉田秀和訳「音楽と音楽家」(岩波文庫 33-502-1)
村上春樹の「海辺のカフカ」の読書感想文でも触れた「天国的長さ」について、「フランツ・シューベルトのハ長調交響曲」の章でp.149「その上この交響曲は、ジャン・パウルの四巻の大部の小説に劣らず、天国のように長い」と書かれている。ただし、吉田氏の注釈で「このよく引用される言葉は元々それ自体引用されたもので・・・・・クララ宛の手紙で使っている(1839年12月11日の手紙)」とされている。なお、問題のシューベルトのニ長調のピアノソナタについても、この本のp.81-p.85のメンデルスゾーンとシューベルトのピアノソナタを扱った評論で、第2大ソナタ(ニ長調)作品53として触れているが、「勇ましいニ長調ソナタ、一打一打が肝に徹し、心を奪う!迫力に富み、熱烈で底止すこところを知らない。終末楽章は・・・ひどくおどけたもの」と書いているのみだった。
学生時代、傍線を引き引き読んだものだが、その当時はこの本に書かれている多くの曲を実際に聴いたことがなかった。馬齢を重ねては来たが、音楽との接した量はその間相当増えており、この本の曲目にも親しいものが多くなり、また読み返すのが楽しみだ。
追記:
このシューベルトのハ長調交響曲といえばシューマンによるこの評言により必ず引き合いに出されるジャン・パウルという名前は、どこか別のところで聞いた名前だと思い調べてみたところ、マーラーの第1交響曲「巨人」 Titan の由来になった同名の小説を書いたというドイツの小説家のことだった。「巨人」のライナーノートや名曲解説書には必ず出ている名前なのだが、シューベルトの大ハ長調をシューマンが評したジャン・パウルと巨人のジャン・パウルが結びついていなかった。
まったく別の文脈の中で、まったく同じ固有名詞に接した場合などこういうことは時折あるのだが・・・
ジャンパウル
(Jean Paul)ドイツの小説家。本名ヨハン=パウル=フリードリヒ=リヒター。無限の世界への憧憬と現実の日常生活との分裂を題材とした。「巨人」「宵の明星」など。(1763-1825)
Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) ゥ Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)ゥ小学館 1988
生誕年的には、ちょうどモーツァルトとベートーヴェンの中間に位置する。ゲーテとも関わりがあったようだ。それにしても、ゲーテといい、ジャン・パウルといい、(モーツァルトもだが)、守護聖人の関係か、長いファーストネームだ!
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コメント
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こんにちは。ちょうど同じ本の同じ箇所にふれた記事を投稿したところでした。若い頃に読んだこの本、だいぶぼろぼろになりましたが、今も出ているのでしょうか。
投稿: narkejp | 2006年5月14日 (日) 21:44
narkejpさん、コメントありがとうございます。記事拝見しました。私も同じ音源のCDの記事をこの3月10日にアップしております。CDになってからはどうも強奏で音がビリつくなど音質がよくないようのですが、LPはいかがでしょうか?
シューマン著、吉田秀和訳の文庫本については、本当に偶然ですね。購入したのが1983年となっており、学生だった頃です。こちらはボロボロではありませんが、傍線や書き込みがいっぱいしてあり、そんなに読み込んだ割には記憶があいまいでお恥ずかしいかぎりです。
投稿: 望 岳人 | 2006年5月14日 (日) 22:17