ソコロフのラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ツィメルマンのリストを聴き、それから彼のレパートリーとしては意外な「ラフマニノフ」の録音を聴いてみて、少々記憶がよみがえった演奏があった。
グレゴリー・ソコロフがソ連のオケと来日したときのラフマニノフだ。彼は、このときの紹介でも、チャイコフスキーコンクールを弱冠10代で制覇したと書かれていたが、そのような才能の持ち主が、なぜ(言っては悪いが)1991年の(ムラヴィンスキーが指揮した団体とは異なる)レニングラード・フィルハーモニー交響楽団の(またまた言っては悪いが)少々ドサ回り的な強行軍に同行してきたのだろうかと不思議に思った。コンクール後、スランプに陥ったか何かで、西側に名前が売れなかったのかも知れないとも考えた程度でソコロフについては、その当時はまったく知識がなかった。
その後、ソコロフのことを思い出すことはなかったが、最近、ネットであるピアニストのBLOGを読み、その人が非常にソコロフを高く評価していることを知った。ネットで検索してみても、一部では「最高」との評価を得ているようだ。パリでのリサイタルのDVDが発売されているようだし、CDも何枚か出ているようだ。
1991年の彼らのコンサートツアーは、このサイトの情報では、この通り。今から思うと、1991年8月にソ連が崩壊したばかりで、指揮者、楽団員、ソリストとも、以前に結ばれた契約に基づくとはいえ、非常に不安定な状況下での演奏だったのではないか。
長野県須坂市のメセナホールは、この年か前年に完成したばかりの、地方都市には贅沢なほどのホールだが、100人を超すフルオーケストラとピアノを舞台に並べると狭いほどで、また音響的に残響時間が長めなのが特徴なのだが、これだけのオケの大音量だと特にブラスの強奏では響きが飽和してしまい、少々聞き苦しくなることがあった。
このときソコロフではなく、1990年にチャイコフスキーコンクールで優勝したばかりの諏訪内晶子もソリストとして同行していたので、自分自身も諏訪内が来てくれればなどと思っていた。
さて、そのソコロフだが、丸々とした体型の40代の壮年のピアニストで、100人を超すような大オーケストラをバックにラフマニノフの2番という有名曲を演奏してくれたのだが、残念ながら正直あまり印象に残っていない。(そういえば、この曲、小林研一郎がモスクワフィルと長野に来演したとき、ダン・タイ・ソンがソリストで弾いたのだが、そのときもあまり印象に残らなかった。)
印象に残らないのは理由がある。実演で聴くこの曲は、録音とは異なり、ピアノの音が分厚いオケに埋没しがちで、そう細かい部分までは聞き取れない。だから、そういう意味では、ツィメルマンの録音のようにあれほど細かい音がちりばめられているのは実演では聞き取れるほうがまれだと思う。
とはいえ、ソコロフを実演で聴けたのは、今となっては貴重な体験だったかも知れない。
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1991年
レニングラード・フィルハーモニー交響楽団
(指揮者:アレクサンドル・ドミトリエフ)
12月11日:須坂メセナホール
ムソルグスキー/はげ山の一夜
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番(P/グレゴリー・ソコロフ)
チャイコフスキー/交響曲第5番
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