ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2「月光」 アシュケナージ
ベートヴェン ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2 「月光」
ヴラディーミル・アシュケナージ (6:07, 2:10, 7:32) 〔1977年9月録音〕
相当前に書こうとしていて、まとまらず、アップしそびれていた記事。
6/21朝、梅雨に入り湿度が高く鬱陶しい満員電車の中で押し合いへし合いしながら通勤している途上、なぜか「月光」ソナタの第2楽章が脳裏に浮かんできた。
何度も聴き過ぎたこともあり食傷気味でずっとプレーヤーに掛けることがなかった曲だ。「二つの深遠をつなぐ妖精の架け橋」(一輪の花だったか?)と評される淡く優美な第2楽章の冒頭が急に思い浮かんだ。(いわゆる「通俗的」になりすぎると心が離れるということは、不思議な心理現象だ。吉田秀和「私の好きな曲」の「ドヴォルジャーク 交響曲第八番」の項で、吉田さんが「新世界」交響曲はあまりに通俗化したため聴く気になれないという旨のことが書かれており、結構驚いたのだが、通俗化したのとしないので作品の価値に変わりが出るものだろうか?)
さて、先日セルとクリーヴランド管弦楽団の最後のドヴォ8のCDの記事を書いたが、それが6/22のことで、そのとき同時に購入したのが、これまで聴いたことのなかったこのアシュケナージによるいわゆる「三大ソナタ集」だった。
その「月光」を聴いてみた。先日も、ゲルバーのEMI盤を聴いたし、この曲と言えば例のクライバーン、次に正統派のバックハウスのステレオ盤、それからグルダのアマデオ盤、R.ゼルキンとホロヴィッツのCBS盤、それからグールド盤などを聴いてきたのだが、それらと比べてアシュケナージのピアノは、それほど魅力的なものとは感じなかった。
第1楽章は、素人が格好つけて弾くときのように、冒頭をゆっくり入りそれから普通のテンポに移るような弾き方をしている。また、フレーズの前でタメを作っているのが気になってしまう。高音部と低音部の音色は悪くないのだが、中音部の例の3連符のあたりがコツコツするような音が聞こえるのも気になる。
第2楽章は、それほど違和感はないが、スタッカート音符が付点的になるようで少しリズム的に重いのがどうも気になる。
第3楽章のプレスト・アジタートは、比較的違和感はない。ただ、左手の16分の伴奏音型の音量に幾分ムラが感じられる。75小節からの展開部や167小節からのコーダの左手の第二主題の付点音符の弾き方がどうも野暮ったい。
全体的に誠実で、充実した音楽ではあるのだが。
どうもアシュケナージのピアノとは相性が悪いようだ。このことについては別に書いてみたい。
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ベートーヴェンの「月光」、大好きなんです。
アシュケナージの「月光」はLP時代からの愛聴盤です。
アシュケナージは、あの青みがかったクリスタルのような音色が大好きで、相性がイイです。音を聴くだけで、心が爽やかになっていきます。外面的で中身がない・・・と云われることもあるようですが、ピアノから得られるこの快感はエエなぁと思います。
投稿: mozart1889 | 2006年7月25日 (火) 08:14
こんな違和感を表面に出す記事をアップすると、アシュケナージを好んでいる方には不愉快な思いをさせるだろうと危惧しながら、敢えてこの記事をアップしたのですが、それにも係わらず、この記事にもコメントいただきありがとうございました。
弁解させていただければ、自分自身への問いかけとして、多くの人が賞賛しているアシュケナージのピアノ演奏やそのピアノの音色になかなか満足できないのは、自分の感性の問題なのかどうかをおこがましくも追求してみたいと考えております。
投稿: 望 岳人 | 2006年7月25日 (火) 17:47