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2006年7月24日 (月)

モーツァルト ピアノ・ソナタ集 リリー・クラウス (CBS盤)

Kraus モーツァルト ピアノ・ソナタ
第11番イ長調 K.331 〔1967年10月〕
第8番 イ短調 K.310 〔1967年10月〕
第15番 ハ長調K.545 〔1968年5月〕
第10番ハ長調K.330 〔1968年3月〕

リリー・クラウス Lili Kraus

リリー・クラウスも、音楽雑誌やレコードカタログなどで名のみ知っていた演奏家の一人で、ようやく最近CDを入手し、その演奏に触れることができた。私がクラシックを聴き始めた頃のCBSソニーのLPに封入されていたカタログには、このクラウスによるモーツァルトのピアノ協奏曲が何曲か掲載されていた。モーツァルト弾きとして、クララ・ハスキル、イングリット・ヘブラーなどの女流ピアニストとよく並べて語られていた。その中では、優美な演奏だが、ムラがあるなどとされていたのを記憶している。(なお、このクラウスは、1904年生まれ、ハンガリーでバルトーク、コダーイに師事したいわゆるハンガリー派の先駆け的なピアニストでもあり、第二次大戦中インドネシアで日本軍の捕虜になったことでも知られている。)

イ長調 「トルコ行進曲付き」は、最も有名なソナタだが、まったくソナタ形式を含まず、冒頭に優美なアンダンテの当時としては長大な変奏曲を持っており、第2楽章はメヌエット、そして、第3楽章は有名なロンド形式のトルコ風行進曲。クラウスのピアノは、丸く粒立ちがよい音でピッタリとつぼにはまった趣がある。ギーゼキングの(私にとっては)無味乾燥な演奏、最近の内田光子やピリスの少々神経質な演奏に比べて、テンポがよく、健やかで、聴き疲れがしない。

他の曲もおよそ上記のような特徴を備える。ただ、惜しいことに最後の第10番が録音の保存状態のせいか、一番新しい録音の割りに音割れがするものになってしまっている。

クラウスのモーツァルトは、一般的にはEMI盤のモノーラルの方がこのCBS盤よりもさらによいという評判なので、そちらもいずれ聴いてみたいものだ。

2009/05/23 追記:このCDの音質について、"And die Musik" という著名なクラシック音楽ページで言及されているのを見つけた。多分同じ抜粋盤についてだと思うが「あまり良い音質のCDとは言い難いです。アナログ全盛期、1967年から68年に録音した割に、ノイズがひどく、高音がきついため、長時間はとても聴いていられません。」ところが、その後に発売された全集盤では音質はまったく改善されている。「スピーカーから流れてきた音は抜粋盤とは全く別物でした。『最新録音盤にも引けを取らない音質の良さ』だとは必ずしも思わないのですが、全く別の音です。」

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ディスク音楽04 独奏」カテゴリの記事

コメント

リリー・クラウスのモーツァルト、世評の高さはクラシック音楽を聴き始めたときから知っていたのに、このCDを聴いたのはトシを取ってからでした。
丸味を帯びたピアノの音がいいですね。聴き疲れしないのが気に入っています。ただ、録音はこの年代にしては悪いです。それが少し残念です。

mozart1889さん、いつもコメントいただきありがとうございます。

このクラウスのモーツァルトのCDを聴かれた経緯が私とほとんど同じで驚きました(^^♪

私もクラウスのモーツァルト弾きとしての世評の高さに興味をもっていながらこれまで聞けずにいたのですが、たまたまこのCDを入手できました。ただ、優雅ということは重い演奏だろうからと一回聴いてお蔵入りのつもりであまり期待しないで聴き始めたのですが、結構自分の耳に合いました。おっしゃるように全体的に音が悪いのが残念ですが、愛聴盤になりそうです。

クラウスのモーツアルトはEMIの旧盤の方が音も演奏もいいですよ。かなりロマンティックなえんそうであり、ハスキルとは対照的ではありますが。

gkrsnamaさん、初めまして。コメントありがとうございます。このところBLOGの閲覧・更新が滞っており、お礼が遅れて申し訳ありませんでした。

クラウスのEMI盤は、名録音技師の手になるもののようですね。機会があれば聴いてみたいと思っているものです。

ハスキルと対照的とのことですが、よろしければ詳しく教えていただければ幸いです。

ただ、最近再発売されたCBS(ソニー)盤も、何故か(?)音がよくなっているようですね。

はじめまして、私もクラウスの今年出たCBSの全集版をもってます。確かに以前11番など4曲が入った抜粋版に比べると格段に音質が良くなってます。マスターテープには元々このような音で入ってたのでしょう。多少ハイ上がりな傾向に聞こえますが、ゼルキンのベートーベンなども同じ音質だったので、当時のCBSのサウンドポリシーだったのでないでしょうか。かの有名なコーホー先生は、このCBS版をまるで金ダライをたたくような音と言ってますが、けしてその様には聞こえません。金ダライを叩けばもっとすごい音になります。それよりも大事なことは、録音云々より、クラウスが2度モーツァルトの全集を作ってくれたことではないでしょうか。しかもCBS版はステレオです。私はヘッドフォンで聞く事が多いので、モノラルよりステレオのほうを好みます。それに、コーホー先生は、EMIの旧録音に対しK281(3).330(10).332(12).457(14).545(15)など演奏自体は新盤を採りたいと言っておられます。コーホー先生はEMI版をやたら褒めたたえ、CBS版についてはまったく相手にしてません。また、EMI版は、音の良質なものでないとその真価が判らないと言ってますが、なかなか初期にでたオリジナルのモノラルに近い良い音のCDはありません。したがって、今発売されているCBSの全集を聞いてみるのもいいのではないでしょうか。私は、初期のK279(1).280(2).281(3)などの美しさをこのCDで知りました。

クラウスのモーツアルトはEMI盤とCBS盤は別人かと思うほど違います。CBSでは割と普通に淡々と弾いているだけのようですが(解説に古典的なピアノとあったぐらい)、EMIではタッチは強烈ですしシューベルトになったかと思うぐらいに内面の激情を出してきます。どちらがいいかは好みかもしれませんが、あれほどの評価を受けているのはEMIのほうなんでしょうね。CBSなら、これぐらい弾ける人はいっぱいいるでしょうから。音もEMIの方がだいぶんいいですよ。ぼくの持っているのはLPですが、CD化された当初は音が悪くなったそうです。いまはどうでしょうねえ。

CBSはLPではそなたもコンチェルトも音が悪かった。鍋を叩いているように聞こえました。ただ、バーンスティンやセルやワルターでもそうなんですが、コロンビアの原版は高音質、ソニーがめちゃくちゃにしたのかもしれません。そういった意味で期待できるでしょうし、評価も変わるかもしれません。

ゆりのき6348さん、gkrsnamaさん、コメントありがとうございます。

ゆりのき6348さんには、折角のコメントへの御返事が遅くなりお詫びします。

SONYの再発売の全集の音質の改善、EMIへの録音についての情報、レビューありがとうございました。

両方とも是非聴いてみたいものです。

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 予定していた釣りが低気圧の影響で海が大時化のため中止になり、半月に渡って遊んでばかりいて延び延びになっていたことをかたつけるつもりが終わらなかった。普段の節制が大事ということなのです。  仕事も宿題も貯めてはいけません。あとが大変。  それにしても秋の青空が拡がり空を見る限りはとても気持ちがいいのです。 今日は、モーツァルト作曲、ピアノ・ソナタ第1番。リリー・クラウスのピアノ。  青空にぱぁ~~~~っと飛んでいきそうな軽やかな曲で嬉しくなってしまう。  今日のようないいお天気のお休みにはピ... [続きを読む]

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