カラヤンとオザワの「惑星」
2006年8月24日 プラハでの国際天文学連合の総会での票決により、冥王星プルートは、これまでの太陽系第9惑星の地位を滑り落ちて、dwarf planet つまりあの「指輪物語」のドワーフ こびとのようなプラネットに分類されることになった。1930年に発見されて以来76年目の決定で、まだ冥王星は太陽を一回りもしていないのだという。しかし、今回の天文学連合のドタバタ騒ぎは、科学的には意味のあることかも知れないが、「それでも、冥王星は回っている」とでも言うべきことで、人類の認識に無関係に氷の天体は、他の惑星とは違った公転面を静かに回り続けるのだろう。「名前など知ったことかと星が言い」。
今回のニュースもあり、ホルストの「惑星」が大人気のようで、ケント・ナガノがコリン・マシューズに委嘱して作曲された「冥王星」もこれでお蔵入りかと騒がれている。子どもたちは、動物や植物図鑑に比べて、天体、宇宙関係の図鑑はあまり見なかったのだが、今回のニュースをきっかけに相当興味を持ったようで、「彗星と水星は違うの」? 「金星と火星が地球と兄弟星なんだって」などと楽しんでいた。
子どもたちとその「冥王星」を含まない従来のホルストオリジナル版のカラヤンの新旧録音、これまで聞きなれてきた小澤盤を聴き比べてみた。
これは、ジョン・カルショーのプロデュースにより、カラヤンがヴィーンフィルを指揮してステレオ録音初期の1961年に録音したもので、イギリス系以外の指揮者のものとしては当時珍しく、またデッカの明晰な録音(今でも素晴らしい)がオーディオ的にも高く評価されたもの。今聴いてもヴィーンフィルの音色が非常に魅力的だが、昨今の精密な演奏に慣れた耳には少々細部の粗が聞こえてしまう。
火星 7:02/ 金星 8:20 / 水星 3:57 / 木星 7:36/ 土星 8:31/ 天王星 5:44/ 海王星 7:38
一方、こちらは、ディジタル録音初期1981年の手兵ベルリンフィルとの録音。音響面では磨かれており細部も徹底されてはいるが、自分が聞きなれた後述の小澤/ボストン盤のストレートな表現に比べると、演出臭が感じられるところがあるのが残念。
火7:14/ 金8:34/水 4:11/木 7:27/土 9:20/天 5:59/海 8:41
タイミング的にもVPO盤とは別人のようなテンポ設定になっている。
この小澤/ボストン響盤は、アナログ末期の1979年の録音だが、フィリップスの素直な録音のよさが出た聴きやすい音響のもので、ホルストにほとんどゆかりのないと思われる小澤、ボストン響は純音楽的でストレートな音楽を作り出している。細部まで緻密な音作りで、なおかつさわやかな音楽になっているため、小澤征爾の数多い録音の中で最も気に入っているもののひとつだ。
火6:46/金 7:53 /水 4:06/木 8:01/土 8:44/天 5:40/海 8:11
定評のあるボールト盤、今話題の冥王星入りのラトル/BPO盤などは未聴だが、機会があれば聞いてみたいものだ。
*過去記事 ホルストの誕生日
追記:
「すい、きん、ち、か、もく、ど、てん、かい、めい」という語呂による記憶法だが、これも最後の「めい」が取り去られることになる。
ちなみに欧米や他の諸国ではどのような記憶法が用いられているのだろうかと思って調べたところ、英語では、このページに紹介があったので、トラックバックさせてもらった。惑星の頭文字を用いてセンテンスを作っているのだという。
なお、惑星は、かつては「遊星」とも呼ばれており、「遊星仮面」というアニメーションも1960年代には放映されていた。惑う星より遊ぶ星の方が楽しい。なお、英語 planet の語源は、ギリシャ語の「放浪者」(さまようもの、さすらい人)で、それがラテン語に取り入れられて、フランス語から英語に取り入られたもののようだ。
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トラバありがとうございます。
とてもアカデミックでステキなプログですね。
そっか、音楽にも影響が・・・
「すいきんちかもく、どってんかいっ!!?」
の影響は大きいですね~(笑)
投稿: けこりん | 2006年8月30日 (水) 09:40
けこりんさん、こちらにもコメントいただきありがとうございました。
「冥王星」入りのラトル指揮のベルリンフィルの「惑星」のCDは、オリコンヒットチャートの上位となったそうで、クラシック音楽としては異例の売れ行きとのこと。皆さん情報感度が高いようですごいです。
投稿: 望 岳人 | 2006年8月30日 (水) 18:21