ブラームス 交響曲第1番 クレンペラー/フィルハーモニア管
オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団
14:05/ 9:23/ 4:40/ 15:54
〔1955年7月、1956年10月-11月、1957年3月〕
併録 悲劇的序曲 作品81 (12:27) 〔1956年10月〕
大学祝典序曲 作品80 (10:02)〔1957年3月〕
ロンドン、キングズウェイ・ホール
学生時代から吉田秀和『世界の指揮者』を愛読している割に、そこに登場する指揮者たち(その当時は多くが存命だった)の紹介されている音盤をなかなか聞く事ができていない。興味関心があちこちに飛ぶせいと吝嗇なのが理由の一つだ。そんなわけで、最近音盤をいくつか入手し聞き始めたモントゥーと同様、クレンペラーは名のみ知るだけでこれまでそれほど聴く機会がなかった。
LP時代は、しかつめらしい雰囲気や古色蒼然などという言葉が先入観となって馴染みにくく感じてしまい、結局一枚も購入したことがなかった。ブラームスの交響曲などはクレンペラーの横顔のジャケットがEMIから廉価盤で出ておりよくレコード店で見かけたものだったのに。
これまで聞いたクレンペラーのCDでは、地元のアマチュアコーラスでベートーヴェンの第九を歌った際に第九の音盤を集中的に集めた頃に目に留まって買ったフィルハーモニア管弦楽団との『第九』や、以前から名盤の誉れ高い『大地の歌』、高い評判は聞いていたがユニークな演奏とのことで購入に二の足を踏んでいて比較的最近買ったメンデルスゾーン『スコットランド』と『イタリア』程度。ようやく最近このブラームスの第1交響曲、オイストラフとのブラームスのヴァイオリン協奏曲を入手できて聞いている。(モーツァルト、ベートーヴェン、マーラーなどそのほかにも聞きたいものは多いのだが。)
ただ、聞いたことのある録音は少ないが、どれも強烈な手ごたえを感じさせてくれたように思う。
第1楽章序奏部のテンポが堂々としており、ティンパニの強打が実にいい音で鳴っているのが好ましい。それに続く主部も流れるのではなく、細部をゆるがせにせずに進むという感じを受ける。第2楽章も管楽器群を埋もれさすことなく、ヴァイオリンやホルンのソロも美しい。祈りの感情を感じさせてくれた。第3楽章もいわゆるクレンペラー的な遅さはないが、ブラームスが特に意識していたというベースの支えがしっかりと響いているため安定した音楽になっている。クレンペラーのテンポは一般に遅いといわれているが、このブラームスの曲については、全体的に速めであり、特に終楽章の速さは異例なほどだ。また、下記の録音の中では唯一ヴァイオリンの対抗配置を取っており、掛け合いが左右から聞こえてくる効果がユニークだ。楽器バランス的にクレンペラーは管楽器のソロイスティックな浮き立たせを用いる傾向があるようで、そのため全体の音色が明晰で見通しのよいものに聞こえることが多い。終楽章序奏部のアルペンホルン主題をフルートが提示する部分などはソロイスティックな目覚しさが素晴らしい。(マーラーの『大地の歌』などもそうだった。)そして、テンポが速い終楽章でもその速さをあまり意識させず、スケールの大きい音楽を作り出している。
なお、録音は、パンフレットの詳しいデータによると、1955年から1957年に掛けて行われている。相当古い時期だが、プレゼンス的に違和感のないステレオ録音になっているのが驚異だ。録音年代が分かれているのは楽章ごとに別に録音したのか、それとも最初録音した全曲に対して細部の修正用の追加録音をしたのか。通して聴いても不自然さは感じられないので、細部の修正なのかも知れない。
◆クレンペラー/PO〔1955-1957年〕 14:05/9:23/4:40/15:54
◆セル/クリーヴランド管弦楽団〔1960年代〕 13:05/9:22/4:41/16:20
◆ジュリーニ/PO 〔1961年1月〕 14:11/9:28/4:55/18:08
◆ザンデルリング/SKD〔1971年3,6,11月〕 14:22/9:50/5:05/17:15
◆ベーム/VPO〔1975年5月〕 14:13/10:41/5:05/17:52
◆ショルティ/CSO 〔1978年5月〕 16:45/9:48/4:40/17:19
◆バーンスタイン/VPO〔1981年10月〕 17:31/10:54/5:36/17:54
◆小澤/サイトウキネンオーケストラ〔1990年8月〕 13:02/8:16/4:50/16:30
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