マーラー 交響曲第4番を聴く
◆ブルーノ・ヴァルター/VPO、ヒルデ・ギューデン(S)
〔1955年11月6日、ヴィーン楽友協会大ホール、ライヴ・モノーラル〕
16:41/9:01/19:59/8:49
◆クラウディオ・アバド/VPO、フレデリカ・フォン・シュターデ(Ms)
〔1977年5月、ヴィーン楽友協会ホール、ステレオ〕
16:05/9:11/23:26/9:03
◆クラウス・テンシュテット/LPO、ルチア・ポップ(S)
〔1982年5月5-7日、ロンドン、キングズウェイホール、ディジタル〕
15:43/8:51/21:09/9:10
◆小澤征爾/BSO、キリ・テ・カナワ(S)
〔1987年11月21-27日、ボストン・シンフォニーホール、ディジタル〕
16:20/9:04/20:24/8:35
narkejpさんのblogで教えてもらった山形交響楽団(飯森範親指揮)のマーラー交響曲第4番のテレビ放映を見て、意外(と言っては失礼)だがすっきりした好演だったので、これに刺激を受けて、以前に書いたこの交響曲の録音についてのコメントや、まだコメントを書いていないアバド/VPOの録音の記事をまとめてみようと思った次第。
私のそう広くも深くもないマーラー体験は、この曲から始まった。まだLP時代、高校の夏休みに、DGのレゾナンスシリーズという廉価盤シリーズに含まれたクーベリック/バイエルン放送響によるもの購入した。どういうきっかけだったかは忘れたが、その頃はまだマーラーと言えば難解な音楽かと思っており、家の名曲解説全集などで、最も古典的で小規模な作品と書かれていたことから、入門にいいと思ったのかも知れない。
まず最初の鈴の音に驚かされた。このようなそり遊びのような楽しげな交響曲があるのかと。第2楽章のスケルツォは悪魔のヴァイオリンとか言うがなんだか童話の世界のようだと感じ、第3楽章の美しさは最初は分からず、次第に親しんでいった。第4楽章は、歌詞カードを見ながら追っていったのだが、キリスト教か童話かよく分からないものだと思った。どうも交響曲としては全体のバランスが悪いが、管弦楽が小気味よく鳴り、親しみやすいメロディーもふんだんに現れるのですっかり気に入ってしまった。クーベリックのマーラーは後に「草いきれの香りがする」ような質朴なアプローチと言われているのを知ったが、このLPから流れてきた音楽はまだその他のマーラー演奏を知らない頃には、十分洗練された音楽に聞こえた。ピアノを習いながらロックに関心があり、あまりクラシック音楽を聴かなかった弟も結構この音楽を好み聴いていたようだった。また、題名は忘れたが、当時NHKでこの曲の第一楽章第二主題(チェロがメロディーを朗々と奏でる)を印象的なBGMに使った幻想的なドラマが放映されたのを記憶している。
ヴァルター/VPO 1955年ライヴ 「プラハ」、マーラー第4交響曲 は、先日このリンクの記事でコメントした。
また、小澤/BSO, テンシュテット/LPOのマーラー第4交響曲 は、最近更新を怠っているホームページに、以前簡単なコメントを書いたものがある。しかし、この二人のマーラーは、どうも録音の音量レベル設定が低すぎるようで、DGやデッカの普通のボリュームの位置で聞いていてはその真価が把握できないきらいがあるようで、もう一度聴きなおす必要があるかも知れないと今では思っている。
ということで、この記事では、アバドとVPOの録音について簡単にコメントしてみたいと思う。
1977年と言うと、最近ブラームスの第1番で書いたベームがまだ存命ポリーニとの協奏曲を相次いで録音し、、別記事でも書いたドホナーニによる「ペトルーシカ」と「マンダリン」が録音された年にあたる。
アバド盤の特徴のひとつは、他の三つの録音に比べて第三楽章が非常にゆっくりしているというところにあるようだ。マーラーの弟子であるがロマンチックな古典主義者ヴァルターの指揮する第四交響曲は、「透明で耽美的な音響(特に濡れたような艶のヴァイオリン!)を用いながら、突発的な強調やテンポの変化により、結構劇的で表現主義的な表現になっている。」と自分は感じたのだが第三楽章は比較的速い。新古典主義的アプローチの旗手と言える若きアバドの録音は、USA出身の当時人気の高かったメゾソプラノのフォン・シュターデを迎えての非常に緻密で着実な音楽作りになっている。当時アバドはシカゴ響とヴィーンフィルを振り分けて、マーラーの交響曲全集に取り組んでおり、シカゴとの交響曲第5番と「リュッケルトによる5つの歌曲」 とのカップリングはLPで求め、特に後者の微妙な音色の移り変わりに感銘を受けたことがあったが、このVPOとの録音も楽器の生々しい音色のブレンドの感触など感覚的な面での面白さを感じる演奏だ。ただ、着実で細部まで彫琢された演奏だが、流れの面で少々滞りが感じられないではない。第三楽章の長大な変奏曲がこの交響曲のクライマックスであるのは、他の演奏でもよく感じられるものだが、小澤はタイミング的にはヴァルターのライヴとほとんど瓜二つであるのに対して、アバドはこの第三楽章をとにかくじっくりと聞かせようとしているようだ。それはいいのだが、ほとんど止まりそうなのはやはり流れや動きという点で少々気になるところではある。第四楽章のフォン・シュターデは、『子どもの魔法の角笛』の素朴な世界を色濃く歌っている。
こうなると、しばらく、クーベリックの録音を聞いていないが、また聴きたくなってきた。
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narkejpです。ご紹介ありがとうございます。私もこの第174回の定期演奏会は野暮用で行けなかったので、放送があって嬉しい限りでした。もう一度、BSで放送されるようで、そちらでは第2楽章を含むマーラーの4番の全曲と、ソプラノの佐藤さんのモーツァルトも聞けるといいなぁ、と願っています。来月は小ト短調とマティアス・キルシュネライト(Pf)との「ジュノーム」と「プラハ」と、飯森範親+オール・モーツァルト・プロの予定で、こちらも楽しみです。
投稿: narkejp | 2006年10月17日 (火) 06:24
narkejpさん、コメントありがとうございます。山形では身近でいい音楽が聴けてうらやましく思います。今晩、ビデオで収録しておいた先日の放送を見直しました。第四楽章ではあのチャイコン一位の佐藤美枝子さんの歌も見事でした。山形交響楽団は初めて聴きましたが、結構テンポの変化の激しいこの曲をうまく演奏していたように思いました。指揮者の飯森さんは、第一楽章では結構メリハリをつけていましたが、第三楽章の長丁場は少々しんどかったように見受けましたが、若いだけあり活気のある音楽作りが楽しいですね。「ジュノム」は好きな曲ですが、まだ実演を聴いたことがありません。コンサートレポートを期待しております。
投稿: 望 岳人 | 2006年10月17日 (火) 23:10