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2006年10月15日 (日)

バルトーク 弦楽四重奏曲 第4番 Sz.91 ハンガリーSQ, ABQ,ジュリアードSQ

バルトーク・ベーラ(1881-1945) 弦楽四重奏曲 第4番 Sz.91(1928)

Bartok_sq_hungary ハンガリー弦楽四重奏団 (セーケイ、クットナー、コロマゼイ、マジャール) 

〔1961年6月,9月、ハノーファー、ベートーヴェンザール〕 

Allegro 6:02/ Prestissimo, con sordino 2:59/ Non troppo lent 5:40/ Allegretto pizzicato 2:46/ Allegro molto 5:41


Bartok_sq_julliard1963 ジュリアード弦楽四重奏団 (マン、コーエン、ヒリヤー、アダム)

〔1963年5月15日、16日〕

5:47/2:47/5:44/2:55/5:25


Bartok_sq_albanbergqアルバン・ベルク四重奏団(ピヒラー、シュルツ、カクシュカ、エルベン)

〔1983年-1986年、セオン、エヴァンゲリスト教会〕 

5:59/2:50/5:20/2:54/5:34


バルトークの弦楽四重奏曲は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の後継であり、傑作揃いだという話をよく目にしたものだった。学生時代にエアチェックを盛んにしていたときにたまたま録音したのは、ブランディス四重奏団による第6番だったと思う。同じバルトークでも「オケコン(管弦楽のための協奏曲)」には早くから親しんでいたのだが、当時弦楽四重奏曲ではベートーヴェンのラズモフスキー第1番(「第7番」)や七楽章の第14番にはぞっこんだったが、バルトークとなると歯がたたず、ずーっと(聴く上での)難曲の地位はゆらがなかった。

どんなきっかけかは忘れたが、バルトークの6曲の弦楽四重奏曲を初めて聴いたのは、ようやく2000年の秋だった。ちょうどCDプレーヤーを持ち歩いていたので、早速喫茶店でCDを開封して聴き始めたのだが、まったく耳に入って来ないのには閉口した。あまりに異質な音楽なので自分が何を聞いているのか、頭が理解できないのだ。その後、上記リンクのホームページにも書いたが、図書館でスコアを追いながらタカーチュQのCDを聴いたり、廉価盤のABQ、ジュリアードSQと購入して様々なアプローチを試み、聞き比べる内に次第にこの第4番が耳なじみになってきた。無調に近いと言われ、リズムも複雑で覚えにくい音楽ではあるが、それでも第4番などは、第1楽章に執拗なモチーフの繰り返しがあるので、そのモチーフを耳が自然に記憶したりしてきたし、第5楽章のバルトーク的な疾走感のある猛烈な音楽に共感を覚えたりもしてきた。

ハンガリー弦楽四重奏団のゾルタン・セーケイは、バルトークにヴァイオリン協奏曲第2番を委嘱したこともある名ヴァイオリニストで、この四重奏団員全員がハンガリー出身でバルトークの音楽への共感は非常に強くこれらの曲集の十字軍的な位置にいた団体のようだ。たまたま店頭で見つけて初めはこのCDから入門したが、その後特にジュリアードSQの録音を聴いてからは、このハンガリーSQの音程が少し甘いのではないかと感じられるようになった。初めの頃分かりにくいと感じたのはその辺りも関係しているのかも知れない。それでもジュリアード、ABQと聴いてきて、またハンガリーSQに戻ると、味のある演奏だという感想を持つ。

ハンガリーSQの次に聴いたのはABQ。これはレコードアカデミー賞を受賞するなど、一時期はバルトークと言えばまず第一に指を屈すべき録音として知られていた。それほど有名な録音だったが、FM放送などでも耳にした記憶がなく、このCDを買って聴いたのが初めてだった。これは、粗いほどの迫力を持つハンガリーとジュリアードに比べて、響きが豊かで微妙な音色の差異がはっきり聞き取れ、また各奏者とアンサンブルとしての技量も高度だということもあるのだろうが、不協和音も決して濁ってはおらず美しいバルトークになっている。もちろん音楽の性質上、アグレッシブで孤高な本質は変わらないのだが、色彩が感じられる音楽になっている。
 ABQは、学生の時に来日公演(仙台)を聴くことができた弦楽四重奏団で、この録音のメンバーはそのときのメンバーであり、非常に親近感がある。惜しくも近年ヴィオラのカクシュカ氏が逝去されてしまったが、宮城県の古い県民文化会館での演奏を今でも思い出す。

Bartok_sq_julliard_1963_cd最後に聞いたのは、ジュリアードSQの2回目の録音。ジュリアードSQの精密な表現により、バルトークの弦楽四重奏曲の本格的な演奏が始まったとも言われるほどで、音程やリズムなど今聴いてもビシっと決まっているようだ。この録音を聴いてから、バルトークの音楽の構造、形式のようなものがおぼろげながら分かって来たように思う。ヴェーグやケラー、エマーソン、近年のハーゲンなどの録音を聴いていないのだが、バルトーク演奏史上期を画すという意味で画期的な演奏だったという評もうなずけるものがある。なお、ジュリアードのCDは、Sony Franceが初CD化したもののようだ。なお、CDそのものは、CD番号は入っているが、曲目、演奏者情報がまったく記載されていない非常に珍しいものだ。

バルトークの弦楽四重奏曲は、親しめるようになった今でも決して聞きやすい音楽ではない。特にこの第4番は、バルトーク中期の傑作で、無調に近い調性。鏡像的な対称形式 ABCBA。特に第1楽章のモチーフが躍動的なリズムの第5楽章で効果的に再帰するのは印象的。第2楽章は、猛烈なテンポのスケルツォ的な音楽。第3楽章は、いわゆる夜の音楽。民謡的なモノローグが印象的。ここではハンガリーSQがいい味を出している。第4楽章は、チャイコフスキーの交響曲第4番と同様全曲ピチカートによる音楽だが、バルトークピチカートが効果的に用いられている。そして終曲はバルトーク的に疾走する曲。

漫然とは聴けず、猛烈な集中力と体力を要する曲だ。付き合いにくい存在だが、じっくり辛抱すれば音楽的に得るものがあるというところだろう。以前、前日に記事をアップしたヴァーグナーの『ニーベルングの指環』を聞いたあとで久しぶりにバルトークを聞いたところ、「ヴァーグナー以前と以後、ヴァーグナーの克服」というものが分かったような気がしたのも収穫のひとつだった。

*関連記事 2003年11月12日 第3番

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