ツィメルマン リサイタル NHK芸術劇場
10/1(日)の夜にNHK教育テレビの芸術劇場で、今年来日した Zimerman ツィメルマン (NHK風にはツィマーマン。ジメルマンの表記もあり)のサントリーホールでのリサイタルの模様が放映され、録画しておいたのを昨夜鑑賞した。
曲目は、モーツァルトのK.330, ベートーヴェンの『悲愴』、ラヴェルの『高雅で感傷的なワルツ』。アンコールにガーシュインの『3つの前奏曲』という珍しいレパートリーを一曲ずつ。(ポーランドの現役の女性作曲家のソナタは放送割愛?)
ツィメルマンのモーツァルトソナタ集は、デビューしてからすぐDGからLPで発売(若きツィメルマンが正面を向いているポートレート写真がジャケットだった)されたのをFM放送で聴き、澱みのないさわやかなモーツァルトに感心したのだが、いつの間にか廃盤になってしまった。今回のリサイタルのモーツァルトは、タッチは相変わらず清潔でテレビの音ながら冴えた音色も分かったが、ところどころ大きなリタルダンドを入れたり、フィナーレのコーダの最終和音の直前に空白が生じたかのような盛大なゲネラルパウゼを入れたりで、全体のフォルムが恣意的に感じてしまい、どうもモーツァルトを味わう上には支障があった。
次の『悲愴』は、第一楽章提示部を冒頭のGraveからリピートするという(R.ゼルキンのCDもそう)解釈により、若きベートーヴェンのパセティックな大ソナタを奏でていた。食事をしながら視聴していたのであまり細かくは聞けなかったのだが、出来とすればあまり印象に残らない演奏だったように思う。ピアノの音もモーツァルトよりは魅力的ではなかった。ただ、映像的には、あの冴えてにごらない音響を作り出す秘訣と言われているペダリングの妙技を見ることができた。ツィメルマンは協奏曲をバーンスタイン/VPOと録音しているが、ソナタの録音はこれまでDGからは出ていなかったのではなかろうか?レパートリーについて慎重派の彼のことなので、全曲録音などはのぞむべくもないが、現在の脂の乗った時期に、是非中期と後期のソナタのいくつかを録音して欲しいものだ。
三曲目でこれがメインなのか、ラヴェルの『高雅で感傷的なワルツ』は、オーケストラ曲としてはクリュイタンス/PCOで数度耳にした程度、ピアノ演奏ではフランソワの録音を聞いたことがある程度だが、音楽としてどうも散漫な印象しかなく、せっかくのツィメルマンの演奏もあまり楽しめずただ聞き流しただけになってしまった。
アンコールは、珍しいガーシュインのソロピアノ曲。ツィメルマンも寛いだ表情で楽しげに演奏していた。
現在最も人気のあるピアニストの演奏会だけあり、サントリーホールも満員の盛況だったようだ。
なお、ネットのコンサートレビューで論争になっていたが、ツィメルマンの「日本のイラク戦争派兵への抗議の演説」は流石にカットされていた。
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コメント
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この事件については私なりに関心を持っているのですが、そのアピールの表現の仕方やポーランド人としての立場に議論の余地がありそうです。
そうしたものを、ニッポン・ホウソウ・キョウカイが自主検閲するのは肯けますが、中継録画を知っていてアピールしたとすると、なお一層驚かされました。
こちらではショパンコンクール優勝者の演奏会は、ポゴレリッチを除くと必ずしも多くはないのですが、このピアニストの市場で置かれている位置なども勘繰りたくなります。
ジィメルマン(ポーランド読み)本人に直接尋ねて真意が知りたい。それともそれはインタヴュー記事に詳しく取り上げられているのか?
投稿: pfaelzerwein | 2006年10月 4日 (水) 19:15
pfaelzerweinさん、ツィメルマンの異例な政治的発言の動機や意図はどこにあったのでしょうか?彼は来日回数が非常に多く、それだけに日本の政治について一家言あるのかも知れませんが、リサイタルの場ですべき発言だったののかどうか?好きなピアニストではありますが、その辺はネット情報で知っただけであまり詳しいことは分かりません。
音楽面では、モーツァルトの崩し方は少々極端でした。これも彼の突発的な発言と同根なのかも知れないと想像するのは、少々穿ちすぎでしょうか?
投稿: 望 岳人 | 2006年10月 4日 (水) 21:11