ベートーヴェン 交響曲全集 クリュイタンス/BPO
■アンドレ・クリュイタンス指揮
■ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Gré Brouwenstijn(S), Kerstin Meyer(A), Nicolai Gedda(T), Frederick Guthrie(B)
聖ヘドヴィッヒ聖堂合唱団
■交響曲全曲
No.1 9:35/6:08/3:31/6:06
No.2 12:46/11:30/3:49/6:50
No.3 14:27/16:14/5:24/11:33
No.4 10:16/9:56/6:06/7:02
No.5 8:24/9:51/5:29/9:08
No.6 10:18/13:44/5:54/3:45/9:53
No.7 13:34/9:27/8:24/7:04
No.8 10:37/3:57/5:03/7:46
No.9 18:08/11:35/17:23/25:34
■序曲集
プロメテウスの創造物 作品43 5:40
エグモント 作品84 9:11
フィデリオ 作品72b 7:05
〔1957年-1960年、ベルリン、グリューネヴァルト教会〕
私のような中年ファンが青年だった頃には、フランス系指揮者のアンドレ・クリュイタンスがベルリン・フィルを振った緑色のジャケットの東芝EMIのセラフィムシリーズのLPのベートーヴェンの交響曲全集をよく店頭で見かけたものだった。
この中では特に第6番『田園』の評判が高かったが、長らくメジャー会社の廉価盤として田舎のレコード店の店頭にもあったもので、その他の曲目も廉価盤のファーストチョイスとしては相当聞かれたものだと思う。私もLP時代のベートーヴェンの交響曲を集めるのに、第1番と第2番がカップリングされたこのコンビによるLPを求めた。第2番、第1番の順に収録されていて、流麗でボリュームがあるベートーヴェンだった。
クリュイタンスはベルギーのアントワープ生まれ、いわゆるフランドルの出身ということもあるのか、ゲルマン的な音楽も得意としており、フランス系指揮者としてはバイロイト音楽祭に招かれた最初の人物ではなかっただろうか?
彼のラヴェルの管弦楽集やピアノ協奏曲、ドビュッシー、ベルリオーズ、フォーレなどは今でも現役盤としてカタログから消えることのないものだが、このベートーヴェン全集も長い生命を保っている。
Diskyというバジェットプライス会社(オランダ系らしい。Brilliantもオランダ系)が、EMIからライセンスを得てリマスタリングしたものがこの全集。店頭で買ったので一応値段は税込みで2,623円だった。またEMI自身も、自社レーベルで同じ内容の全集を(少し高い値段で)販売している。それほど根強い人気があるのだろう。
モントゥーの時にも書いたが、この録音と同じ時期に、ドイツ人シューリヒトがクリュイタンスの手兵であるパリ音楽院管弦楽団を指揮してベートーヴェンの交響曲全集をEMIに録音している。フルトヴェングラーが1954年に逝去し、カラヤンは未だイギリスやヴィーンで録音し、ベルリンフィルでの録音はようやく始められた頃だった。
クリュイタンスがこのBPOを使ってベートーヴェンの全集を録音したのは1950年代末の時期なのだが、フランスとイギリスの戦勝国側が比較的勝手にプロデュースできたのだろうか?それとも、シューリヒトとクリュイタンスのクロスでの交換のように、独仏の融和の象徴としてベートーヴェンの録音を企画したのか?このクリュイタンス/BPOは、フランスEMIの企画のようだ。この辺の詳しい事情については、どこかにその経緯は書かれているのだろうが、寡聞にしてよく分からない。
さて、演奏、録音とも明晰なベートーヴェンだ。世評の高い『田園』は、全体的に起伏が少なく、残響の多い教会録音ということもあるのだろうが、若干第一楽章のアンサンブルの微妙なずれが気になるなどそれほど感心するものではなかったが、第3、第5や第7といったむしろ世評の高くない録音の方が私には面白かった。特に第3番『英雄』の第1楽章の快適なテンポと胸のすくようなスフォルツァンドの歯切れよさは、フルトヴェングラーにもカラヤンにもなかったもので、素晴らしい。モントゥー/LSOの7番でも同じで、これがフランス系の指揮者のベートーヴェンの特徴の一つなのだろうか?
そういう意味で、フルトヴェングラーの残したドイツ・ロマン主義の伝統を失っていないプロイセンのオケとフランドル出身のクリュイタンスの組み合わせは絶妙のものだったといも言えるかも知れない。
自分の生まれた頃の古い録音だが、楽しみが増えた。各曲目については、別途感想を書いて見たい。
追記参考:
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