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2006年11月 1日 (水)

エルガー 『エニグマ』変奏曲、『威風堂々』 ボウルト/LSO,LPO

Elgar_enigma_pomp_boult エドワード・エルガー(1857-1934)

自作テーマに基づく変奏曲『謎』 (エニグマ変奏曲)作品36
   サー・エイドリアン・ボウルト(ボールト)指揮ロンドン交響楽団
   〔1970年8月、キングズウェイホール録音〕

『威風堂々』行進曲第1-5番(全曲)作品39
 サー・エイドリアン・ボウルト(ボールト)指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
  〔1976,1977年録音、キングズウェイホール、アビーロードスタジオなど〕

先日、そのヴァイオリン・ソナタについて書いたイギリスの作曲家エドワード・エルガーは、一般に行進曲『威風堂々』、『愛の挨拶(Salut d'amour 〔Liebesgruss〕)』作品12で日本でも比較的著名な作曲家だが、『図解音楽辞典』p.483の「19世紀/世紀末Ⅳ/印象主義2:ラヴェル、ラフマニノフ、その他」(原書は、ドイツで出版)においては、「独特な様式をもつ後期ロマン派、『エニグマ変奏曲』(1899)」とたった一行触れられているに過ぎない。

イギリスは、音楽文化の面でも大陸諸国とは異なる独特の展開をした国のようで、初心者向けの音楽史ではバロックのパーセルと現代のブリテンの名前が挙がる程度だが、かの国ではあまり日本では知られることのない作曲家の作品も多いに愛好されているらしい。例えば、上記のp.483にはエルガーのほかに

- C.V.スタンフォード(1852-1924) 7曲の交響曲、アイルランド狂詩曲
- A.C.マッケンジー(1847-1935) 序曲、スコットランド狂詩曲、カナダ狂詩曲
- C.H.パリー(1848-1918)
- F.ディーリアス(1862-1934) 印象主義的色彩、イギリス・ラプソディ『ブリッグの見本市』、『夏の夜のテムズ川』
- G.バンドック(1868-1946) 『ヘブリディーズ交響曲』
- R.ヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958) 9曲の交響曲、①W.ホイットマンの歌詞をもつ『海の交響曲』、②『ロンドン交響曲』、③『田園』。

印象主義的傾向は、G.ホルスト(『惑星』)、A.E.T.バックス、F.ブリッジ、J.N.アイアランド、とくにC.スコット(1879-1970)の3曲の交響曲、メーテルリンクの『アグラヴェーヌとセリゼット』や『ペレアスとメリザンド』への序曲に見られる。

と結構多くの名前が挙げられているが、ホルストやディーリアス、ヴォーン・ウィリアムズを少し知っている程度で、他の作曲家についてはほとんど知るところがない。

その中で、エルガーは『愛の挨拶』に聞かれるような非常に美しいメロディーを書いた人で、『エニグマ変奏曲』の第9変奏「ニムロッド」などもとりわけ気品のある美しさだ。また、『威風堂々』第1番の中間部のメロディーは、イギリス人にとっての第二の国歌とまで愛好されており、日本でも親しみやすいコンサートなどではよく演奏される。

このCDは、イギリスの名指揮者で、ブラームスやホルストの演奏などに定評があったサー・エイドリアン・ボウルト(普通はボールトと表記されるが、動詞としての boult の発音は ボウルトなので)が指揮したいわゆるお国ものの『エニグマ変奏曲』と『威風堂々』全五曲だ。CDのジャケットも、イギリスの老舗EMIが企画したイギリス音楽シリーズの内の一枚で、EMIとしては、これらの有名な作品の代表的な演奏という位置付けなのだろうか?

エニグマとは、"enigma" と綴り、直訳としては「謎」という意味だという。というのも、エルガーは、この変奏曲のテーマとして、曲には直接出現しないテーマを設定しているらしい。「提示されている主題は本当のテーマではない。隠されている本当の主題は何でしょう?」という謎掛けをしているため、謎の変奏曲と呼ばれているのだという。これまで、イギリス民謡など多くの候補が挙げられたようだが、未だに謎であるらしい。エルガー自身は、皆が気が付かないのを不思議がっていたようだが、ついぞその謎は明かされなかったという。変奏曲そのものは、エルガーとその周囲の家族、知人達の性格を表現しているといい、各変奏にイニシャルが付けられている。これは早い時期に正解が見つかったようで、現在のCDの解説などに必ず誰々という名前が表示されている。非常に長いオーケストラによる変奏曲だが、後期ロマン派といってもイギリス人らしい節度あるオーケストレーションや和声法により、聴いていて斬新なところは少ない代わりに安心して聴く事ができる音楽になっている。聞き比べをしたことがないが、ロンドン響を指揮しているボウルトは、各変奏を丁寧に演奏させている。「ニムロッド」も節度ある美しさだ。

『威風堂々』は、"Pomp and circumstance" という熟語の邦訳とのことで、"pomp" は「壮麗、華麗、威厳」などのイメージ、"circumstance" は第一義は「状況」だが、「儀式ばること、仰々しいこと」という意味もあるようだ。合わせて、「堂々たる威儀」となる。第1番が特に有名だが、他の四曲も同様の形式に従っていながら短調を主調とする作品もあり、変化があってなかなか面白い。ディズニーアニメ『ファンタジア2000』では、ドナルド・ダックが主人公の「ノアの箱舟」の物語においてこの威風堂々行進曲の何曲かが組み合わせアレンジされて用いられている。そのプレ・ナレーションによると、アメリカでは卒業式などの行事でよく使われるとのこと。こちらは、ロンドン・フィルを指揮しての演奏だが、過度に派手すぎない落ち着いた雰囲気の演奏になっている。

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コメント

nimrod、ユーチューブで見ていて出会いました。
こんな曲があったんだ!と。
感動します。

登山、良いですよね、

突然のコメント失礼しました!
読んでいて、思わずコメントしました。

また読むの楽しみにしますね~!

ekさん、コメントいただきありがとうございました。しばらくブログから離れておりましたので、お返事が遅れてすみません。

nimrod 本当に美しい曲ですね。私は、この曲を以前N響アワーでこの部分が取り上げられたときに聞いて感激し、曲名が分からなかったので、当時参加していたパソコン通信の音楽フォーラムで質問したことがありました。英国人エルガーの音楽は渋いですが、気品があり、美しいものが多いですね。登山は、テニスやスキーと並んで昔は熱中したものですが、ここ15年ほど離れてしまっています。また山歩きを再開したいものだと思っていますが。

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