ジョルジ・シフラのリスト ピアノ曲集
Franz Liszt
1. ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調 (10:11)
2. 同上 第6番 変ニ長調 (6:56)
3. 同上 第15番 イ短調『ラコッツィ行進曲』(4:46)
4. ラ・カンパネッラ (4:11)
5. 愛の夢 第3番 変イ長調 (4:22)
6. 小鳥に説教するアシジの聖フランソワ(2つの伝説曲 第1曲) (7:51)
7. リゴレット・パラフレーズ (ヴェルディ曲、リスト編曲) (7:13)
8. ファウスト・ワルツ (グノー曲、リスト編曲) (10:46)
ジョルジ・シフラ György Cziffra (ピアノ)
リスト弾きとして名前だけ知っているシフラのCDがやはりこれもブックオフで中古盤で手に入ったので、聴いてみた。
シフラの評価は、1970-1990年代に私がよく読んだ『レコード芸術』などの日本の音楽誌では特に低かったように記憶している。そこでは、曲芸まがいで内実を伴わず空虚だという評がもっぱらだったため、もともとリストの曲に関心がなかったこともあり、これまでその芸風に触れる機会さえなかった。
ちょうどこのCDには、フジ子のCDに収録されていた曲目と共通するものが何点か入っているので、聞き比べてみるとその違いは非常に大きい。先日、ヴィルトゥオーゾと言われるヴァイオリニストのヒラリー・ハーン、ハイフェッツなど聴いてみたが、このシフラの演奏こそ時に胸がムカツクような大変な迫力と超絶的な技巧のオンパーレドといった趣の演奏だ。
先にも書いたが、フジ子ヘミングの弾くリストが個性的な演奏として一方の極にあるとすれば、このシフラの弾くリストは、これでもかという技巧の顕示と大胆なデフォルメ(シフラは即興演奏を得意としていたというので、ところどころ自ら編曲しているのではないかという部分もあるように思う)という点でもう一方の極にあるのではなかろうか?
フジ子の演奏は、音楽から取り出すメッセージの豊富さと音の美しさは別して、いわゆるピアニスティックな感覚的な喜びはあまり感じられないが、シフラのものは音楽が内包する何物かを伝えようとするよりも、ピアノという楽器でどこまでできるのかという極限を追求するような趣があり、強い打鍵と猛烈な速さの連打、跳躍をものともしない精度の高い技術などが特徴となっているようだ。
録音もモノーラルで古い年代のものもあるのだが、その古さを感じさせない迫力がある。
曲目は、リスト人気曲集で、Bravuraな、『ハンガリアン・ラプソディ』3曲、『ラ・カンパネッラ』、『リゴレット・パラフレーズ』などのほかに、『愛の夢』、私がフジ子の演奏で気に入った『小鳥に説教するアッシジの聖フランシス』のような曲も収められている。
(なお、参考までにフジ子のタイミングは、1. 9:24, 4. 5:37, 5. 4:38, 6. 9:10)
ただ、技巧の誇示はすさまじいものがあるが、それはリストの曲がそのようなものを要求しているのであり、単にメカニカルな凄さを誇示(正確さ、音の大きさ、速さなど)を目的としているのではなく、音楽が要求する方向とのずれがないため、むしろ前述のムカムカさと相反するようだが、爽快感も感じられるほどだ。大変楽しむことができた。
昨日のトスカニーニのヴァーグナーもそうだったが、やはり「百聞は一見に如かず」(より正確には、百読は一聴に如かず)である。
子どもと一緒に音楽を聴くと意外な感想が返ってきて驚きもするし、とまどいもすることがあるのは、馬齢を重ねてと先入観の塊のようになってしまったこともあるのだろう。複雑なクラシック音楽には、形式感のような一定の先入観が必要とされるのだろうが、作曲者、演奏者についての予備情報の多くは無用なものが多いことをもう一度自戒する必要があるようだ。
« トスカニーニのヴァーグナー前奏曲集 | トップページ | J.S.バッハ クラヴィア協奏曲第3番ニ長調 »
「ディスク音楽04 独奏」カテゴリの記事
- 小学館 モーツァルト全集のCDを夏の帰省時に持ち帰った(2014.09.02)
- マリア・ティーポのバッハ「ゴルトベルク変奏曲」(2014.06.24)
- ヴォイジャー(ボイジャー)のゴールデンレコード(2013.09.16)
- グレン・グールドの1981年ゴルトベルク変奏曲の録音と映像の微妙な違い?(2013.06.24)
- 年末に届いた "LIVING STEREO 60 CD COLLECTION"(2013.01.04)
シフラの演奏というと、私が持っているのはたった1枚だけです。それが、やっぱりリストで、父と子の共演となったリストのピアノ協奏曲第1番と第2番。なかなかいい演奏だと思いました。
ただ、リストの音楽は「はったり」が強くて、いかにも"大ヴィルトゥオーゾ"時代の人だと思います。シューマンの謝肉祭などはもう始終聞いて楽しんでいますが、リストのロ短調ソナタなどは、そうそう繰り返して聞くような性格の音楽ではないようですね(^o^;)>poripori
投稿: narkejp | 2006年11月12日 (日) 20:00
narkejpさん、コメントありがとうございます。
シフラ父子のピアノ協奏曲のいい評判は耳にしたことがあります(残念ながら聞いたことはないのですが)。
リストの音楽は効果の追求みえみえで虚仮威しの強い曲と、ロ短調ソナタのように非常に独創的に深遠な作品となかなかよく分からないところがあるようです。私もあまり共感する曲と言ったらないのですが・・・。そんなリストを興味深く弾いてくれたフジ子ヘミングはなかなか凄いなと思っております(^^♪
ただ、リストは非常に鷹揚な人物で、後輩達の面倒見がよかった人だったようです。
投稿: 望 岳人 | 2006年11月12日 (日) 22:14