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2006年11月27日 (月)

ブラームス 弦楽六重奏曲 アマデウス四重奏団、他

Brahms_sextetnr12

ブラームス Johannes Brahms (1833-1897)

弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 作品18

弦楽六重奏曲第2番 ト長調 作品36

アマデウス弦楽四重奏団 Amadeus Quartet
アロノヴィッツ Aronowitz(2ndVa), プリース Pleeth(2ndVc)
〔第1番:1966年12月、第2番:1968年3月、ベルリンでの録音〕

最近、DGレーベルの往年の名盤がThe Best 1000(税込み定価が1000円ジャスト)というシリーズで発売された。この一枚はそれに含まれていたもの。

第1番は、第2楽章が映画音楽に使われたこともあり、ポピュラー分野でも歌詞が付けられて歌われたりもしているほど有名な曲(元トワ・エ・モアの白鳥英美子の『Amazing Grace』という1987年発売のアルバムに『Heartland』という題名で歌われている)。

LP時代には、バルトーク四重奏団が中心になった非常に響きの濃厚な演奏で親しんだ。

アマデウス四重奏団には、ブラウやコッホとの共演によるモーツァルトの四重奏曲程度しか縁がなかったのだが、音楽嫋々・クラシック名演奏CD&レコードこだわりの大比較。理想の感動体験への旅。の一連のアマデウス四重奏団の記事を拝読し、聞いてみたくなっていた。ちょうど、上記のシリーズで、この四重奏団に有名なヴィオリスト アロノヴィッツが加わったブラームス、それも第2番(こちらはこれまで聞いた記憶がなかった)も併録されているものが目に留まったという次第。

第1番は、1860年に作曲されたもので、非常に柔軟な表情のブラームスだ。まだ比較的若い頃の作品だけあり、バロック的な陰鬱な変奏曲はあるものの、田舎、田園を連想させるような若やいだ表情の音楽になっている。そのような楽想と構成をアマデウス四重奏団は、華やかな第1ヴァイオリンの歌を中心にしてうまく表現しているように感じた。

第2番は、アガーテ・フォン・ジーボルトという女性に関係する曲だとされる。彼女とは相思相愛の仲だったそうだが、なぜか煮えきらぬブラームスの態度に、アガーテの方が心を残しながら、婚約を解消したという。これが1858年のことで、この曲はそれから6年後の1864年に書かれたため、Agathe  A-G-A-(T)H-E を第1楽章の162-168小節のヴァイオリン声部に織り込んだのはどういう意味があったのか?曲想的には、手痛い失恋を悔やむというよりも、過去となった思い出を微かな痛みとともに追憶しているかのようだ。

(ベートーヴェンとブラームス、ドイツ圏が生んだ二人の大作曲家は、恋多き人生を送ったが、結婚という形で実らなかったというのは単なる偶然なのだろうか?)

この第2番は、『ドイツ・レクィエム』の直前に作曲されたものだという。ト長調という明朗な調性を持つ曲だが、冒頭から半音階的なたゆたいの表情を見せ、比較的シンプルな第1番との違いを示すかのようだ。この第1楽章では、チェロに出る第2主題がブラームス的な旋律美を示し印象的なものになっている。それでもテンポはアレグロ・ノン・トロッポ(第1番はアレグロ・マ・ノン・トロッポ)で、ゆったりとした広がりのある音楽で、眼前に広やかな光景が見えるような音楽になっている。第2楽章は、スケルツォだが、主部は非常に慎ましやかな音楽になっている。ブラームス的な対位法が曲に奥行きを与える。ところが、通常のトリオの中間部が突然忙しく動き出す。第3楽章は、Poco adagio。Pocoというあいまいな指定がいかにもブラームスらしい。「やや」「ちょっと」「少し」。しかし単なるアダージョ楽章ではなく、フガート的な動きの激しい部分も登場し、少々面白い。第4楽章 Poco allegroは、第1番と同じく主調の明朗さよりも曇ったような調性的な特徴を示す。無窮動的な動きをするヴァイオリンに引っ張られて全楽器がスケルツァンドな不安定な音楽を奏でる。それでも最後には明朗なト長調の和音で終結する。

第1番では、少々聴きなれたバルトーク四重奏団とは音程的に微妙な違いを感じる部分があったが、こちらは初めて聴く曲でもあり、そのような違和感がなかった。弦楽六重奏は、ブラームス以前には著名な作曲家の作品はないそうだが、四重奏、五重奏よりも中低音が充実するせいか、豊かさや広がりを感じさせてくれる。

なお、The Best 1000は、オリジナルジャケットを使っているようだが、必ずしもオリジナルカップリングではないようだ。また、ライナー部に詳しい録音データがあるのが普通のDGだが、ケース裏面以外にはデータは記されていないようだ。

ところで、先日ブラームスのクラリネット・ソナタを聴き、クラリネット・トリオ(クラリネット三重奏曲)も聴きたくなり昨晩聴いた。この春に購入して記事にしたときには、あまり心に沁みてこなかったのだが、この晩秋の夜更けに聞き入ると、なぜか心に響く。春は、フランス近代が耳に適うのだが、秋はブラームスというのは、まことに適切だと思った。

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