シューマン 『子どもの情景』 ケンプのピアノで
シューマン 『子どもの情景』Kinderscenen 作品15
(1)見知らぬ国より (2)珍しい話 (3)鬼ごっこ (4)おねだり (5)十分に幸せ (6)大事件 (7)トロイメライ (8)炉辺で (9)竹馬の騎手 (10)むきになって (11)おどかし (12)子どもは眠る (13)詩人は語る
ヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ)
先日『クライスレリアーナ』をこのCDで聴いたが、2枚組みのこのCDは、ケンプによる『シューマンのピアノ曲集第1巻』として、『交響的練習曲』Op.13, 『子どもの情景』Op.15, 『クライスレリアーナ』Op.16, 『幻想曲』ハ長調 Op.17, 『アラベスク』Op.18, 『フモレスケ』Op.20, 『ノヴェレッテ』(Op.99の9)が収められている。
シューマンのピアノ曲の中で最も人口に膾炙している『トロイメライ』を含む『子どもの情景』をこのケンプによる演奏で聴いてみた。
現在、古い方から1950年録音のホロヴィッツ、この1973年2月録音のケンプ、1983年録音のアルゲリッチ、1987年録音のアシュケナージと4種類が手元にあるので、いずれ聞き比べをしてみたい(すでに何度も聞いているのだが改めて)。
子どもを題材にした曲集としては、『子どものためのアルバム』Op.68[43曲]があり、子どもが弾ける『楽しき農夫』のような曲を含んでいるが、こちらの『子どもの情景』は、大人が子ども時代を懐かしんだり、客観的に眺めたり、感情移入したりした大人のための曲集になっている。
ケンプの演奏は、その意味で理想的な演奏と言えるかも知れない。この技巧的には非常に優しい小曲集は、一曲一曲が詩人ロベルト・シューマンによる音による抒情詩であり、誇張もひけらかしも趣味の悪さとして退けられるべきであり、また小さな瑕疵も無いほうがよい。
有名すぎる有名な『トロイメライ』は、比較的さらっとした演奏であまり極端なリタルダンドもかけないが、短調に転調した後に再現される主題やコーダのまさに夢見る調子、終曲の『詩人は語る』など筆舌に尽くしがたい。
ドイツは、キンダーガルテンなる幼稚園という制度を発足させた国(幼稚園は最初にドイツ人Friedrich Fröbelによって1837年に作られた)でもあり、幼児期への想像力が比較的重んじられる伝統のあった社会のようだ。そこではぐくまれた子ども時代への憧憬を、過酷な二度の大戦を潜り抜けながらも優しく美しい音楽として表現しきったドイツ人ケンプの音楽に耳を傾けると、自らの幼年時代への淡い記憶も蘇ってくるかのようだ。
原題 とタイミング(CDパンフレットによる)
01. Von fremden Ländern und Menschen 1:40
02. Kuriose Geschichte 1:01
03. Hasche-Mann 0:36
04. Bittendes Kind 0:51
05. Glückes genug 0:45
06. Wichtige Begebenheit 0:57
07. Träumerei 2:26
08. Am Kamin 1:06
09. Ritter vom Steckenpferd 0:49
10. Fast zu ernst 1:39
11. Fürchtenmachen 1:58
12. Kind im Einschlummern 2:02
13. Der Dichter spricht 2:06
p.s. まったくこの記事とは関係ないが、昨日11/18(土)の朝日新聞土曜版beに、ゴーゴリ作の『タラス・ブーリバ』が取り上げられていた。コサックの隊長ブーリバ、その息子とポーランド貴族の姫君の恋と戦いの物語。ヤナーチェクの音楽については、囲み記事の中で一行だけ触れられていた。
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