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2007年6月12日 (火)

ETV特集・選「“星の王子さま”と私」

2007年6月10日 夜10時からETV特集・選「“星の王子さま”と私」が放映された。翻訳権切れによる多数の翻訳により再び、この「童話」が見直され始めているようだ。

番組中、辛酸なめ子による改編ともいうべき翻訳なども紹介されたが、池澤夏樹が「この小説は子どもの頃から読み返すたびに疑問が生じてきて、その疑問を解消しようと、翻訳に挑戦した。翻訳は一字一句精読することになるから」と語っているのに共感を覚えた。自分も寓話的な物語としてはそれなりに面白く、やさしい内容ながら深遠な思想を述べるというデカルト的なフランス的表現法の仲間の一つだろうということは青年時代には見当はついていたが、やさしい言葉でも難解さがいつも残る物語だと感じ続けてきたからだ。

翻訳上のポイントとして取り上げられたのが、バラとの会話。バラは、作家の妻を示しており、この挿話は男女間の恋愛を暗示しているという解釈が今は有力なようだ。

また、キツネ(フェネック・ギツネがモデルとされる。フェネックは、姿形が非常に愛らしい動物である)との会話で、「飼いならされる」「仲良くなる」(内藤濯訳)と訳されている フランス語 apprivoiser という動詞がこのエピソードにキーワードとして16回も登場することを扱った部分は見ごたえがあった。実際にフランスの少女たちを対象にした読書会で、フランス人の先生が apprivoiser をどんな風に日常で使っているかとの質問に対して、「猫と apprivoiserしている」というような答えが多く出された。動物などと心を通わせるというのが一般的な用法のようだ。ちなみに、

http://translation.infoseek.co.jp/

では、飼いならす という日本語に対して Je l'apprivoise. という翻訳が出てきた。それを逆に日本語に直すと「私はそれを抑える」という日本語になる。日本語にこの概念を一言で表すことがないような単語のようだ。

これら、翻訳のポイントを、この2年ほどで多く出版された翻訳を一覧表にしたりして、なかなか凝った番組になっていて面白かった。

記事:箱根 星の王子様ミュージアム

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