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2007年6月 9日 (土)

セル/クリーヴランド管によるメンデルスゾーン

Szell_mendelssohn


これも、今日(5/18)入手したディスクに挙げたもの。

この"The Great Collection Of Classical Music"のシリーズは、ブックオフにはときどきまとめて入荷するようで、結構お世話になっている。いつぞやは、このシリーズの索引的なCDまで売られていた。時には、RCAレーベルの録音もあるが大体1960年代から70年代のCBSの録音が多い。そのため、このセルやオーマンディなどちょうど中高生時代になじみになった演奏家のものが入手できるので、ありがたい。これまでにセルのブラームスの1番、オーマンディの『展覧会の絵』、東京クァルテットのハイドンなどを購入できた。今回のメンデルスゾーン曲集も、電網郊外散歩道などのブログで話題になっており欲しいと思っていたものだった。(ただこのシリーズは収録曲とは無関係な泰西名画を表紙にしているのがどうも疑問だ。このセル盤もロココの名花「ポンパドゥール夫人」の有名な肖像画なのだ!?それにまったく曲目や演奏者の解説がない。)

一曲目の『フィンガルの洞窟』は、FM放送ではよく耳にした有名な曲だがこれまでカラヤン/BPOの初期EMI録音しかCDを持っていなかった。カラヤンの録音は相当時代を感じさせるものだが、このセルの録音は、リマスタリングされたものではなくよく乾燥気味とされ低弦の雄弁さがマスクされている音質ながら、時代を感じさせないもので、品格の高い隅々まで明快な演奏だ。スコットランドのヘブリディーズHebrides諸島の情景を風景画のように描いた序曲(交響詩)の傑作で、ターナー的な幻想性のある表現も欲しいところだが、陽光さんざめく明瞭な風景を想像する。

二曲目は、『真夏の夜の夢』(夏至祭の夜の夢とでも衒学的に言いたいところだが通り名で)の音楽。

10代の若き天才メンデルスゾーンの傑作 「序曲」の妖精の飛翔を思わせるような細かい弦の刻みがこれほど明瞭に音化されている演奏は(それほど比較して聞いたことはないが)あまりないのではないか?それも単に軽やかなだけでなく、実質を伴った音楽になっているのが素晴らしい。ただ、ケルト的な底抜けの大騒ぎの表現という点では、節度を保った演奏ではある。

「スケルツォ」も底抜けの陽気さというより生真面目な表情で、いたずら者のパックPuckが少し襟をただした感じではあるが、オケのアンサンブルの緊密さが妖精の隙のない素早い動きを象徴するかのようだ。

「夜想曲」のホルンの音色は非常に美しく、セルの表現自体もこれほど淑やかな表情はないのではと思わせるほどのもの。

全曲盤を聞いたことがなく、自分の結婚式にも使ったコリン・デイヴィスとボストン響の録音しか持っていないため、「間奏曲」は初めて聴く曲。焦燥感をあらわす弦のトレモロ(ざわめき)がここでも非常に精緻に演奏されている。

そして「結婚行進曲」。それほど大仰な結婚式ではなく、軽やかなテンポにより数組の若いカップルの結婚を寿ぐ祝典曲になっている。

DVD映画の『真夏の夜の夢』では小澤/BSOの演奏による序曲が用いられている。)

最後には、コリン・デイヴィス盤と同じく、ここでも『イタリア』交響曲を聴くことができる。この曲の明快さが青年時代には非常に好ましく、心身を爽快にするリフレッシュメント効果を求めてよく聞いた。最近は、カンテルリ盤(Testament)やクレンペラー盤でも入手したが、それほど聴く機会はなくなった曲の一つだ。しかし、このセルとクリーヴランド管の演奏は別格のものだと思う。

第一楽章は、引き締まった緊密な弦と管のアンサンブルがあればこそ、これだけ生気のある(Vivace)軽快な(Allegro)音楽を表現できるのだろう。アンサンブルの乱れたメンデルスゾーンはあまり聞けたものではないが、その点この演奏は間然とするところがない。生気がありながら柔軟性があるテンポが同系統のスタイルといわれながらトスカニーニとセルの違いだと私は思うのだが、ここではただストレートだけではないセルの柔軟さがよく表れている。

第二楽章 アンダンテ・コン・モート 動きを伴って歩むような速さで。このテンポ設定はコン・モートに力点が置かれているようで、軽やかな歩みである。

第三楽章 コン・モート・モデラート これも動きを伴う中庸な速さで。スケルツォでもなくメヌエットともいえない中庸な音楽。雅びな風情が美しい。『イタリア』という題名から思い浮かべる風景は、ミケランジェロ公園からの古都フィレンツェの眺めだろうか(決してイタリアルネサンスは雅びではなかったのだが。)

第四楽章 サルタレロ:プレスト。疾風のように通り過ぎていく。これこそセルの鍛えたクリーヴランド管弦楽団のアンサンブルの精妙さが典型的に発揮された例だろう。あのルガーノライブのシューマンの2番のような即興的な勢いとは違い、十分練り上げられた表現ではあるが、切れ味のするどいアンサンブルの極致を聞くことができる。また、『真夏』の序曲と同様こういうスケルツァンドな音楽にメンデルスゾーンの天才が発揮されたことをまざまざと示してくれている。

この録音は心身を爽快にするリフレッシュメント効果が本当に高いもので、ようやく入手できたばかりだが、今後の愛聴盤になることは確実だ。

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コメント

「電網郊外散歩道」の記事をご紹介いただき、ありがとうございます。セルの「イタリア」を入手、おめでとうございます。オリジナルジャケットでない点はちょいとご不満でしょうが、この立派な演奏を入手できたのは何よりでした。これで、楽しみが増えましたね(^_^)/

narkejpさん、こちらにもコメントいただきありがとうございました。

このシリーズもののジャケットには少々文句をつけましたが、音楽は本当に素晴らしいものでした。いろいろ聞いてはいますが、やはり私にはセルの指揮するクリーヴランド管がよく合うようです。

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» メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」を聞く [電網郊外散歩道]
通勤の音楽、昨日・今日とメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」を聞く。LP時代、この曲はジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏が唯一もっていたレコード(13AC-445)だった。それで、この演奏を繰り返し聞いていたものだから、「イタリア」といえばこの快速演奏をイメージするようになった。 CDの時代になって、たまたまシューマンの「春」が目当てで購入したカラヤン指揮ベルリンフィルのCD(F26G-29039)に併録された「イタリア」を聞いて、「おお、こういう演奏もあるんだ」と認識を新たにした... [続きを読む]

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