フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管の第九(東芝EMI盤)
ベートーヴェン 交響曲第9番 ニ短調 作品125
エリーザベト・シュヴァルツコプフ(S)
エリーザベト・ヘンゲン(A)
ハンス・ホップフ(T)
オットー・エーデルマン(B)
バイロイト祝祭合唱団
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭管弦楽団
1951年7月29日 バイロト祝祭劇場 (ライヴ録音)
MONO 東芝EMI (90・4・7) CE28-5577
17:46/11:57/19:36/25:10
先日バイエルン放送協会の別テイクについて知り、久しぶりに現在市販されているEMI音源の『バイロイトの第九』を取り出して聴いてみた。
1990年頃にコーラスを始めたきっかけが、地元の市の文化会館の杮落としに演奏される第九のコーラス募集だったのだが、それをきっかけに、一時期第九のCDを蒐集しようと心がけ?、全集盤を除いて20枚ほど集めた。
「バイロイトの第九」は、LPでも保有していた(例の足音入り)が、第九演奏を語るには欠かせないものとしてCDでも早いうちに買いなおしたものだ(これは足音なし)。
フルトヴェングラーのこの第九は、いわゆる神格化に近い崇められ方をしているもの(鈴木淳史『クラシック批評こてんぱん』)であり、今さら一音楽ファンが感想を述べても仕方がないほどのものだが、今回のバイエルンの『本番の無修正の生録音(?)』が発見され、実際に日本でも音として聞けるようになったということで、もしこのEMI盤が修正されているとしたらどのあたりだろうと少々下世話な興味を持ちながら、もし聞き比べるとしたらどの辺がポイントになるだろうかと(演奏の特徴を書き表すすべがないため)チェックをしながら聴いてみた。(1、2秒のズレは御容赦を。)
第1楽章 0:21の雑音。1:31のコツンという雑音。2:39の2回の咳払い。3:29のパタという雑音。3:39の咳。5:25のスーという雑音。5:43の咳。6:28の咳、つぶやき?7:10のパタンという雑音。11:15かすかな咳。11:41 ブレスの音? 12:30咳。12:37咳。13:23 カシャという雑音。16:07雑音。16:25カサカサ音。16:40咳。16:54雑音。 異音、雑音に注意しながら真剣に聞き入ったが、さすがに引き込まれた。このところ、これほどまでに強烈な個性・意思をもった主観的な演奏を聴く機会から離れていたので、新鮮だったし、聞きほれてしまった。
第2楽章 冒頭カサカサ音。第1楽章より音質が明るくなっている気もする。2:08、2:19、2:39音ゆれ(チャンネルバランスが動く)。9:45かすかな咳。10:14楽譜をめくる音?
第3楽章 0:11咳。0:47パチという異音。3:19咳。4:42 4:50 咳。6:05咳。7:12 7:18 咳。7:26 咳。8:40 咳。9:20あたりからのホルンは明らかに音程が不安定になっている。9:55咳。10:01ホルン裏返る。13:09咳払い。13:28ホルンのモチーフが弱い。13:47咳。18:31咳。本当に息の長い歌だ!細部拡大的な強調があるが、魔力のように魅力的だ!別世界への旅とはこのようなものだろうか?
第4楽章 0:22カチという音。0:41咳。1:48抑えた咳。2:04咳。2:24唸り声。3:00咳。3:09パチという音。第1ヴァイオリンで奏でられることで歓喜のメロディーがなんと憧れに満ち、それがアッチェレランドされ勇壮なマーチにつながることか。魔法の棒に支配されているかのよう!エーデルマンの声は潤いがあり輝きもある。Freude の呼ぶかけで、コーラスがわずかに拍の頭に遅れる。コーラスは残響がものすごい。四人のソリストのアンサンブルはほぼ完璧。10:00頃に編集の継ぎ目があり?Vor Gottのフェルマータの最後でアクセント(短いクレッシェンド)を付けて終わる。ホップフのテノールも輝かしく存在感がある。バックのコーラスは録音のため靄ついている。14:05からの全合唱による歓喜の歌の勢いはほかでは聴けないもの。Seid umschlungen の前に楽器?のカタカタする音が聞こえる。ここのコーラスは広がり感があり聞きやすい。16:47ブチという音。17:45あたりのクライマックでは、フルトヴェングラーが歌っている(音程になっていない)言葉が聞こえるような気がする。18:38二重フーガの前にもカチという音。ソリストの四重唱は本当に巧い。22:48ウンというような声が聞こえる。コーダ、オケもコーラスもついていくのがやっとのテンポにあがる。特に終結部の速さ。そして最後に付け足されたような短い拍手が続く。(楽器がたてたりするガサガサ、ゴソゴソいう音はいたるところで聞かれるので目立つもの以外は割愛した。)
結構冷静に聴いたのだが、没我の境地のような演奏に引き込まれてしまった。そうたびたび聴けるものではないが、やはり久々に聴くとその凄さが痛感される。
参考:フルトヴェングラーの第九へのコメント(『音楽の茶の間』より)
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