廉価ヘッドフォンによる音楽鑑賞の違い
音楽の録音のよしあしを云々するなど恥ずかしいような安易な聴き方をしているのがばれてしまうのだが、普段は携帯CDプレーヤーで、オープンタイプの小型のステレオ・イアフォンで聴いている。
最近接続するステレオヘッドフォンの違いにより、音楽の表情があまりに違うのに改めて驚いた。
現在愛用しているのは、ネットではもう在庫切れのようだが、オランダの名門電機メーカーのPHILIPSブランド(シンガポールの子会社らしい)の SHE-255 という型番の800円程度で入手したインナーイヤータイプのヘッドフォン(アキバのある店では200円程度で売られていたことで有名になった)なのだが、これが広域から低域までフラットで、音にも艶があり(広域がシャリシャリせずに)、楽器配置ではさすがに奥行き感は分からないがそれでも左右の楽器の定位がきちんと決まるし、楽器の分離も不自然さがなく、自分の耳的には十分なもので、一年近くこれで音楽を聴いてきた。
これが大分古くなってきた(スポンジイアパッドを付け替えても、耳に入れる部分が耳の皮脂や汗で金属部分が痛んでしまう)ので、同傾向のものに買い換えたいのだが、フィリップスのものもカタログをみると値段も上がり、段々「外連み」(ヴォリューム調整やバス強調)が出てきたようで、迷っている。
そこで、買い換える前に、SHE-255以来ほとんど使わなくなった手持ちのヘッドフォンをつないで聞き比べてみた。
SHE-255にする前は、もともと Panasonic の携帯プレーヤーに付属していたもので長らく聴いていたのだが、比べてみると、高域が全然伸びず中低音が膨らみ音につやがなく、ぼやけた感じで、まったく別の演奏を聴いているかのよう。(その前は、AIWA製の小ぶりなイアフォンタイプを使っていたが、これは音はやせていたが結構よかった記憶がある。)
以前携帯電話で音楽を聞いてみようと買った audio-technica のオープンタイプの携帯電話用の廉価のものは、携帯電話で『バーバーのアダージョ』などをMP3化してメモリに入れて聴いたときにも書いたが、高域がシャリシャリしており、まるで弦楽器がシンセサイザーのように聞こえるもの。またインナーイヤーに比べて耳の穴への位置取りがうまくいかず、同じヴォリュームでは音量が不足する。
また、数年前、ロンドンのヒースローから成田まで搭乗したヴァージン・アトランティックの座席付属のヘッドフォンは、JALなどの二股の特殊ジャックと違い(今はどうなのだろう?)通常のミニプラグで、フライトアテンダントに尋ねたら持ち帰りしてもよいということなので現在手元にあるが、さすがに音質は相当プアである。(古いタイプの軽量ヘッドフォン型)。
以前、電気店のポイントを貯めて買った密閉型の audio-technica 製の自分としては高級なヘッドフォン(価格は一万円以上)は、耳宛の部分の樹脂がポロポロはげてきてしまい修理のしようもない(?)ので、最近使っていない。これは左右の音質はさすがに繊細な表現まで描写してくれて上等だが、全域のバランスが悪いのと、定位がどうもあいまいなのが悲しい。(初めてこれで クレーメルとアルゲリッチのベートヴェンの『クロイツェル』を聞きなおしたときに、微妙な音色の変化が聞き取れて感激したものだったが。)
さて、今日、量販店に行って探したら、SHE-255と同じシリーズらしい SHE-285というのが1,480円で売っていた。巻き取りケースと手元でのボリューム調整機能がついているもので、255より少し割高だが、先ほど書いたようにフィリップスも全体に値段があがり、低音ブースト指向になっているようなので、ポイントを使ってこれを求めてみた。
自宅に帰って、255と聞き比べてみたところ、285の方は低音強調型のようで、ブロムシュテットとSKDのベートーヴェンの2番を聴き比べたが、255が締まった響きだとすると、285の方は、相当分厚い低弦群を擁しているかのように聞こえる。ただ低弦の描写が聞き取れるのはいいのだが、全体的にシャープさが薄れてしまう。慣れるには時間はかかるだろう。それでも、その間にこのような廉価なものでもしばらくエージングが進めば、少しは音の傾向も変わるかも知れない。
« J.K. Rowling "Harry Potter and the Deathly Hallows" Bloomsbury | トップページ | J.S.バッハ 『フランス組曲』 グールドとドレフュス »
「音楽」カテゴリの記事
- 音楽鑑賞で有用なサイトをリストとして掲載(2024.01.07)
- 高校時代に山田一雄さんの指揮のコンサートを聴いたことを思い出した(2023.12.07)
- Johann Sebastian Bach, Helmuth Rilling : Complete Bach Set 2010 - Special Edition (172 CDs & CDR)(2023.12.05)
- モーツァルト「伝説の録音」3巻セット [36CD+3BOOK]<通常盤> 飛鳥新社 タワーレコードONLINE(2022.04.24)
- 小林秀雄「モオツァルト」(2020.08.02)
« J.K. Rowling "Harry Potter and the Deathly Hallows" Bloomsbury | トップページ | J.S.バッハ 『フランス組曲』 グールドとドレフュス »
コメント