シェーンベルク『浄められた夜』 ベルク『抒情組曲』、Vn協奏曲 ブーレーズ
シェーンベルク『浄められた夜』 28:41 〔1973/9/24 マンハッタンセンター NY〕
ベルク『抒情組曲』 5:36/3:29/5:56 〔1974/3/4& 12/21 同上〕
ブーレーズ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
ベルク ヴァイオリン協奏曲 11:36/15:23 〔1984/11/21 EMIスタジオ、ロンドン〕
ズーカーマン(Vn) ブーレーズ指揮 ロンドン交響楽団
カラヤンとベルリン・フィルの新ヴィーン楽派のオーケストラ曲の名盤を入手したので、少しつまみ聞きし始めた。
今はもっぱらストラヴィンスキー、バルトークが普段の鑑賞の限界だが、それでも20代の頃は少し背伸びをして新ヴィーン楽派の十二音技法やブーレーズのセリー音楽も聴いてみたことがある。たとえば、今ではほとんど聴かないが、ポリーニによるシェーンベルク『ピアノ作品集』とか、同じくポリーニのブーレーズ『第2ピアノソナタ』とかが、それだ。このブーレーズ指揮によるシェーンベルク、ベルク作品集も以前はよく聴いたものだった。最近数年間ずっと聴かなかったものだが、カラヤンとの聞き比べができる曲が収録されているので、久しぶりに聴いてみたところ、それなりに面白かった。
『浄められた夜』は晩期というのか、ドイツ・ロマン派が爛熟した末の成果であり、標題音楽的に聴けるため以前からそれほど抵抗はないが、ベルクの『抒情組曲』は、学生時代アルバン・ベルク四重奏団の生演奏で初めて聴いて降参して以来ずっと苦手な曲だった。もちろん十二音技法や無調が理解できたというわけではないが、今回カラヤン、ブーレーズと聴き比べて見ると、テンポやオケの響きの違いなども聞き分けられることもあり、少しは楽しめたように思う。
ズーカーマンがソロを務めるベルクのヴァイオリン協奏曲は、新ヴィーン楽派の中でもとりわけの人気曲でもあり、以前はエアチェックしたパールマンと小澤/BSOの録音で耳に馴染んだものだった。とはいえ、これもソロヴァイオリンが通常の協奏曲と同様に活躍したりするのが面白かったり、ヴァイオリンや金管のモチーフや微かな調性的なコラールが耳に残ったりする程度で、形式やメロディーの把握や、リズムパターンの把握や情緒的、ストーリー的把握という古典派・ロマン派的な音楽享受ではとても太刀打ちができないように感じている。ところどころ、「いいな」「すごいな」という瞬間もあるのだが、今自分がどこを聴いているのかが分からないことは非常に難行苦行だ。 ただ、クラシック音楽を聴き始めの頃、自分にとっての新曲に立ち向かうときは大抵同じようなもので、そのとき気に入った部分でもありその曲を何回か聴くうちに次第に馴染みになるということがあったのだが、12音技法、無調についてはなかなかそれも難しい。複雑な音列など記憶しようがないからだ。
現代は、第一次大戦前後のそのような無調、12音技法、セリーなどはとおの昔の技法で、現代音楽は新たな段階に入っているのだろうが(というのも素朴な進歩史観的な見方だろうか?)、その時代を象徴するかのような音楽、次の時代を先取りするかのようなコンテンポラリーな(同時代)音楽活動からは、私のような鑑賞者は相当遠くに身を置き、膨大に蓄積された記録(メモリー)にうずもれて、時間的には、はるかいにしえのヨーロッパ音楽から、現代に伝えれれてきた世界各地の伝統的民族音楽、世界各地のの流行曲などに囲まれて暮らしている。音楽の享受という面ではこのような状況はこれまでなかったことだろうが、ここから何が創造されるのだろうか?
すでに20世紀音楽の古典とも言われる音楽を聴いても、それが刺激となってこんな風に思いをめぐらせてしまい、音楽の楽しみという点ではついていけなくなっているのが現状だ。
解説を開いたら、若い頃の鑑賞メモが挟まっていたので、書き付けておこう。
1993.6.29(火) 今日は、バッハからシューベルト、そしてサティを通り、ずい分近代までやってきた。
シェーンベルクの『浄められた夜』弦楽オーケストラ版は、声のないオペラのようだ。その濃厚かつ高弦の冴えたひびきは、マーラー晩年の作品を思わせ、シェーンベルクのピアノ曲集のような12音技法にとらわれていないため、爛熟したロマン主義の作品であり、聞きやすい作品である。もともと官能的な詩に触発されて作曲されたものであり、退廃のヴィーン世紀末の雰囲気を漂わせている。
ベルク『抒情組曲』は、原曲のSQ版全曲を宮城県民会館で、アルバン・ベルクQの実演で聞いた。大変迫力があったことは覚えているが、曲は把握できなかった。今回も雑誌を読みながらBGM的に聞いている。
『Vn協』は、パールマン、小澤/BSOのエアチェックテープでよく聞いたのでなじみの曲である。
まったくこの頃から自分の鑑賞力は進歩がない。この頃よりも少しバルトークを聞き込めている程度だから仕方がないが・・・・・・
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ヴァイオリン協奏曲を読んで、寝る前にLPをかけてしまいました。パールマン・小澤盤です。ベルクに関してはやはりヴォツェックやルル辺りから戻ってくると音楽の表情が手に取るように判るようになるでしょうか。
同じ協奏曲でもシェーンベルクの後期のものとは比較できないもので、形式や作曲技術も表現のためにそうあらなければならなかったいれものですから、マンの文学や多くの絵画や映像などとの近似性を楽しんでいます。
カラヤンはそう言えばこの曲を録音してませんね。当時のムターには無理にしても、クレメルとはやっても良かったか?テンシュテットも良さそうですね。
投稿: pfaelzerwein | 2007年7月21日 (土) 17:56
pfaelzerweinさん コメントありがとうございます。ベルクの『ヴォツェック』や『ルル』は、オペラが苦手なものですから未踏峰のままですが、演劇としても面白いものと聞きましたので是非DVDあたりで触れてみたいものだと思っております。
最近、カラヤンを聴きなおす機会が増えております。先日Ringのエントリーで、カラヤンの指揮のものを取り上げられておりましたが、私も抜粋盤で同じ録音の『ヴァルキューレの騎行』を聞き比べて、ベルリンフィルの精密な演奏に舌を巻きました。
投稿: 望 岳人 | 2007年7月21日 (土) 20:58