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2007年8月 8日 (水)

モーツァルト 生誕200年記念の名録音による4大オペラ全曲集 10CDボックスセット

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昨年のモーツァルトイヤーにはほとんどモーツァルトの新録音(ムターのVnソナタや協奏曲などがめぼしいところだったろうか?)は聞くことがなかったが、EMIの宗教曲集を除いてモーツァルトのディスクとして欲しいと思っていたのが、mozart1889さん吉田さんのblogで紹介されていた激安の10CDボックスで、この名曲・名演・コストパフォーマンスの三拍子のそろったボックスセット(HMVのサイト)がようやく入手できた。

昨年来ときおり横浜駅周辺のメガストアを探して歩いてみたのだが、さすがにこれだけの内容を店頭に置けば他のレギュラープライス盤が売れなくなるを心配したのだろうか(冗談)、一点も置いてなくて、やむを得ず、最近禁断のネット注文を敢行してしまったのだった。

早速LPでよく聴いたE.クライバーの「フィガロ」の記憶と今回のCDを比べてみると、このCDの方が響きが少々固いように感じた。しかし、その後の展開は父クライバーの流れるような音楽と、当時のヴィーン・シュターツ・オーパーの名歌手陣の「ノリ」がよく、一気加勢に聞かせてくれる。(別記事でも書いたが、ちょうど同じ時期1956年にフィリップスは、ベームとヴィーン交響楽団により、同じ「フィガロ」を録音しており、こちらはモノ録音だ。これもオケは違うが当時のシュターツ・オーパーの歌手陣によるものだと聞いたことがある。)

また、これまでずっと苦手だった「コシ」も、さすがにこの曲を最大のおはこ(十八番)としていたベームの指揮のものだけあり、オケも歌手のアンサンブルも非常に美しく、途中で聴くのを中断できなくなるほどだ。ベームのコシ(コジ)には何種類もあるようだが、このヴィーン・フィルのものも歌手とオーケストラの素晴らしいアンサンブルを聴くことができる。

モーツァルトを得意とし、戦後のシュターツ・オーパーが混乱期を乗り切るのに尽力したことでも知られるヨーゼフ・クリップスの『ドン・ジョヴァンニ』は、最近のハーディングのような威圧的でハイテンポなニ短調ではなく、むしろ柔らかい響きの序曲で始まるが、当時の国立歌劇場の高水準を如実に表す音楽が繰り広げられ、これも途中で中断するのがつらいほど。

フリッチャイの『魔笛』だけVPOではなく、またステレオではないが、彼が手塩にかけた手兵のRIASベルリンでもあり、またヘフリガーのタミーノやディースカウのパパゲーノ!が聴けるなど、歌手も高水準。モノーラル録音なのは序曲の最初で気になるだけで、聴き進めるうちにまったく問題なくなる。(なお、上記のデッカステレオ録音によるモーツァルトシリーズでは、ベームがやはりVPOと「魔笛」を録音しているが、残念ながら台詞カット版なのだという。これは今でもCDで入手できるようだ。)

1950年代後半の録音(1756年のモーツァルト生誕年から200年後のモーツァルトイヤー)だけあり、少々固さを感じるが歌手の声には艶と輝きがある。もちろんリブレットやパンフレットなどは付いてはいないが、良心的に10枚のCDに曲ごとにきちんと分けられており(別の曲が同じCDにカップリングされていない)、また出演者などのつづりにも誤りはないようだ。難をいえば、モーツァルトの肖像(このフランス語サイトに様々な肖像が紹介されているが一番上段の右端がそれ)があまり一般的ではないモーツァルトらしからぬものが使われているのがもったいないが、これで単品でも2,000円程度で購入できるとは信じられないほどの桁違いの廉価盤だ。

<<参考>>モーツァルトのオペラ関連

*『フィガロの結婚』ベーム指揮ヴィーン交響楽団(1956)の記事

*『ドン・ジョヴァンニ』のDVD(CD) マゼール指揮パリ・オペラ座の記事

*『魔笛』 スイトナー指揮シュターツカペレ・ドレスデンの記事

*『フィガロの結婚』ヴァルター指揮ヴィーン国立歌劇場(1937年ザルツブルクライヴ)
 (2003年9月6日付けの記事

P.S. E.クライバー/VPOのLPについて、mozart1889さんの同録音へのコメントで、「4枚組み1万円程度で購入した」と書いたことがあったが、この夏休みで実家のLPを確認したら「3枚組みで、5400円」だった。何回も再発された名盤で、私が学生の頃購入したときには、1枚1800円の廉価盤(それでも立派な箱入り、対訳付き)だったらしい。どうも記憶違いだったようだ。

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ディスク音楽06 オペラ」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
最近10枚もののボックスが流行っていますが、寄せ集め的な企画が多い中、このモーツァルトのオペラは、まとまりといい内容といい申し分のないものです。
4つとも、とてもいい演奏だと思いますが、最近はクリップスの「ドン・ジョバンニ」を気に入っています。シエピを始め歌手がみんないい味を出しています。
費用対効果(?)ではCD史上最強クラスではないでしょうか。
TBさせて頂きました。

吉田さん、コメントありがとうございます。

皆さんのブログで知るまではこの超お得なセットのことをうかつにも知らず、モーツァルト・イヤーというのに自分としては盛り上がらないなと感じておりました。それ以来ウィッシュリストに入っており、いまさらという感じですが、ようやく入手できて楽しんで聞いております。

オケの弦の音が少々金属的に聞こえてしまうのが残念ですが、歌手達の生気溢れた歌唱、無理に整えたのではない(と思われる)自然なアンサンブルは、やはり伝統芸の一種でしょうか、まったく聴き応え充分です。

(TBは、最近商業的なスパムが多すぎて、確認してから表示するようにしておりますので、届き次第公開させていただきますので、お待ちください。

望さん、おはようございます。ご紹介、有り難うございました。
このボックスは良かったです。フリッチャイの「魔笛」、クリップスの「ドン・ジョヴァンニ」などホンマに楽しめました。
(E・クライバーの「フィガロ」は確信的ダブり買いです)

「ドン・ジョヴァンニ」のチェザーレ・シエピは素晴らしかったです。まさにはまり役。イキでイナセで、スケベで女たらし。良かったです。これだけでも、このボックスの値打ちがありました。

mozart1889さん、こんにちは。コメント、トラックバックありがとうございました。

トラックバック元の記事を拝見したのが、このボックスのことを知ったきっかけでしたが、店頭には置いてなくて入手には決心がいりました(^_^;)。

おかげで、50年前ながらというより50年前ゆえの素晴らしい音楽を楽しめております。

私もそろそろ盆休みに入り、しばらくブログからは離れますが、またよろしくお願いします。

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