『レコード芸術』2007年9月号購入
前回、レコード芸術を購入したのは、カルロス・クライバー追悼特集号2004年9月号だったから、すでにまる3年になる。今回、書店で立ち読みしていたところ、先日自分でも記事にしたフルトヴェングラーの「バイロイトの第9」再発見!!という特集が詳しくて面白そうなのと、グレン・グールド生誕75年&没後25年 という特集にも目を引かれ、購入した。値段は税込みで1250円。ずい分高くなったように感じたが、2004年9月号も同じ値段だったので、その頃とはあまり状況が変わっていない(広告量が少ない)ためだろうかとの危惧を感じた。今回は、吉田秀和氏のエッセイは休載だったようだ(編集後記などには案内もないのはどうしてだろうか?)。
特集1は、「究極のオーケストラ超名曲 徹底解剖4」というもので、ultimate, super, thoroughgoingなる形容詞の三連発。なんと大げさな題名かとびっくりしてしまったが、内容は、一曲一曲のオーケストラ曲を一人の評論家が様々な録音を挙げながらその曲を語るというもの。それほど面白くはなかった。
グールドの特集は、青柳いずみこ女史のグールドの演奏スタイルの微細な分析が非常に面白いものだった。調律師の回想もそれなりに面白かったが、レコード芸術としてのディスクの記事はどこかで読んだようなものの焼き直し的な内容で特集というにはちょっと物足りないものではなかろうか?
新発見のバイロイトの第九については、中村正行氏(フルトヴェングラー・センター会長)と桧山浩介氏のものは、バイエルン放送局盤を本番のライヴ録音とみなし、EMI盤をゲネラルプローベを元につぎはぎしたものという解釈で一致していたようだったが、特別寄稿の金子建志氏の解釈は、「バイエルン放送局盤」がゲネプロ盤で、EMI盤が本番ライヴ録音を元に編集したものではないかという一人だけ独特の解釈をしていたのが面白かった。EMI盤では、最終楽章の終結部の「崩壊」した「事故」が演奏の特徴として初めから有名だが、それをあえて差し替えずにそのまま残したのは、本番の記録だったからこそで、仮に本番ではアンサンブルや音程の乱れなくできたものをあのような形の「崩壊」をレコードとして発売すれば関係者からすぐに指摘されたのではないかという推測や、EMI盤の方が金管楽器とコーラスのバランスが改善されている点などの指摘は、なかなか穿った解釈だと思われた。
レコードプロデューサーの視点という連載では、カメラータの井阪紘氏が当時のレッグとフルトヴェングラー、カラヤンの緊張に満ちた三角関係の裏話を興味深く書いており面白かったが、EMI盤がレッグの『化粧』によるもので、バイエルン放送局盤が本番のライヴ収録という解釈だった。
これまでは、朝日新聞の記事の印象や他のネット情報の影響もあり、当然新発見のバイエルン放送局盤が本番のオリジナルライヴ録音だと思い込んでいたが、金子氏のような解釈もまた充分あり得ることが分かったのは収穫だった。
参考記事:
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