ハイフェッツとライナー/CSO ブラームス ヴァイオリン協奏曲
ブラームス(1833-1897)
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ハイフェッツ(Vn), ライナー/シカゴ響 〔1955,ステレオ〕
18:44(カデンツァ:ハイフェッツ)/8:14/7:24
併録: ブラームス 交響曲第2番 ニ長調 作品73 トスカニーニ/NBC響(モノ) 14:33/8:27/5:24/8:56
関東も昨日は、最高気温が30度Cを下回り一息つけたが、今日はまた残暑が厳しかった。
いわゆる正規盤ではなく、日本での著作権切れによるパブリック・ドメイン的な「バッタもん」音盤で、あまりこの種の録音は求めないようにしているのだが、中古店で併録のトスカニーニのブラームスにも興味があったので、購入した。
ブラームスが避暑地ペルチャッハで作曲したこの二曲だが、同じ調性を取り、作品番号的にも近く、以前からその似た雰囲気を感じていたが、この非正規盤の組み合わせはそういう意味でなかなかナイスなものだと言えよう。
協奏曲も今から50年以上前のステレオ録音最初期の録音であり、非正規盤ではあるが、きちんと聴ける音質になっている。このハイフェッツとライナーのブラームスは、想像の通り硬派かと思うと、テンポこそは速いものの、ハイフェッツの滑らかで余裕のあるヴァイオリンの音に驚かされる。研ぎ澄まされた細く切れ味の良い音で、滑らかなレガートを聴くと、背筋がぞくっとするほどで、一般的には暑苦しいとされるブラームスの音楽らしからぬ涼やかな音楽を作っている。
現在、手持ちのCDでは下記のものがあるが、第1楽章ではカデンツァが違うので、単純な比較はできないが、各楽章とも非常にハイスピードの演奏になっているのが、いかにもハイフエッツと弾丸ライナーらしいところだ。ただ、テンポ設定は、下記のオイストラフの二枚を比べても分かるようにこのような協奏曲の場合には、ソリストに主導権があるのだと思うので、このハイテンポは、ハイフェッツのものなのだろうと思う。ハイフェッツのカデンツァは、一般的なヨアヒムのもの(これも充分技巧的だが)よりもさすがにヴィルトゥオーゾ ハイフェッツのものだけあり、フラジオレット的に高音部が盛んに用いられ、重音やめまぐるしいパッセージなどなかなか聴き応えがあるものだ。
第2楽章も取り立てて速さを感じさせるものではなく、シカゴ響のオーボエもホルンも表情的でありながらやはり涼やかな演奏になっていて避暑にふさわしい感じだ。中間部の短調の詠嘆の音楽は、夏の湖畔をさっとよぎる夕立ちのよう。
第3楽章は、さすがに避暑の音楽とは行かず、非常に熱気のある重音から始まるが、ハイフェッツ、ライナーともども切れのよい音楽を聞かせる。ハイフェッツの冴えた音とテクニックはまったく間然とするところのないラプソディックな歓喜の爆発を表現する。(ただ、このあたりは、冷静な熱狂というような矛盾した形容を思わせるところもある。)音質的には、トゥッティが多いのこの楽章は少々オケに混濁が聞かれる部分がステレオ最初期の録音でかつ非正規盤の限界かと思わせるが、ハイフェッツの音の冴えは曇ることがない。
◆D.オイストラフ(Vn),クレンペラー/フランス国立放送管〔1960〕
22:32(カデンツァ:ヨアヒム)/9:46/8:25
◆D.オイストラフ(Vn),セル/クリーヴランド管〔1969〕
22:29(カデンツァ:ヨアヒム)/9:35/8:28
◆ミルシテイン(Vn),ヨッフム/VPO〔1974〕
20:52(カデンツァ:ミルシテイン)/8:54/8:00
◆ムター(Vn),カラヤン/BPO〔1981〕
21:56(カデンツァ:ヨアヒム)/9:40/8:28 (2003年7月7日の記事)
トスカニーニのブラームスも興味深いが、それはまた別の記事で。
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