シューベルト 交響曲全集 ブロムシュテット/SKD
このシューベルトの交響曲全集も、先のモーツァルトのオペラボックスセットと一緒に求めたもので4枚組みの紙ケースボックスセット。ベートーヴェン全集と同じドイツ・シャルプラッテン原盤だが、こちらはブリリアントとは違う廉価盤メーカー(Edel Classics)のもの。未完成もグレートも8番、9番という昔風の番号になっている。
さて、この4枚組みのCDによって、ブロムシュテットとシュターツカペレ・ドレスデンによるベートーヴェンの交響曲全集と同じく、現代オーケストラによる美しい音楽をたっぷりと享受できた。この美しさは、カラヤン的な磨きぬかれた人工美の極致とも、セルのような厳しい訓練によってもたらされた玲瓏とした厳しい美しさとも違う。隅々まで充実した柔らかい音響が主体だが、各楽器群の細部があいまいになることなく、特に全合奏(トゥッティ)の音の素晴らしさは、恐らく純正調の響きが基本になり、倍音成分が豊富に含まれていることによる美しさではなかろうか?(ちょうど、タリス・スコラーズのアカペラコーラスのハーモニーが溶け合ったときに倍音効果による響きの美しさと同じ種類かも知れない。)。
これは、1970年代、ブロムシュテットの音楽監督時代の録音であり、これだけ充実した音楽が聴けるというのは、巷間伝えられるのとは違い、西側録音陣と協力して録音する時には弱いパートの補強に他のオケからトラ(助っ人)を呼び、そうでないときにはSKDのオリジナルメンバーで録音したというようなものではないと思う。やはり、オーケストラ自体(とブロムシュテット)が凄いのだと思う。
ただ、その反面、シューベルトの初期の曲も立派過ぎる音楽になっているのが、ないものねだり的な不満といえばいえるだろうか?
シューベルトの『未完成』が苦手なのは、このブログでも何度も書いたけれど、もし刷り込みとしてこのような美しい『未完成』を鑑賞の初期に聴いていれば、苦手な曲にはならなかっただろうと思うほど。といっても、『未完成』は単に美しい音楽ではなく、シューベルトの苦悩が聞こえてくる。
現在は、ブロムシュテット/SKDの美しい音色と表現に魅了されているところだが、それが耽美的過ぎる金太郎飴的なものかどうかは慎重に聴かなければならないかも知れない。楽想や指示に応じて、輝く音、渋い音、明るい音、暗い音など様々な音色的なイディオムや奏法が使い分けられてもしかるべきだと思うからだ。ザンデルリングのブラームスは、同じシュターツカペレの演奏で、立体的で美しいものだが、美しすぎるということはなかった。
p.s. ほんのしばらくBLOG更新を中断します。
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コメント
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あまり評判を聞くことのない私の愛聴盤が採り上げられていて驚きました。
当時は、その前の世代の巨匠たちのものと較べて、なんと自然で清潔な感じの演奏かと思っていましたが、確かに、今となっては立派過ぎというか、特に初期の作品はもう少しコンパクトで室内楽的なアプローチがあり得るのかなという気がしないでもありません。
それでも、私にとっては、いろいろ聞いても結局戻ってくるのはこの演奏、その純度の高さにいつも感心しています
投稿: hokuto77 | 2007年8月12日 (日) 22:34
hokuto77さん、お久しぶりです。実家のある長野に帰省しておりましたので、コメントへの返事が遅くなり申し訳ありません。
この録音は、ブログの記事などでの評判を目にして最近求めたものですが、「自然で清潔」で響きの純度が高い演奏に感動しました。
記事では、「初期作品が立派過ぎる」というような苦言を生意気にも呈しておりますが、青春期の習作としてではなく、素晴らしい交響曲として聴くことのできるこのアプローチもありと思います。
これから何回も楽しもうと思っております。
投稿: 望 岳人 | 2007年8月15日 (水) 10:16
望さん、おはようございます。
この全集は最高ですね。
僕はシューベルトの交響曲が大好きで、このCD激安の時代を利用してどんどん全集を買い込みました。
ムーティ、スウィトナー、カラヤン、ベーム、C・デイヴィス、ホルスト・シュタイン、ブリュッヘンにインマゼール、ハノーヴァー・バンド・・・・・と聴いてきて、やはりブロムシュテット盤が最高の出来と思いました。
いまや、価格も超激安、これは多くの方々に勧めたい全集ですね。
オーケストラの響きが素晴らしく、ブロムシュテットの指揮も自然で息づかいが深く、何度聴いても飽きません。目立たない全集かもしれませんが、この味わいは最高です。
投稿: mozart1889 | 2007年8月18日 (土) 04:49
mozart1889さん、おはようございます。コメントありがとうございます。
お恥ずかしい話ですが、シューベルトの1番、2番はこれまで聴いたことがなく、今回の全集が初めてでした。
ブロムシュテットとSKDの演奏は、この初期の作品から堂々とした音楽を奏でており、記事の本文では「ないものねだり」などと書きましたが、全体を通じて衒いのない音楽で非常に好感を持っております。『未完成』も美しい演奏ですが、その美しさの中に作曲家の苦悩が聞き取れました。
本当にじっくりと付き合える録音だと思います。
投稿: 望 岳人 | 2007年8月18日 (土) 10:18