プレヴィン/ロイヤル・フィルのヴォーン・ウィリアムス 交響曲第5番
交響曲第5番ニ長調
トーマス・タリスのテーマに基づく幻想曲
アンドレ・プレヴィン ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
〔1988年7月6,7日 ロンドン ウォルサムストウ・タウン・ホール〕
子ども達の夏休みも今日で終了。明日から学校が始まる。といっても、現在2学期制のため、明日は2学期の幕開けではなく、1学期の普通の日で、始業式もない。ただ、9/1の防災の日が土曜日だったため、防災訓練が行われる。この2学期制は、元々授業時間の確保を目的にしたものだが、夏休みはまったく減らされず、10月1日の2学期の初めから数日は秋休みと称する授業時間の確保とは相反する休みが設けられており、教育委員会の意図が不明だ。
さて、これまでほとんど聴いたことのない作曲家レイフ・ヴォーン=ウィリアムスのCDが中古店で安く入手できたので、聞いてみた(最近買ったディスク 2007/5/16)。ヴォーン=ウィリアムス(英国の音楽界では、頭文字をとってRVWで通用するらしい)は、これまで『グリーンスリーヴズによる幻想曲』程度しか聴いたことがなく、交響曲をじっくり聴くのはこれが初めてだと思う。生没年を見ると、86歳の長寿に恵まれた人で、日本では明治5年から昭和33年となり、私の祖父母もしくは曽祖父母の年代にあたる。1870年代生まれの作曲家を挙げてみると V. Williams1872, Skryabin1872, Rakhmaninov1873, Reger1873, Schoenberg1874, Holst1874, Ives1874, Ravel1875, Kreisler1875, Falla1876, Canteloube1879, Respighi1879 あたりで、多士済々という趣だ。イギリスでは、Elgar1857, Delius1864が少し先輩になるようだ。
イギリスではヴィクトリア王朝(1819-1901)に教育を受けた世代になる。まさに大英帝国の最盛期に生を受け、母国の栄光と第1次大戦、第二次大戦期を過ごし、戦後まで生きた。
この交響曲は、1942年という第二次大戦中に完成したものだというが、非常にしっとりとした回顧調の曲想を持つもので、特に音階がアイルランド、スコットランド風の5音音階に基づくらしく、日本人にとっても懐しさを感じさせるものになっている。その反面、第2楽章のスケルツォ楽章でも音楽のエネルギー、躍動感には乏しく、40分ほどでそれほど長い曲ではないが、和声や旋律の美しさは感じるものの、主張に乏しい音楽という印象だ。それでも第4楽章は、ブラームスの第4交響曲と同様、パッサカリア形式を用いており、ようやく音楽に盛り上がりがもたらされる。
エルガーにしても、ディーリアスにしてもこのRVWにしても、なぜこの時代のイギリス系の作曲家の作品は、懐旧の情を感じさせる作風なのだろうか?また、それが現代のイギリスでも非常に好まれているというのも不思議だ。後期ロマン派は、和声的にもオーケストレーション的にも一つの爛熟したものであり、完成形で、その中では充足したものだとは思うし、ロシアのラフマニノフなどにも通じる分かりやすさもあるのは確かだが。
タリスの主題による幻想曲は、コーラス団体タリス・スコラーズがその名をもらったトーマス・タリスのテーマに基づくものだというが、CDに付けられた詳しい解説によると、タリスが1567年に作曲した9曲の賛美歌のうちの第3曲がそのテーマとして用いられたものだという。
プレヴィンとロイヤル・フィル、テラーク録音は、『ピーターと狼』『パーセルの主題による変奏曲とフーガ(青少年のための管弦楽入門)』で以前から耳に親しいが、穏やかでしっとりとした表現が特徴で、この交響曲と幻想曲でもほとんど刺激的な響きはなく慎ましやかであり、その反面明快さが不足しているように感じられる。
p.s. RVWのファーストネームの Ralph だが、通常の表記は「ラルフ」が正しいが、古い発音として「レイフ」があったとのことで、RVW自身「ラルフ」と呼ばれることに不快感を示したらしく、「レイフ」とするのがいいらしい。(これは、英国音楽史の「トリビア」的な情報で、その筋では有名なことらしい。)
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