DS文学全集で『草枕』読了
先日購入したDS文学全集を通勤の往復などに持っていき、夏目漱石の『草枕』を読了した。(芥川の短編や、ダウンロードした岡本綺堂『半七捕物帖』1など合間合間に読んだものもあるけれど)
そして2年ほど前に読み直した川端康成『雪国』のことを思い出した。『雪国』も高校時代には読んでいたのだが、「当時はほとんど内容は把握できていなかっただろうな」と中年になりいろいろな経験を積んだ後に読み直し、それなりにこの小説を味わえたような気がしたときに思った。今回の『草枕』もさすがに漢文を幼少から得意としていた漱石の美文は難解な部分もあったが、若い頃読んだのとは違って、結構すっきりと頭に入ってきたし、細部の趣向も味わえたような気がする。漱石自ら古今東西の新趣向だと言うようなことを言っただけのことはあり、筋だけ追えば単純過ぎるものだが、画工の芸術観や、一風変わった温泉の出戻り娘との交流など、なかなかに味わい深かった。また、英訳のこの作品をあのグレン・グールドが愛読したというが、英訳ではこの漢詩や俳句や漢文調のフレーズはどう訳され、それをグールドがどう受け止めたのだろうかと想像しながら読むのも面白かった。
読書には適した時期があるという。ドストエーフスキーの『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』な難解な部分があると言っても青春のある時期に読んでおくべきだとは、誰の言だったか?
この『草枕』のような脱俗的な「非人情」の世界を描いたものは、漱石の初期作の一つとは言え、それこそ則天去私の境地ではないが、ある程度世知辛い世の中を経験してきたものでないと理解できないのかも知れない。
また、DSの文字はバックライト付きというのが、逆に目に優しいのか、細かい文字の文庫本を読むよりもいいかも知れない。ネット量販サイトのレビューに年配の人に結構受けているというものがあったが、これなら大きい文字の特別文庫を求めなくても老眼の進んだ人でも読めるので、そういう意味でテクノロジーの進歩がユニバーサルデザイン的な書籍を生んだとも言えるように思う。
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