シフのJ.S.バッハ『インヴェンションとシンフォニア』
グールドに続くピアノでのバッハ弾きとしては、このハンガリー生まれのシフ・アンドラーシュが挙げられることが多い。彼は、日本出身のヴァイオリニスト塩川悠子女史の夫君でもあり、モーツァルトやシューベルトの演奏でも名は高い。彼の演奏では、テレビで見たブラームスの2番の協奏曲が面白かった記憶があるが、モーツァルトは彼のソナタ全集が出た頃非常に評判が高かったが、私としてはあまり好みではなかった。
さて、このインヴェンションとシンフォニアだが、非常に装飾音が独特なのが特徴と言えようか。また、テンポを動かしたり独特のアーティキュレーションをつけたりしてもいるので、少々ロマンティックな表現だと感じられることもある。以前、グールドとエッシェンバッハのミュージックカセットの録音を取り上げたが、このCDは、それらとも違う独特なものだ。
かつてはよくピアニストに弾かれた「半音階幻想曲とフーガ」がこのCDに収録されているが、この曲は現在ではなぜか弾かれたり聴かれる機会が減ってしまったので、シフの演奏で聴けるのは楽しい。
その他珍しい4つのデュエットBWV802-805が収録されている。
ピアノの音色は、ロンドンレーベルの特徴(ドイツ・グラモフォンと違う)で、華やかだがやや滲みのあるものになっている。
録音は、1980年代初めにロンドンのキングズウェイホールで録られたもの。
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