J.S.バッハ『コーヒー・カンタータ』とドリップコーヒー
J.S.バッハ 世俗カンタータ BWV.211
「おしゃべりはやめて、お静かに」(Schweigt stille, plaudert nicht)
エマ・カークビー(S), ロジャーズ・カヴィ・クランプ(T), デイヴィッド・トーマス(B)
クリストファー・ホグウッド指揮(ハープシコード)
アカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージック
1986年、ロンドンでの録音
(併録: 農民カンタータ)
先日のカンボジアン・コーヒーのおかげで、コーヒー熱が再燃し、このところずっとコーヒーミルで挽いたコーヒー豆で淹れたコーヒーを飲んでいる。豆はスーパーや専門店で売っている焙煎されたものを買ってくるので、コーヒーの淹れ方の選択肢はコーヒー豆店、豆の産地、焙煎度合いの選択、豆の量、ミルの挽きかたの粗さ・細かさ、ドリップ時の粉の量、お湯の温度、蒸らし時間、抽出時間、お湯の量などなど多岐に渡る。組合せを考えれば膨大なものになる。まだ安定した味が出せるわけではないが、いろいろ試してみると、粗挽きよりも中細挽きで、じっくり抽出した味の濃いものがどうも自分の好みのようだ。
バッハのコーヒーカンタータとドイツでコーヒーが飲まれるようになった経緯などは、このサイトによくまとまっているが、コーヒーを含めたカフェイン飲料というものが人類史に与えた影響というのはなかなかのものがあるようだ。
中国や日本における茶、茶がインドやスリランカで生産されるようになったこと、アラビアでのコーヒーの発見とヨーロッパへの伝播、中南米諸国でのコーヒープランテーションの開発、フェアではないトレード。1773年アメリカ独立を促したボストン茶会事件、1840年欧州諸国によるアジア支配と日本の尊皇攘夷のきっかけアヘン戦争の原因となった中国茶などなど。
バッハとしては珍しく寛いだ雰囲気のこの曲は、流行のコーヒーのとりこになった若い女性によるコーヒー賛美と、その女性の頑固な父親とによる寸劇的な喜劇で、いわゆるオペラ作品を書かなかったとされるバッハにとっては、受難曲と並び一種の演劇作品とも見なされるものの一つになっている。
ジャケットの写真は、バッハ兼頑固親父に扮したホグウッドと、コーヒー娘に扮したエマ・カークビーで、この辺もなかなか面白い。カークビーの声は、素直でヴィブラートの少ないストレートな美しい響きで、この頃のピリオド演奏のスター歌手の一人だった。今はあまり名前を聞かなくなってしまっているけれど、この寛いだ録音では、明るい響きの美しいソプラノがたっぷり楽しめる。
楽しい演奏で、コーヒーを飲みながら聴くとまた格別だ。
参考記事:
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» J.S.バッハ「コーヒー・カンタータ」を聞く [電網郊外散歩道]
新年に最初に聞いた音楽は、J.S.バッハでした。それも、朝のコーヒーを飲みながら、「コーヒー・カンタータ」を(^_^)/
バッハの世俗カンタータで、正式にはカンタータ第211番「お静かに、おしゃべりせずに」BWV211、というのだそうです。エリー・アメリング(Sop)、コレギウム・アウレウム合奏団の演奏で、1967年にドイツのフッガー城、糸杉の間で録音されたもの(ハルモニア・ムンディ原盤、BMG BVCD-38131)です。
16世紀にヨーロッパに入り、イギリスで大流行して、この頃にドイツに入っ... [続きを読む]
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おいしいコーヒー、楽しい音楽、なによりですね。今年も、残すところ、もう一週間を切りました。はやいものです。トラックバックしました。
投稿: narkejp | 2007年12月26日 (水) 06:43
narkejpさん、コメント、トラックバックありがとうございました。2007年初めのCDの記事を再読させていただきました。
ちょうど今朝の朝日新聞の天声人語がコーヒー珈琲、可否のことを取り上げていましたね。コーヒー有害論も強い時代もありましたが、最近は健康に有用という説が強くなりつつあるようです。コーヒー党にはうれしい情報ですが、フェアトレードの関係もあり、少々眉に唾する必要があるかも知れないと拗ね者的に考えております。
2007年も残り少なくなりましたがこれからもblog記事楽しみにしております。
投稿: 望 岳人 | 2007年12月26日 (水) 18:00