ブレンデル、アバドのブラームス ピアノ協奏曲第1番
先日のシューベルトの『鱒』五重奏曲に続いて、今回もブレンデルのピアノを聴いた。
これは、当時ドイツグラモフォンの専属だったはずのアバドが特別にブレンデルとの共演をフィリップスに収録したもので、確かザルブブルクかベルリン芸術週間か何かで共演して大変評判になり、その後にスタジオ録音されたものだったものではなかろうか。確かその演奏の録音をNHKのFM放送で聴き、カセットテープの時間切れで全曲エアチェックをしそこなった覚えがあるが、この録音データは1986年となっているので記憶違いかも知れない。(違う時期1979年のロンドン響との録音だが、ヴェーバーのコンツェルト・シュトゥック 小協奏曲が併録されている。)
アバドのベルリンフィルの音楽監督就任は1990年なのだが、カラヤン時代のベルリンフィルにはカラヤンに認められた多くの指揮者が指揮台に立ち、それがNHKFMでもよく放送され、聴くのが楽しみだった。その放送と前後するかのように、新録音も出たりしたように記憶している。(これもその一種だったと思うのだが・・・としつこい。)
記憶の美化作用だと思うが、そのとき聴いたブラームスの1番は凄かった。音盤で言えば、重戦車のようなギレリスとヨッフム/BPOと双璧をなすような豪壮な演奏だった。ブラームスのものものしい挑戦的な冒頭から、ロマン派盛期の甘ったるいとまで言えそうな楽想まで表現の幅が非常に広い演奏で、ブレンデルは彼らしい明晰で誠実な演奏でブラームスの若さに対応しているようだったし、アバド、ベルリンフィルも相当気合が入っていた記憶がある。
さて、このディスクだが、その年の『レコード芸術誌』のレコード・アカデミー賞を受賞したことでも知られるCDで、上記のような(間違っているかも知れないが)記憶のよすがとして最近購入したもの。それまでこの曲のCDは、珍しいシューマンの「赤とんぼ」が聴けるNaxosのものしか持っておらず、ハイティンクとの2番が好ましい演奏だったので期待して聴いてみた。
ギレリス盤や、放送で何度も聴いたR.ゼルキンとセル(まだ音盤は未入手なのでこれも記憶の美化の危惧はある)のガッツに溢れた物々しいともいえる演奏などに比べて丁寧過ぎるように感じこともある。また、アバドの指揮は緻密なものだし、ベルリンフィルは巧い(がホルンがあまり調子がよくなかった?)し、ブレンデルは誠実にブラームスのピアニストの苦行とも言える要求を過不足なくこなし、熱気を込めて演奏しているしで、普通の意味で文句の付けようがない。ただ、まったくの好みの問題なのだが、外連みや伸びやかさがどこか足りないように感じるのかも知れない。生真面目なブレンデルやアバドに外連みを求める方が間違っているのかも知れないが。
次は、ハイティンクとの2番を聴いてみたいと思っている。(モーツァルトのピアノ協奏曲全集が手元にないので、数えてみたらブレンデルの音盤の手持ちは意外に少なかったが、しばらくまとめて聴くつもりだ。)
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