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2008年1月30日 (水)

藤沢周平『用心棒日月抄』シリーズ読了

1月3日のトランヴェールに始まった藤沢周平『用心棒日月抄』シリーズ全4作読破計画もようやく一昨夜完了した。

第2作『孤剣』、第3作『刺客』と快調に短編集を読み進めてきたが、第4作『凶刃』にいたって少々これまでのリズムとはなんとなく違い話の筋がすんなり頭に入って来なくなってしまった。少々、デプレッション気味のときには、難解な書籍の読解力が急激に落ちるのでそれかとも思ったが、相変わらず藤沢周平の文章め平明で明瞭なのでどうしたことだろうと思いつつ、この第4巻を読み終えるまで約1週間ほどかかってしまった。

現代の大きめな活字の文庫で400ページほどなので、調子のいいときは一晩で読んでしまう分量なのだが、これまでのリズムとの齟齬があってこうなってしまったらしい。というのも、うかつな話だが、ようやく終盤になってから、この第4巻がこれまでの連作短編とは違い長編だということに気が付いたのだ。

また、第3巻と第4巻との間にある10数年という時間差も、それまでの小気味よさとは違うものを醸し出していたのかも知れない。

ともあれ、トランヴェールできっかけをもらった読書も一通り終わった。池波正太郎や岡本綺堂など江戸の情景描写の先達のせいか、藤沢周平のこのシリーズで江戸の風景や季節感、情緒をあまり感じたことはなかった。それよりも、もっと濃厚で普遍的な人間模様を味わうことができたように思う。そういう意味でトランヴェールの特集へは仇をなすようだが、江戸の地名や風物を求めさせる点では、池波正太郎の方が吸引力は強いように思った。逆に藤沢周平の小説は、土地の匂いよりももっと人間に力点を置いているように感じる。

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コメント

『用心棒日月抄』四部作の中で、最後の『凶刃』は前三作と比べてやや異色の作品かと思います。細谷半太夫の妻女の最後などは、悲惨なものです。時代小説に性格悲劇の要素を盛り込んだ、重厚な趣がありますね。トラックバックいたします。

narkejpさん、コメントとトラックバックありがとうございました。藤沢周平にお詳しいnarkejpさんに前三作と第四作目の印象の違いを認めていただき安心しました。こちらの精神的な状態が不安定になったように、第四作では感じたものですから。しかし、読み応えはありましたし、佐知の深い愛にも心を打たれました。

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» 藤沢周平『用心棒日月抄〜凶刃』を読む [電網郊外散歩道]
藤沢周平の連作『用心棒日月抄』シリーズの最終巻、『凶刃』を読みました。 青江又八郎は、数年で四十となる妻由亀(ゆき)との間に三人の子がおり、近習頭取として百六十石の祿を喰む身分。かつて江戸で用心棒をしながら藩の抗争事件の解決に尽力してから16年が過ぎている。だが、ある日寺社奉行の榊原造酒に呼び出され、江戸出府の折に嗅足組と呼ばれる忍びの組の解体を告げるよう依頼される。その相手は、かつて生死を共にした江戸屋敷の嗅足組の頭領・谷口佐知だった。ところが、寺社奉行・榊原造酒が暗殺され、又八郎も何者かに襲撃... [続きを読む]

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