カザルスの無伴奏チェロ組曲第1番ト長調(Opus蔵)
あっと言う間の1月も過ぎ、今日はいよいよ立春前の節分。昨日は、もう一度基本に戻ろうではないが、今や録音芸術の古典でもあるカザルスのバッハの「独奏チェロ組曲」(一般的には無伴奏チェロ組曲)を、最近の盤起こしのCDで聴いてみた。
Opus蔵というレーベルのもので、EMI盤の古いSP盤からLPで再発されたもののエアチェックではよく聞いた音源がどのように聞こえるのか興味があった。(最近ではNaxosからも出ているようだが。)
1938年の録音。久しぶりにスピーカーから音を出して聴いてみると、子ども達は「何このパチパチという音、いつの録音?」と文句を言い、台所からは妻が「誰の演奏? カザルス? いい音ね」と来る。子ども達は、LPのスクラッチ音さえ生体験としてはほとんどないので、パチパチ音が続くこと自体気になるようだ。私も妻同様、パチパチ音を除けば、こんなに実在感のある生々しいチェロの音はそうは聴けないように感じた。一言で言えば、この盤起こしは成功だと思う。昔のSPにこんなに豊かな音が入っていたというのはまったく信じがたいほどだ。こうなると、SPを高級機で愛好していた既に物故者になってしまった昔の通人たちの「SPはいい音がしていたもんだよ。」というのも、単なる懐古趣味ではないと思われてくる。特に、これは独奏の弦楽器であることも影響しているのだとは思う。
さて、2007年9月 1日 (土) J.S.バッハ 独奏チェロ組曲(無伴奏チェロ組曲) ヨーヨー・マとビルスマ という記事で、おこがましくも故・柴田南雄氏の『(続)わたしの名曲・レコード探訪』(音楽選書48 音楽之友社)ばりの聴き比べを試みたのだが、この正月に実家の本棚の奥から見つけ出してきた(昭和61年4月10日 初版)。それを改めて読み返しているのだが、いろいろと面白い記事が多い。当時は読むだけで実際に聞けなかった音盤なども実際に耳にする機会が格段に増えたからでもある。
この本を読みながらいろいろ改めて聴きなおしてみたいものもあるが、今回はBWV1007 ト長調の第1楽章を、カザルス、マ、ビルスマの順で家族で続けて聴いてみた。マの演奏はさすがに滑らかで、ダイナミックも大きくとっており、今でも優れた演奏だと思う(柴田氏は、上記の著書で、1番から6番までどの曲も馬友友青年の妙技に塗りつぶされているというような少々辛口のコメントを残されているが)。ビルスマのCDをかけるとやはり、音程が低めであり、弾き方の違いも子ども達にも分かるようで、「変わった演奏だね」との感想。「エンドピンという現代のチェロにはある道具(装置)がないため、膝で挟んで演奏しているらしいよ」と一応説明をしておいた。
1938年というと、ナチスがオーストリアを併合した年であり、ヨーロッパは危機的時代へ向かっていた頃でもあり、その時代の緊張感の影響もあるのだろうし、そしてカザルスのバッハの音楽の力への信仰もあるのだろう、現代もある意味危機的時代ではあるが、それとは異なる精神的なエネルギーを感じることができるような気がした。
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