アシュケナージのショパン『前奏曲集』『即興曲集』
今日入手したディスク 2007/05/18 に書いたときには一応通して聴いてみたのだが、以来なかなか記事にする機会がなかったこの『前奏曲集』『即興曲集』。ポリーニのLPをよく春に聴いた記憶があり、いよいよ春めいてきたこのごろ、なんとなく聴きたくなって取り出してみた。
ポリーニが『練習曲集』に続いてDGに録音した『前奏曲集』は、発売からそう遠くない頃に父が購入してきたのを覚えている。まだ、中学生だったか、もう高校に入学していた頃かははっきり覚えていないが、このLPは実に何度も繰り返し聴いた。
今、こうしてアシュケナージの録音を聴いていると、レファレンスとして頭の中でポリーニの演奏が鳴っているような感じがするほどだ。ただ、このポリーニ盤、どういう具合か、購入当初から盤面が反っていて、そのためかすかな針音に悩まされた盤でもあった。LPは実家に置いたままなので、『練習曲集』『前奏曲集』とも国内盤のCDを買い直したが、LPで聴かれる鮮烈な音はCDからは聴かれず、LPとCDの鮮度のようなものを意識したのは、ポリーニのCDからだったかも知れない。(先日記事にしたレーザーターンテーブルなら反りのある盤でもうまく再生してくれるらしい)
さて、なかなかアシュケナージの演奏に話が向かわない。このCDは、ブックオフで廉価で求めたものだが、Made in West Germany時代の欧州盤だ。
録音データも綿密に記されており、この24曲の前奏曲を、どうやら一挙に録音したものではないことが伺われるような記載にになっている。1-24のトラックは、「1976年6月、9月、1978年9月、1978年2月にPetershamのAll Saints' Churchで。1976年6月と9月、1977年9月、1978年2月にロンドンのRosslyn Hill Unitarian Chapelで。1976年6月と9月、1977年9月、1983年2月にロンドンのキングズウェイホールで。」と読めるのだが、どの曲がどの場所でどのときに録音されたのかは分からない。ただ、CDケースの裏面には、1-24は丸ピーで1979年となっているので、録音データが混乱しているということも考えられる。(このような一環した作品を別々の場所で、別々の時に録音したというのは、このデータを信用する限りにおいて、非常に不可思議な録音データだ。通して聴いても不自然さは感じられないのだが、どうしてこのようなことをしたのだろうか?ミスの修正のためだけなら、同じ録音ロケーションで、プレイバック後にすぐにでもできただろうと思うのだが。ちなみに、ポリーニの同曲録音は、1974年6月と7月にミュンヘンのヘラクレスザールで行われている。)
第16曲の変ロ短調の猛烈な迫力。その次の変イ長調の夢見るような気分の転換は、ポリーニのストレートな表現の方をつい思い起こしてしまうが、アシュケナージの音楽はより柔軟な趣があるように聞こえる。しかし、第22番のト短調の劇的な曲は、少々暴力的なほどピアノが鳴りきっている。その対比として、分散和音のヘ長調の第23番は美しい。ニ短調の終曲第24番は、第23番とは録音ロケーションが違うように聞こえる。ポリーニはこの曲でも畳み掛ける迫力を持ちながら、冷静な音楽を奏でていたように記憶している。最後の低音の単音三音が凄いと思った。アシュケナージは、音を割りながら、曲に没入した演奏を聞かせる。ポリーニほど突き放した表現ではない。詩情という観点からみても、ポリーニの方は格調高い清冽な情緒を感じるが、アシュケナージはより暖かく人間的とも言えるが、少々甘さが残るように思う。
24の前奏曲のほかに嬰ハ短調作品45、非常に短い変イ長調の前奏曲も収録されている。
また、即興曲は、Op.29, 36, 51 の3曲に 有名なOp.66の『幻想即興曲』も聴くことができる。完璧とも言えるレファレンスに縛られた聴き方をしていないせいか、アシュケナージの演奏を純粋に楽しむことができるのは、こちらの4曲だろう。最初の3曲は、長調が主調。最後の曲は嬰ハ短調という調性。これらは、1983年から1985年の録音で、ディジタル。いわゆる人口に膾炙した『幻想即興曲』だが、アシュケナージの演奏は逆に真剣そのもので、なかなか聞き応えがあった。
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