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2008年3月12日 (水)

水平線までの距離は意外に短い

ショパンは小休止。

この前の日曜日、お台場の建造物の中でも最も古い歴史をもつという「船の科学館」に家族で出かけてきた。

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横浜のみなとみらい地区にもマリタイムミュージアムという船関係の博物館があり、船の歴史や船舶模型、港湾や貿易などでは同様の展示があるので内容的にはそれほど目新しさは感じなかったけれど、全体としては規模が大きく展示内容も豊富だった。なかでも造船関係の展示が巨大な展示スペースを利用しており、結構充実していた。

さて、通常展示の最後の方に船や海に関する三択問題を答えるQ&Aクイズの立派な小ホール風のコーナーがあり、いくつかの問題に参加してみたら、その中に船のブリッジ(デッキ?、マスト?)から見える水平線までの距離はどのくらいでしょうという問題が出た。選択肢は12km、25km、50kmというものだった。私は勘で12kmを選び、一緒に参加した次男も適当に25kmを選んだ。このときの答えは12kmが正しく、その後の解説で平方根と視線の高さを用いた水平線までの距離の公式が示された。結構単純な式だったので、意外に思った。

そこで、帰宅後、ネットで地球の大きさ、水平線までの距離などで検索したところ、中学校程度の数学(三平方の定理)を使えば比較的簡単に近似値を計算できることが分かった。 なるほど、そういうことなのかという意味では、ユーレカである。(参考サイト:地球の科学 地球の形と大きさ)。これまでの数学の授業でそのような興味深い問題にあたったことがなかったので。以前も書いたが私はこのような実用数学(道具としての数学)が好きなようで、もっとそちらの方面から勉強をすればよかったように思う。

さて、(簡単な図を書いて見て自分なりに整理すると)水平線までの距離をx(km)、視線の高さをh(km)、地球を完全な球体としたときの地球の半径をR(km)とすると、三平方の定理により、xの二乗とRの二乗の和は(R+h)の二乗に等しくなり、これを整理すると x=SQRT(2Rh+h^2) となる。(エクセルでSQRTは平方根、^2は二乗をしめす。)

地球の北極と南極を結ぶ周囲の長さは、40,000km(メートル法の起源が北極と赤道の距離を10,000kmとしたことに由来するので、その4倍が地球の大円周)なので、Rは、約6,366kmとなる。このRの値に比べて一般的にhは非常に小さいので、これを無視してより簡単な式にすると x=SQRT(2Rh)となる。地上で最も高い場所、エヴェレストの頂上でも8,848m(約9km)なので、6,366kmに比べると非常に小さい。(実際に計算で生じる差も富士山で30m程度、エヴェレストで100m程度となった。)

これをエクセルの数式として入力して簡単に計算できるようにしてみると、海面からの高さ12m程度で、水平線までの距離が12kmになった。 上記の船の科学館の問題では、船のデッキ(?)の高さだったようだ。

このエクセルシートを使っていろいろな高さからの距離を計算してみた。視点が海抜1.7mの人は4.7km先しか見えない。つまり海岸の波打ち際に立って水平線を見るとほんの5km先が水平線ということだ。また、横浜のランドマークタワーの展望台は海抜273mということで、そこに視点があるとすると約47km先が見える。(トウキョウタワーの特別展望台も、標高23m+高さ250mなので海抜としてはちょうど273mになるらしい。)

なお、水平線までの距離をx(m)、視線の高さをh(m)、地球を完全な球体としたときの地球の半径をR(m)と、単位をmでそろえると、x=3569*SQRT(h)となる。つまり1mの視点では3,569mとなり、100mなら35,690mとなる。

富士山の山頂3,776mから見ると219km先が見えることになる。逆に219km離れた場所から富士山の山頂が見えることになる。(実際には空気による光の屈折などで多少変ってくるらしいが。)富士山の山梨県側の5合目は2,305mとされているので、5合目から上の富士山らしい形を見るためには、171km以内に近づかなければならないことになる。

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上の写真は、昨年の9月に江の島展望灯台の展望フロアから撮った写真。
Q. 江の島展望灯台の高さはどのくらいですか? A. 屋内展望フロアの高さは41.7m(海抜101.5m)になります。 とあり、この写真の水平線までの距離は、およそ、36kmとなる。

地図上で確かめてみたところ 熱海が36kmよりも少し遠くて見えない。房総半島方面も館山付近は40kmほどになるのでそれより近い陸地なら辛うじて見える程度。地図で見ると指呼の間のようだが、意外なほど見えないわけだ。

かつて富士山に登ったときに、遠くまで見えて感激した。さすがに日本一の展望台と賞されるわけだと思った。このときは、海側は、静岡方面や湘南海岸、房総半島まで眺められたが、このあたりまでの富士山頂からの距離はほぼ100kmなので当然といえば当然なわけだ。富士山からは視界の問題は別にして、計算上伊豆の大島あたりまでは見えるが、八丈島は見えないことになる。

ところで、東京と大阪の距離は、約400km。東京から大阪を見ても海抜0mからでは(まったく障害物がない大平原であっても)5km先しか見えないので、大阪を見るためには、海抜高度12.6kmまで上昇する必要がある。これは非常に意外な発見だった。地球儀で見れば当然のことなのだが、いつも平面図を見ることが多いので狭い日本と言っても地球の丸さによって水平線、地平線により見通しが利かないことをうっかり忘れがちだ。

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