NHKBS11 名曲探偵アマデウス 事件ファイル#3 『バッハの魔法を解け』(ゴルトベルク変奏曲)
先日、NHKの『その時歴史が動いた』でのモーツァルトの取り上げ方に苦言を呈したが、日曜日の夜11時から NHKの衛星放送第2(BS11)で放送された『名曲探偵』は、なかなかよく出来た内容だった。題材は、J.S.バッハのGoldberg変奏曲。ゴールトベルクと英語、独語チャンポンの名称で語られていたが、これは日本の楽曲名でこのおかしな表記が通例になっているからやむを得ないとも言えよう。
(NHK クラシックミステリー 名曲探偵アマデウス 第3回。ちなみに第1、2回は見逃した。)
さて、探偵ドラマとしては少々チープな舞台設定ながら、演奏は豪華だった。熊本マリがゴルトベルク変奏曲をこの番組のために、レクチャー的に弾いてくれたのだった。モンポウの演奏で知られる美人ピアニストだが、このゴルトベルクについても日本の女性ピアニストとして全曲録音を行ったのは彼女が初めてだったという。それだけのことはあり、非常に掌中に納まった感じで、自由自在という感じの演奏だった。
番組も、このバッハの名曲の構造を分かりやすく説き起こし、冒頭と最後に主題(低音部が主題だが)となるアリアを配し、その間を30曲の変奏でつないでおり、その第1変奏から始まる1+3nの数列のグループ、第2変奏の2+3nのグループ、第3変奏の3+3nのグループが、それぞれ舞曲などの性格的な音楽、次第に複雑化するトッカータのような技巧的な音楽、1度のカノンから始まり2度、3度と次第に主題と応答の度数が増えていく超絶的な作曲技巧のグループに分けられていることを要領よく説明してくれていた。特に熊本マリによるカノンの解説は分かりやすかった。また、アリア主題のトリルの意味を実演で比較してくれたのも得がたい内容だった。
また、この曲には欠かせないグレン・グールドの初期の録音と晩年の録音についても触れていた。
まともに作ろうと思えば、このような正攻法でも音楽的な興味を逸らさない番組もできるのにと、あの「その時」と比較して感じたものだった。ヴィデオ録画を子ども達とも一緒に見たのだが、比較的とっつきにくいこの曲を子ども達も興味を持ったようだった。
なお、宇宙物理学者?の方が、このゴルトベルクには宇宙的なフラクタル性を感じると言っていたが、バッハの超精密な音楽作りには、物理学徒を引き付ける誘引力があるのかも知れない。ゲーデル・エッシャー・バッハではないが、エッシャーの騙し絵も紹介されていた。
P.S. 小説家の島田雅彦が登場したが、印象に残らなかった。というよりも、このストーリーへの登場の必然性が感じられなかった。とは言え、30曲の変奏というのは、月齢に関係するのかも知れない。ミサ曲ロ短調などの象徴的な数字などとにかく、バッハは数字に強かったらしいから。
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