ドヴォルザーク チェロ協奏曲 デュプレ(Vc) バレンボイム/CSO
ドヴォルザーク チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
ジャクリーヌ・デュプレ(チェロ)
ダニエル・バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団
15:21/13:11/13:27 〔1970年、シカゴ〕
併録 ハイドン チェロ協奏曲第1番 ハ長調 H. Ⅶb:1 同上チェロ、同上指揮、イギリス室内管弦楽団
(新・名曲の世界73 HCD-1369)
2006年5月22日 (月) ドヴォルザークのチェロ協奏曲 フルニエ、セル/BPO の記事で、かつてよく聴いたエアチェック録音ということで、「ジャクリーヌ・デュプレは、夫君バレンボイムとシカゴ交響楽団がオケを務めたもので、デュプレの凄絶とも言えるソロに比べてオケが凡演とされるが、デュプレのソロはその通りとしても、オケはそれほどひどいだろうか?切々と訴えかけるようなソロには抗し難い魅力がある。」と書いたもの。これが、新・名曲の世界シリーズで入手できた。
デュプレについては、2006年6月 5日 (月) 「風のジャクリーヌ」で、彼女の姉と弟による生々しい回想録によって、それまでの薄命の天才チェリストという聖女のイメージが相当修正された。それ以後初めてディスクで聴くデュプレの演奏だ。この本が映画化されて日本でもヒットした頃には、一般のCD店にもデュプレのボックスセットなどが相当数陳列されていたが、最近はブームも去ってしまったようであまり見かけない。彼女のために書かれたと言われるほどのエルガーのチェロ協奏曲もまだ入手できていない。
さて、このドヴォルザークは、エアチェックでカセットテープに録音して聴いたもので、この曲としては私にとっての刷り込みなのだが、それほど細部まで覚えていなかった。デュプレの自由闊達なソロはところどころ聞き覚えがあるようには感じるのだが、上で書いたバレンボイムの指揮するシカゴ響がこういう演奏だったということは今回じっくり聴いてみて改めて驚かされた。
デュプレは、バレンボイムと1966年に21歳の若さで結婚、1970年のこの録音の時期はまだ25歳。しかし1971年頃から多発性硬化症が発症し始めたというから、この頃は万全な状態での最後の頃だったのだろう。
16歳で公式デビューを飾ったのだから、このときわずか25歳と言っても逆に驚くに足りないかも知れない。
テンポの主導権は夫と妻、どちらのものだったのだろうか?フルニエ、ロストロポーヴィチの録音に比較しても全般的にゆっくり目だ。しかし、この独奏の密度はその遅めなテンポでも緊張感をそぐことはまったくない。よく女性演奏家が、驚異的な集中力と表現力を示す際には、巫女的なトランス状態に比せられるが、この演奏もそのような女性的なテンペラメントを感じさせる部分もあり、音楽と楽器を完全に自分のものとして、音符を正確になぞるのではなく、自分の中から音楽が生まれてくるような感じを抱かせる演奏だ。
それに比較すると、バレンボイムの作る音楽は、セルとBPOのいい意味でドヴォルザークではないような剛毅で精密でソリストと一緒に音楽を作っているオーケストラとは違い、完全にデュプレに主導権を握られているように感じる。病気への予感があったかも知れないデュプレと、幸福な未来を信じていたバレンボイムとの差かも知れないが、切迫感が違うとも言える。
参考
デュプレ(Vc) バレンボイム/CSO 〔1970年録音〕 15:21/13:11/13:27
フルニエ(Vc) セル/BPO 〔1962年録音〕 14:44/11:25/12:20
ロストロポーヴィチ(Vc) 小澤/BSO 〔1985年録音〕 14:38/11:48/12:19
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