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2008年5月 3日 (土)

小笠原流の蕎麦の食べ方

日経BPNETがクラシック音楽など多彩な情報発信をしているのでたまに見るのだが、トレンディーネットのライフクリエイティブサイト L-Cruise という少々優雅で縁のなさそうなページに、面白そうな記事が載っていたので読んでみた。

武士の礼法で知られる小笠原流が今でも現存し、その宗家は女性で小笠原敬承斎という方らしい。その人の談話をまとめた記事が「和食を楽しむ(1) 蕎麦を品よく粋に食べる」というもの。

いわゆる小笠原流は、幕府の高家の系統の小笠原流 (弓馬術礼法小笠原教場 小笠原流礼法)と、豊前小倉藩主(明治維新後伯爵)の系統の小笠原流礼法 があるようで、なかなかややこしい。上記の和食の記事は、後者の宗家によるもののようだ。

「お蕎麦は音をたてて食べる」は間違い とのことである。

池波正太郎『男の作法』には、「そばは、二口、三口かんでからのどに入れるのが一番うまい」とあり、「クチャクチャかんで食べる」のを戒め、また「藪」のような濃いおつゆの場合にのみちょっとつけるのが美味しく、普通の薄いつゆの場合にはどっぷりつけてもよい、とある。作法としては、美味しく食べることが主眼のようで、音をたててすすることについては触れられていない。

いわゆる江戸落語では、蕎麦の食べ方は、すすりこむように、手繰るように食べるとされているようで、「時そば」などの演目を話す際には、その独特な音を立ててすすりこむ食べ方がよく知られているので、蕎麦のすすりこむ食べ方としてはその影響が結構強いのかも知れない。

ちなみに、wikipedia の 蕎麦の食べ方では、

そばの香りや喉越しを楽しむために食べるときに音を立てることが許され、その点で世界的にも稀有な食品である。

多くの蕎麦好きは、蕎麦の香りを重要視する。新蕎麦の季節ともなれば尚のことである。そうした蕎麦の香りを存分に味わうには、空気と一緒に啜り込み、鼻孔から抜くようにして食べるのが最良である。結果として音を立てることになるが、なんら恥じることはない。

とある。特に第一段落は、ここまで言い切るのも微妙ではあるが、おおやけの場で音を立ててもいいということが常識として黙認されているのでそのような言い方もありなのかも知れない。そういえばお茶漬けなどは音が立ちやすいが、感覚的に人前で音を立てて食べるのはあまり行儀がよろしくないような気もするし。

ただ、香りを味わうためだけなら、茹でて水にさらす蕎麦切りよりも熱湯で蕎麦粉を捏ねるだけなので味も香りも濃厚な蕎麦がきという食べ方もある。

自分自身は、ざる蕎麦、盛り蕎麦などの冷たい蕎麦の場合には、自然にすすりこむので音が立つように思う。長野県の戸隠神社の中社で秋分の日に行われる蕎麦食い競争に出場したことがあるが、ぼっちと呼ばれる一口大に丸めた蕎麦をそれはそれは猛烈な勢いですすりこんだ。ただ、その食べ方だと胃に空気が溜まりやすいようで、優勝した人は、後でテレビニュースの映像で確認すると、すすりこまずに上品に「モグモグ」噛んで飲み込んでいた!

盛岡のわんこ蕎麦は、朱塗りのおわんに一口だけそばつゆ付きの蕎麦が入れられるのですすりこむというよりも飲み込む感じだった。

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コメント

おはようございます。
蕎麦が好きです。蕎麦屋で酒を飲むのはもっと好きです。
昼食時の喧噪がすんだ頃に訪れ、玉子焼きとかでお銚子二本、しめにもりを手繰る 幸せな時間です。

蕎麦の食べ方は考えたことはありません。
ことさらに音を立てて食べることもありませんし
音を立てまいと思ったこともありません。
そういうことを考えながら食べたくはないというのが本音です。

天ぬきさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

「天ぬき」というお名前からお蕎麦好きの方かと想像させてもらったおりましたが、想像通りだったようでうれしいです。喧騒の過ぎた後の蕎麦屋でのお酒というのは粋ですね。あこがれます。

蕎麦の食べ方に小笠原流があるとは知りませんでしたので、その驚きを記事にしてみました。小笠原流の宗家の言っていることは総論としては納得でき、「社交の術としての礼法」で「音を立てるな」というのはいいのですが、一般的な蕎麦の食べ方としては、どうも言いすぎではないかと思った次第です。

蕎麦は高冷地、寒冷地、荒蕪の地の庶民の食糧として貴重な穀物だそうで、多分私の祖先も蕎麦を食べて生き延び、私がこの世にあるような思いをめぐらしたことがあります。

蕎麦切り自体は江戸時代発祥で、素麺、饂飩に比べると歴史が短い麺食で元来から庶民の食べ物だったようですが、なんとも言えない粋を感じさせるのは、江戸文化の残照なのかとも思いますね。

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