小澤征爾 武満徹 『音楽』(新潮文庫)
先日の新聞の広告を見たら、2008年のサイトウキネンフェスティバルのオペラは、ヤナーチェクの『利口な女狐の物語』を取り上げるのだという。以前にも確かヤナーチェクを取り上げたことがあったので、小澤征爾は結構ヤナーチェクのオペラが好きなのかも知れない。ただ、小澤氏は椎間板ヘルニアのため現在休養中だということで、水戸室内管弦楽団の定期公演に代演を立てるという新聞記事を読んだ。是非夏までには治癒して欲しい。公演を見るのは無理だろうが、是非舞台を映像に記録して後日市販して欲しい。
さて、この文庫だが、オリジナルは昭和56年(1981年)刊行されたもので、既に27年も経ってしまった。しかし、自分が未だ若い頃のものなので、なんとなくつい昨日のような気もする。いわゆる同時代という感じだ。武満徹も勿論元気だった頃、もう長野県の御代田町に居を構えていたのだろうか?
同じく対談集で大江健三郎がノーベル文学賞を受賞した後に、小澤征爾と対談した『同じ年に生まれて』もそれなりに面白かったが、この『音楽』も面白かった。ただ、あまり深みが感じられない。昔、ああだった、こうだったという回顧談が多いように思う。もっと武満の発言を読んでみたかったが、どうも小澤のペースの対談のようだ。ざっくばらんで物怖じしない人柄のようなので、無理からぬところはあると思うが。それでも、武満が「岩城宏之の指揮がよかった」というところでは、小澤が相槌を打たないところなど、結構なるほどと思うところもある。
ちょうど中国が四人組の追放の前後で、武満が訪中、小澤が単身訪中し北京のオーケストラでブラームスを振り、その後ボストン響を引き連れて訪中という頃に当たっており、その意味で、その時代の記録としては結構面白い。
最近、中国出身のユンディ・リとラヴェルのピアノ協奏曲で共演したCDが出たり、ランランとは以前から共演していたりで、中国出身の音楽家の出現を当時から予想していたが、それが実現したのは喜びだろうと思う。
ただ、日本の音楽界についての言及は、何回かの対談を合わせたものだけあり、多少自己矛盾しているような発言も見受けられ、そのことが結構アンビバレントな感情を窺わせるようにも思う。
20世紀の日本を代表する稀代の音楽家同士の対談で、それなりに貴重なものだが、やはり深みという点で物足りなさを覚えてしまうのが、残念だ。
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