『ボクたちクラシックつながり ピアニストが読む音楽マンガ』 青柳いづみこ (文春新書622)
2008年2月20日第1刷、同年5月10日第2刷の比較的新しいクラシック音楽関係のエッセイ。
2006年6月 6日 (火) フジ子・ヘミング 「奇蹟のカンパネラ」の記事を書いたときに、青柳いづみこオフィシャルサイトの執筆&インタビュー 評論「進化するフジ子ヘミング」/「すばる」 2006年8月号を発見し、それ以来ときおり新聞記事などで目にするピアニスト・エッセイストだが、愛好まんが『のだめカンタービレ』や『神童』『ピアノの森』を題材にしたエッセイと帯にあり、手に取ってパラパラ読んでみたところ、「目の敵にされるホロヴィッツ」だの「ゼルキンとホロヴィッツのバトル」だの興味をそそってやまない小見出しが目に入り、税抜き定価730円と高いが購入したのだった。
現在、流行している音楽漫画を題材にしたのはタイムリーなのだろうが、いわゆる際物で、数年したら、訳が分からなくなってしまうことだろうと心配しつつ読み始めたが、「のだめ」の部分を除いても、ピアニスト、指揮者論として、プロフェッショナルとしての裏話的な話も書かれており、一般愛好家にはとても面白い本だった。
「目の敵にされるホロヴィッツ」の章では、日本の現役ピアニストたちの1992年時点での談話が載っているが、若林顕(あきら)氏「リヒテル。ホロヴィッツとコルトー」、横山幸雄氏「リヒテルとミケランジェリ」、清水和音氏は「アシュケナージが20世紀で一番優れたピアニストだと思う」、アンドラーシュ・シフ「アラウ」と、いわゆる作曲家の意図の尊重、楽譜への忠実とそれのアンチテーゼとしてのホロヴィッツという対立構図のようだった。プロのピアニストが言うのだから一理はあるのだろうが、ホロヴィッツのピアノ演奏は、それほど作曲家の意図に反し、楽譜に忠実でないだろうか? グールド、ポゴレリッチ、ブーニンなどホロヴィッツよりも楽譜の指示から離れたピアニストはいるわけだし、先日じっくり聞いたホロヴィッツの『クライスレリアーナ』にしても楽譜に忠実ではないだろうか、少し気になるところだった。
まあ、そのような違和感もあったにはあったが、全体としては特にピアノ音楽に関心のある人なら一読しても損はないという盛りだくさんの内容で、できれば「のだめ」のストーリーはある程度知っている方が楽しめるかも知れないという本だった。
指揮者の謎という章はあるが、掘り下げるべき内容に比べて、文章の量が短すぎたようには思った。
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