昨夜の『世界ふしぎ発見!』はルートヴィヒ二世特集
先週、須永朝彦『ルートヴィヒⅡ世 白鳥王の夢と真実』(新書館)という本を買ったばかりなので、最近とんと見なくなった『世界ふしぎ発見!』だが、不思議な縁を感じてじっくりと見た。
第1062回 狂王ルートヴィッヒ 三つの城の秘密!2008/07/19(土)21:00~
ノイ・シュヴァン・シュタイン城、リンダー・ホフ城、ヘレン・キーム・ゼー城の内部をその城の管理責任者が案内してくれるという趣向で、ノイ・シュヴァン・シュタイン城の管理人は、ケンプフさんという日本語表記が付けられていたが、もしかしたらピアニストのヴィルヘルム・ケンプ(Wilhelm Kempff)と同じ苗字かも知れないなどと思った。
以前にも、ディズニーランドを作ったような王様と書いたことがあったが、ディズニーはその夢想の世界を多くの人々に公開したけれど、ルートヴィヒⅡ世は、ただ自己愛のためだけにあれだけ膨大な城を作ったという点で、ディズニーとは似て非なる存在だという得心がいった。
この番組では、期待ほどリヒャルト・ヴァーグナー(ワーグナー)との関係については、詳しくは触れられてはいなかったが、最後のキーム・ゼーの中洲(小島)に作られたヴェルサイユ宮殿をそっくりコピーしたようなヘレン・キーム・ゼー城の離れで、皇帝ハプスブルク家の皇后となった系図的には父のマクシミリアンⅡ世の従姉妹に当たるエリーザベト(その妹ゾフィーとルートヴィヒⅡ世は婚約しており、後破棄され、ルートヴィヒは生涯独身を通した)との逢引をしていたことにも触れられていた。(その城には、あのヴェルサイユよりも広い「鏡の間」が作られたが、本家のように華やかな社交、舞踏会に使われたわけではなく、超贅沢なことに、ほんの数日、ルートヴィヒのためだけに灯りがともされ使われただけだったという。)
バイエルン国王退位の元になった精神鑑定書をルートヴィヒと面接もせずに「捏造」した精神医学者のフォン・グッデン博士という人物と、最後にはシュタルンベルク湖で一緒に入水自殺をしたといわれているが、グッデン博士は水死ではなく、絞殺されたという検死報告があるようだという。
この番組では、私が学生の頃仙台の名画座の古い椅子に座って上映を見たヴィスコンティの『ルートヴィヒ 神々の黄昏』(1972年)についてはまったく触れられていなかった。またヴァーグナーの音楽もほとんど用いられていなかった。そいういう意味では多面的な番組ではなく、「ルートヴィヒⅡ世と城」に焦点を当てた観光番組的な作りだったが、それでも面白い見ものだった。
子ども達とは、ドイツの領邦国家というのは、ほぼ日本の鎌倉幕府以来の体制と似た感じで、バイエルン王国というのも、有力な藩主のようなもので、ちょうど御三家や、加賀100万石、仙台60万石のような感じだったのかな、などと話したが理解できただろうか?非中央集権のドイツ、イタリア、日本のその後の歴史を思うと、なかなか複雑な時代だと思いながら、梅雨明けの暑さの中、これとは縁もゆかりもない小澤/CSO『シェエラザード』を聴きながら眠りについたのだった。
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コメント
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こんにちわ!
私も気になって見ていたのですが、
ちょっと私のタイミングではうつらうつらしてしまって^^;
本当に豪華なディズニーランドですよね。
彼が狂っていたかどうか…
これだけのモノを実際に作ってしまう…という時点で
常人のタガは外れていると思います。
やはり狂人であったのだろうと、私は思います。
普通じゃないです!
でも、その恩恵を一番に受けているのは、
ルードヴィヒ本人ではなく、後世に生きる我々かもしれませんね。
だから、私はルードヴィヒのタガが外れていて良かったなあ~と思います。
投稿: バルダ | 2008年7月20日 (日) 14:09
バルダさん、今晩は。コメントありがとうございます。
ルートヴィヒは狂王だったかも知れないけれど、バイエルンに多くの観光資源を残し、またヴァーグナー(一般にはワーグナーですが、私の表記癖で御勘弁を)のパトロンとして多くの資金援助を行い、ヴァーグナーの破天荒な芸術家生活を支え、その傑作の成立を支援したというのですから、それだけでも凄い人物だよね、というようなことを我が家でも話しておりました。また、あのような贅沢で無意味な城作りも、公共工事としてそれなりの意味があったというのですから。モンゴルフィエやツェッペリンに先立つ飛行船の夢想や、ダイニングエレベーターの発想など、常人ではないですね。
つい先日入手した伝記は、まだ読了しておりませんが、今回の番組はそういう意味で、身近な視点から見せてくれていましたね。
投稿: 望 岳人 | 2008年7月20日 (日) 21:51