マタチッチ/NHK交響楽団のヴァーグナー 管弦楽曲集
ヴァーグナー
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲 (9:40)
『ローエングリン』第1幕前奏曲 (9:02)
『ローエングリン』第3幕前奏曲 (3:12)
『さまよえるオランダ人』序曲 (10:59)
『タンホイザー』序曲 (13:55)
ジークフリート牧歌 (18:30)
ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮NHK交響楽団
〔1968年9月14、15日 新宿厚生年金会館での録音〕
先日コンサートで聴いた日本フィルの余波ではないが、東京都響に続いて、N響のCDを入手した。相当古い時代の録音。ヴァーグナー名曲集だが、指揮は先日惜しくも逝去したホルスト・シュタインではなく、同じくN響名誉指揮者として楽団と聴衆に愛されたマタチッチの指揮による比較的珍しいヴァーグナー録音。
1968年当時の録音でもあり、また会場もコンサート専用ホールなど東京文化会館しかなかっただろう頃のもので、新宿の厚生年金会館でのもの。録音の特性のせいか、会場のせいか、それとも当時のN響の音色がそうだったのかはよく分からないが、渋い音色の録音。言い方を変えれば、抜けが悪く地味でくすんだ色彩の音色。高音域は少しシャリシャリした感触の音質だ。
欧米の名門オーケストラや現代の日本のオーケストラと比べると少したどたどしいほどに聴こえてしまうが、それでも管楽器のソロなどはフルート、クラリネット、ホルンなど見事な部分も散見され、また、生真面目に誠実に楷書風に演奏している姿勢が垣間見え、そのため他の録音では耳につかないようなパートが耳に入るなど、たとえば『マイスタージンガー』などは対位法的な技術を駆使している曲だが、その仕掛けがよく分かるような演奏になっている。各パートが本当に真剣に音を出しているという感じが伝わる演奏だ。
マタチッチは、そのイメージに合わないような比較的安全運転(当時のN響のアンサンブルや技術では仕方なかったのだろうか?)の指揮ぶりだが、ところどころで爆発するような気宇壮大さを見せることがあり、それが弦楽器群の音色の魅力のなさを補って、本当に「渋い」録音になっている。
この当時だと、フルートは吉田雅夫氏、ホルンは先日惜しくも亡くなった千葉馨氏だろうか? (追記:吉田氏は1963年に退団したので別の奏者。1962年の小澤事件がきっかけだったのだろうか?)、ジークフリート牧歌のフルートとホルン、クラリネット、オーボエは相当聞かせてくれるし、音色も決して艶消しではない。それを考えると弦楽器群の艶のなさは当時のN響の弦楽器も今のように名器揃いではなかっただろうから、それも影響しているのかも知れない。
先日同じ60年代後半から70年代の小澤征爾のEMI録音をまとめて聴いたが、それに比べると別世界の観のある録音ではあるが、当時の日本を代表するオーケストラと録音の水準を知る上でなかなか興味深い録音だった。
追記:今日は、広島への原爆投下から63年目の日だ。当時、17歳だった人が既に80歳となる。生まれたばかりの人でも63歳になる。戦後は遠くなったが、その戦争の影響は、本州では神奈川県にも強く残っている。最近は米軍基地のジェット戦闘機の飛行訓練の爆音を聞かなくなったが、イラク戦争の頃の爆音はこのあたりでもひどかった。
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