北京オリンピックもとうとう閉会
8月8日(八八は、五五、七七、九九と同じく中国では伝統的に縁起のよい日なのだという)に開会(実質的には8月6日からサッカー予選などが始まっていた)した北京オリンピックも今日8月24日に閉会を迎える。
19世紀以来欧米、日本に頭を押さえつけられてきた眠れる大国中国が、国威発揚のため、日本、韓国に続いてアジアで三回目に開催した夏季オリンピックゲームで、大会期間中に憂慮されていたテロ行為などはこれまでのところ報道されておらず、何とか成功裡に終了しそうだ。
開催前、チベット自治区で起こった暴動への強行的な鎮圧により、特に欧米諸国での聖火リレーへの反対行動がエスカレートして、フランス大統領サルコジによる開会式への参加取りやめ発言などもあり、中国のナショナリズムが爆発して、フランスボイコット、世界各地での中国人留学生などによる聖火リレー擁護の動きなどがあったが、四川省の大地震への国際的な救護活動によりそれらの抗議行動擁護運動が沈静化し、8月のオリンピックを迎えることになった。また、台湾問題も今回のBeijing/Peking/北京オリンピックには余り影響がなかったようだった。
当初心配された北京の大気汚染やテロ活動による妨害は、中国の国威を掛けた対策や大規模な警備により押さえ込まれたようで、時差一時間の日本ではオリンピック競技をリアルタイムで楽しむことができた。
競技の中で最も手に汗を握ったのは、ソフトボール女子の金メダル獲得までの準決勝、三位決定戦、決勝の三試合だった。何といっても上野由岐子投手の三連投完投が特筆される。そのほかでは、やはり前人未到の北島康介選手の100m,200mの連覇だろう。その他の多くの日本選手も健闘したが、期待されていた女子マラソンの野口みずき選手の出場辞退は残念だったし、谷亮子選手の準決勝敗退の銅メダルも微妙な判定による結果だけに、日本での選手選考方法も含めて心残りだった。
野球の「星野ジャパン」とかいう監督の所有物のような名づけ方はマスコミによるもののようだが、韓国の金メダルに比べて、キューバ、アメリカにも負け続けの4位は、前評判倒れで非常に疑問の残るものだった。決してベストメンバーではないことは素人にも明らかな人選で、選手起用や投手交代のタイミングなども疑問が残った。(素人が軽々しく批判するようなことではないかも知れないが)。
結果的には中国が金メダル数でトップをアメリカから奪い、開催国と大国の面目を世界に施したことになったが、このオリンピックが中国と世界にもたらしたものは何だったのかを考えると決して安穏としてはいられないように思う。
日本、韓国がオリンピック開催後、世界の経済大国の仲間入りしたのと同じ状況には、今の中国はなく、既に世界の工場としての中国なくして世界経済は成り立たないが、その低廉な労働力もこのオリンピックを前に高騰しており、自前の技術を多く持たない中国の経済がどうなるかは非常に憂慮されるように思う。
一般には、中国は2010年の上海万博までに改革開放政策を続けると見られているが、今回は共産党一党独裁主導の管理主義が全面的に見え、民間レベルでの経済交流、貿易取引の自由でソフトな雰囲気とは相当趣きがことなったようにも感じたため、この超大国の動向が今後の世界の動向を左右することは抗いがたい潮流だろう。
オリンピック開催の政治的な空白を狙ったようなロシアのグルジア侵攻は、未だにロシア軍の撤兵に至らず、南オセチアに関係の深いロシアの人気指揮者ゲルギエフは、ロシア指示、グルジア非難のコンサートをサンクト・ペテルブルグで開催したと伝えられている。(開会式でのピアニスト ラン・ランの登場も意外だったが。)
また、中国の冷凍餃子中毒事件も、中国国内でも中毒事件が発生していることを中国政府が認めているのに、日本政府がサミット成功のために情報操作をしていたことも明るみになったが、このあたりの対応に今後の日中関係の様子が見え隠れしているようだ。
4年に一度の世界のお祭りである夏季オリンピックは、次回2012年はロンドンで開催される(何とロンドンでは3回目の開催になる)。その4年後の2016年オリンピックには、東京、シカゴ、リオデジャネイロ、マドリードが立候補している。4年に1度の閏年の年に開かれる2週間程度のスポーツとスポーツビジネス、マスメディアの祭典、オリンピック。「より高く、より速く、より強く」を求める飽くなき人間の衝動。4年後も、8年後は、このオリンピックがどう変貌し、それを見る自分もどのような状態でこれを見ていることだろうか。
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