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2008年9月27日 (土)

9月の9番はドヴォルザークの交響曲第9番ホ短調『新世界から』

9番と言えば、どうしてもベートーヴェンの交響曲第9番が思い浮かび、ようやく入手できたフルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団のOrfeo盤(バイエルン放送音源)のこともあり、ホームページ以来の棚卸も兼ねてまとめ聴きを試みてみようという気もあるのだが、先日の『名曲探偵アマデウス』で取り上げられ、クーベリック/BPOによる(自分にとっての)衝撃的な録音のこともあり、音盤も何種類かあるので、9月の9番はこの曲にしてみた。

この曲も先月の『未完成』交響曲同様、クラシック音楽の代名詞的な音楽であり、人によっては通俗名曲とまでのたまい、一般的にも聴き飽きている向きが結構多いと思う。オーケストラや指揮者にとっても、いわゆる初心者向けのコンサートなどで取り上げることが多いため、無意識のうちに軽んずるような傾向もあるのではないかと危惧するし、リスナーとしてもベテランになるほど、一種軽視気味な敬遠をすることもあるだろう。そういう自分自身、カラヤンやバーンスタインといった人気指揮者によるこの曲の音盤を持っていない。

このよく知られた曲とは言え、実演の経験は、高校時代の夏休み、音楽の先生が希望者に配布してくれた夏休みコンサートのチケットで友人と聴きに行った 山田一雄指揮の 読売日本交響楽団(1977年か1978年 長野県上田市の市民会館)でこの曲を聴くことができた。コンチェルトは、弘中孝氏のショパンのピアノ協奏曲第1番だったと記憶している。むしろ「新世界より」よりは、ショパンの曲の方が新鮮な感激を覚えたくらいで、「新世界より」は、ちょっとしたクラシック通を気取り始めた頃だったので、知ってる知ってるという生意気な聴き方だったように思う。(ちなみにこの帰宅時に上田市の楽器屋で購入したのが、オーマンディの『展覧会の絵』だった。)

さて、その後、ラジオのFM放送だけで聴くのは物足りなくなり、購入したのが、LPのノイマン盤。いわゆる本場の最新録音ということで、カラヤンやバーンスタインよりはいいだろうと思って買ったもの。その後、「世界の指揮者」を読んでのジョージ・セルへの関心から、「精密機械のような精緻なフレージング」を聴きたくてセル盤を求めた。

LP  ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコフィルハーモニー管弦楽団 1970年代の全集
   ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団

CD

指揮者    オーケストラ    録音    Ⅰ    Ⅱ    Ⅲ    Ⅳ    total    備考
ワルター    コロンビア響    1959    09:28    12:07    08:14    12:15    42:04   
セル    クリーヴランド管    1960    08:39    12:08    07:51    10:55    39:33   
ケルテス    ヴィーン・フィル    1961    09:44    11:46    07:39    11:05    40:14   
クーベリック    ベルリン・フィル    1972    09:24    13:00    08:05    11:45    42:14   
小澤    サンフランシスコ響    1975    12:36    12:00    07:45    11:35    43:56    I 提示部
リピート
ノイマン    チェコ・フィル    1981    09:36    11:34    08:17    11:22    40:49   
クーベリック    チェコ・フィル    1991    09:07    12:27    07:53    12:04    41:31    ライヴ
                               

CDでは、上記が現在の手持ちの音盤。

この中で、所有歴が一番長いのが、小澤指揮のサンフランシスコ響盤。新鮮な小澤の解釈が聴けると言われたものだが、以前八田利一とかいう覆面評論家が、この小澤盤の初期録音にティンパニか何かのパートが「落ちている部分」があるという指摘をして変な評判がたったことがあったように記憶しているが、この盤はどうだったろうか?演奏至難なホルンのロングトーンを楽譜通りに吹かせているというような評も覚えているが、先日来聴いているEMI録音のシカゴ響などとの60年代の小澤録音よりも大人しさが目立ち、その例の唸り声が聞こえたりもするようになっている。

ワルター盤は、ブログで簡単に触れたことがあるが、晩年の録音で、コロンビア響とのもの。実際にはたくましさも秘めてはいるのだが、ワルター独特の柔和な表情が聴けるもの。刺激が強くなく、うるさくないので、疲れたときなど確かに慰めになってくれる。

セル盤も、以前書いたことがあるが、万全な録音でないことが惜しまれる。それでも、セルの遺した正規録音の「新世界より」が聞けるのはありがたい。

ノイマンの新しい方のディジタル録音盤もコメントしたことがあるが、刺激の強くない熟した感じの演奏だ。

ケルテス盤については、大変人気が高い録音なのだが、少し外面的な刺激が強い感じで聴き疲れがするように感じている。まだコメントを書いていない。

クーベリック晩年の冷戦後の独立したチェコ共和国への里帰り公演でのライヴ録音は、BPOとの録音ほどの完成度や熱さはないが、歴史的な記録として貴重なものだと思う。

クーベリック/BPO盤は、最近「名曲探偵」がらみで書いたものだが、これまでこのような迫力のある熱い演奏だとは知らなかった。今のところ、この曲の意味を最も痛切に味あわせてくれるものだと思っている。もっと聞き込めば新たな発見がありそうだ。

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コメント

ドヴォルザークの交響曲第9番、私もセル盤とクーベリック(BPO)盤を好んで聴いております。ノイマンとチェコフィルや、カラヤンとBPO盤なども、ときどき手にします。通俗名曲どころか、時にむしょうに聴きたくなる、そういう力のある音楽ですね。実演では、日フィルや山響で聴いています。以前すでにコメントをいただいておりましたが、当方の記事をトラックバックいたしました。

narkejpさん、コメント、トラックバックありがとうございます。

この曲については、改めてまとめて聴きなおしての新発見などを書いてみよと思っていたのですが、単なる棚卸的な記事になってしまいました。

クーベリックとベルリン・フィルの録音は、本当に凄い演奏で、驚きました。全集は未入手ですが、さぞ立派なものだと思います。『新世界』に限っても、あのフルニエ、セル/BPOのドヴォ・コンに匹敵する出来ではないかとひそかに感じているほどです。

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