事件ファイル #13 ドボルザーク交響曲第9番「新世界から」
事件ファイル #13 オフィスを揺るがす郷愁のメロディー ~ドボルザーク交響曲第9番「新世界から」 依頼人 富士山太郎 (山崎樹範) 職業 サラリーマン
8月に放送されたものだが、ビデオ録画をしていながらなかなか見る機会がなく、ようやく昨晩家族と夕食後に見ることができた。
この有名な交響曲の第2楽章と第4楽章を主に取り上げ、第4楽章で循環形式的に再帰する第1楽章から第3楽章までも上手く言及して、全体像を何とか短い時間の中で提示していたのはよかった。
黒人霊歌"Swing low, sweet chariot" と主題の類似だけでなく、チェコ民俗音楽の長短短長のリズムについても触れていて、なるほどと思った。
演奏は、渡辺一正指揮のNHK交響楽団の放送スタジオ収録だったようだが、楽器バランスの強調の関係で、結構面白い音響になっていて楽しめた。多くの演奏が結構マッスになって団子状に聞こえてしまうが、ファゴットがソロ的に一生懸命動いている部分とか、対旋律的な部分とか、相当工夫が凝らされているスコアのようだ。
事件としてのストーリーは、お茶会社が外資に買収され、日本人社員と外国人社員との溝が深まり、相談者である社員は辞表を覚悟しているというもの。その外国人社員たちが、この「新世界から」を聞き、日本人社員に向かって「イッショニ、ガンバリマショウ」というのが不思議で、その謎の解明を依頼にこの探偵事務所を訪れたということらしい。終楽章が「異郷の地でも故郷を忘れず、また異郷の地でなくては適わない経験や素材により、イッショに新しい飲み物を開発しましょう」という語りかけになっているという仕掛けとの解釈だった。このやり方で、循環形式のフランクやサンサーンの交響曲はどのようにストーリー化されるか、興味が湧く。この次の#14はショパンの「前奏曲集」。近日中に録画を鑑賞スル予定。
p.s. 響カノン役の黒川芽以のMay曲探偵ブログ!!というブログを発見した。
追記:2008/09/17
クーベリックとベルリンフィルのドヴォルザーク『新世界から』を正規盤ではないが、ようやく入手することができ、聴いてみた。ベルリンフィルにしては、鄙びた演奏をするというような評判を聴いていたのだが、どうしてどうして、これまでいくつか聞いて来た中で一番硬派な演奏だと感じた。
ベルリンフィルからこの曲でこのような表現を引き出すのはクーベリックの手腕なのだろうが、とにかく細部まで巧くてあいまいさがないベルリンフィルを十分に鳴らしきっており、特にティンパニの強打とブラスの強烈な響きが、心を抉るような悲痛さを持っているように思った。
この曲も『未完成』同様、人口に膾炙した泰西名曲として、のほほんと聴けるような曲ではないことを思い知らされるような、何か痛切な訴えかけを感じさせる演奏のように感じた。
ノイマン/チェコフィルの新旧の演奏、クーベリックのチェコへの里帰りでのチェコフィルとのライヴ、セル/クリーヴランド管、ワルター/コロンビア響、小澤/SFOなど少し偏ったコレクションで聴いてきて、比較的最近世評の高いケルテス/VPOのCDを聴き、その迫力には打たれたがそれほど音楽的に満足はできなかった。
それが、長らくドイツ民族の支配下にあり(スメタナなどはドイツ語しか話せなかったという)、共産主義政権を嫌いチェコフィル指揮者の地位を捨てて亡命したクーベリックが、東西対立の真っ只中のベルリンで、西側を代表するカラヤンの楽器ベルリンフィルを指揮してこれほど痛切な「新世界」を録音できたのは奇跡的なことだったかも知れないなどと少し大げさなことまで考えてしまうほど、この録音は今更ながらだが、訴えかける力を持ったものだった。上でも書いたが、強力なブラスの咆哮に負けない強靭な弦楽器とその間を縫うように響く木管がなんとも言えずすごく、音響の純度も高い。これほど鳴りのよい「新世界」もそうはない。ブラスなど威圧的なほどだ。
なお、耳のせいかどうか分からないが、クーベリックは、ベルリンフィルでも対抗(両翼)配置にして演奏させているようだが、どうだろうか?右チャンネルから第2ヴァイオリンが聞こえ、全体的に音のバランスが独特になっている。左からはホルンが、右からはトランペットが聞こえ、ティンパニも聞こえる。
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今回はドボルザークの「新世界から」です。この曲もよく耳にすることある楽曲であるだけに、カノンさんの発言を楽しみにしていたら、やっぱりやってくれたカノンさんでした。(期待にしっかりと応えてくれるカノンさんです。)所長は、前回と同様に無精ヒゲがあったが、今回はカノンさんも髪型を変えていたことで、今までとは全く違う雰囲気があったが、ノリはやっぱり同じでした。本当に楽しんでいるカノンさんですね。所長にお茶を入れたカノンさん。が、「何度で入れたの?」と聴かれて「ちゃんと沸騰したお湯で...」と答えると、「煎茶... [続きを読む]
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